昨日
白木蓮の花が咲いた
のびた枝の先の蕾から
小さな白い花をすこし開いた
白木蓮は花が散ったあとに
丸い葉をひろげる
緑の丸い葉をたくさんひろげて
実を膨らませる
白木蓮のいのちは
繰り返している
白木蓮は繰り返している
今を生きることを繰り返している
昨日
白木蓮の花が咲いた
のびた枝の先の蕾から
小さな白い花をすこし開いた
白木蓮は花が散ったあとに
丸い葉をひろげる
緑の丸い葉をたくさんひろげて
実を膨らませる
白木蓮のいのちは
繰り返している
白木蓮は繰り返している
今を生きることを繰り返している
杭打ち、打ち、また打ち、
文字を描いた、人、指で傷をつけた人
それを、鑿で削った人、
言葉に、霊ら魂やらを添わした人
それらが、減り込む。
減算、なにかを知らせるための熱の減産。
老いていくことが、身の芯から抜かれて
わたしにも、軸があるのに、そのあわわの
そのあわわの、なにか、の、の、
から埋められる。
顔色を引かれ、
赤く腫れた、器物が引かれ、
笹が、引かれ
縄が引かれ、
鳥居が引かれ、
神のような、棚の上にあるものも
間引かれて、
空だけになった、赤ちゃんが泣いている。
青空の赤ちゃん。
タレに浸して、杭打ち。
おとわ、か。
昔、高貴であった、紀念の詳細も、
杭打ち、
地誌の暴きは、糊付け。
●
割烹着を着た、おとなしい人が
「紀念の、写真を、撮りましょうね」
と言って、そこに消えた。
まるい穴の中に、消去された。
まるで、シー・ジーだ。
●
大根のように、
まるまるの、正円の蕪のように
地面が、ただ、純白に、地底まで抜けている。
石の書の下まで、掘っていく。
すると
水だけがあふれて、
轟々と吹き上がり
文字の書かれていない、石の顏だけがあらわれた。
なあんにも、
埋まっていない。
(連作のうち)
雑巾がけの写真集を出したいと
白石さんはいった
白石ちえこさんの雑巾がけという手法の写真を
見たことがある
隠されていた
秘め事だった
真っ黒で
ところどころ銀色にひかっていた
机の引き出しの奥に写真は隠されていたのだろう
満員電車で
頂を思う
朝の通勤電車のなかで
山の頂を思う
冬のはじめに
白かった
白く
光っていたな
青空に光っていた
焼石岳の頂が白く光っていたな
地上には刈取りが終わった田圃が
ひろがっていた
ヒトは見えなかった
ヒトは見えなかったな
広瀬さんは
ブロックの写真を撮っている
いまもコンクリートブロックの
写真を撮っている
わたしは休日の朝には
海に出かけます
それから
詩を書きます
毎朝
ひとつ詩を書きます
ことばの先に
ことばでないものを探します
ことばの先にことばでないものを
悠治さんの
サティを聴いていた
かつて
悠治さんのサティを繰り返し聴いていた
そのころ
暮らした女のヒトには
たぶん
おかしかったと思う
サティのソクラテスも聴いたな
ソクラテスはひとつの
頂だったな
あのレコードはいまはない
西井一夫さんの
写真のよそよそしさという本を買って
まだひらいていない
机の上に
置いてある
以前に暗闇のレッスンという本を読んで
うなだれてしまった
地上には
ヒトがいて空があり風がある
真実は多くはいらない
ことばもまた
枕の間に鼻をうずめていた
君を起こして
雨の降るまえに
海にでかけていった
灰色の空に
暗い港はひらかれていた
灰色の空のしたに
灰色の海がひろがっていた
雨の降るまえに
地上に
灰色の空と灰色の海がひろがっていた
灰色の空と
灰色の海はひろがっていた
机の上に
いくつかの置物がある
若いときに
地方を旅したときに集めた
長崎の陶製のキリスト像
伊豆の温泉場の射的場にあった湯上がりの裸婦像
小仏
アフリカの石彫の魚
わたしには大切な仲間だが
他人にとってはガラクタだろう
わたしもガラクタになるだろう
くもを
みていたな
青空に浮かぶ
白い雲を見ていたな
花を見ていたな
野原のシロツメクサのまるい
花を見ていたな
子どもらよ
君は解らずに空を見ていたな
君は解らずに花を見ていたな
歌えなかった
歌えなかったな
無い歌をうたえ
無い歌をうたえよ