leaf 葉

昨日
白木蓮の花が咲いた

のびた枝の先の蕾から
小さな白い花をすこし開いた

白木蓮は花が散ったあとに
丸い葉をひろげる

緑の丸い葉をたくさんひろげて
実を膨らませる

白木蓮のいのちは
繰り返している

白木蓮は繰り返している
今を生きることを繰り返している

 

 

 

音の羽 @140307

萩原健次郎

 

 

撮影:萩原健次郎

 

杭打ち、打ち、また打ち、
文字を描いた、人、指で傷をつけた人
それを、鑿で削った人、
言葉に、霊ら魂やらを添わした人
それらが、減り込む。
減算、なにかを知らせるための熱の減産。

老いていくことが、身の芯から抜かれて
わたしにも、軸があるのに、そのあわわの
そのあわわの、なにか、の、の、
から埋められる。

顔色を引かれ、
赤く腫れた、器物が引かれ、
笹が、引かれ
縄が引かれ、
鳥居が引かれ、
神のような、棚の上にあるものも
間引かれて、

空だけになった、赤ちゃんが泣いている。

青空の赤ちゃん。

タレに浸して、杭打ち。

おとわ、か。

昔、高貴であった、紀念の詳細も、
杭打ち、
地誌の暴きは、糊付け。

割烹着を着た、おとなしい人が
「紀念の、写真を、撮りましょうね」
と言って、そこに消えた。

まるい穴の中に、消去された。
まるで、シー・ジーだ。

大根のように、

まるまるの、正円の蕪のように
地面が、ただ、純白に、地底まで抜けている。

石の書の下まで、掘っていく。
すると
水だけがあふれて、
轟々と吹き上がり

文字の書かれていない、石の顏だけがあらわれた。

なあんにも、
埋まっていない。

(連作のうち)

 

 

 

top 頂上 上部

満員電車で
頂を思う

朝の通勤電車のなかで
山の頂を思う

冬のはじめに
白かった

白く
光っていたな

青空に光っていた
焼石岳の頂が白く光っていたな

地上には刈取りが終わった田圃が
ひろがっていた

ヒトは見えなかった
ヒトは見えなかったな

 

 

dear 親愛なる

広瀬さんは
ブロックの写真を撮っている

いまもコンクリートブロックの
写真を撮っている

わたしは休日の朝には
海に出かけます

それから
詩を書きます

毎朝
ひとつ詩を書きます

ことばの先に
ことばでないものを探します

ことばの先にことばでないものを

 

 

rain 雨

枕の間に鼻をうずめていた
君を起こして

雨の降るまえに
海にでかけていった

灰色の空に
暗い港はひらかれていた

灰色の空のしたに
灰色の海がひろがっていた

雨の降るまえに
地上に

灰色の空と灰色の海がひろがっていた

灰色の空と
灰色の海はひろがっていた

 

 

join つなぐ 加わる

机の上に
いくつかの置物がある

若いときに
地方を旅したときに集めた

長崎の陶製のキリスト像
伊豆の温泉場の射的場にあった湯上がりの裸婦像
小仏
アフリカの石彫の魚

わたしには大切な仲間だが
他人にとってはガラクタだろう

わたしもガラクタになるだろう

 

 

sing 歌う

くもを
みていたな

青空に浮かぶ
白い雲を見ていたな

花を見ていたな

野原のシロツメクサのまるい
花を見ていたな

子どもらよ

君は解らずに空を見ていたな
君は解らずに花を見ていたな

歌えなかった
歌えなかったな

無い歌をうたえ
無い歌をうたえよ