newspaper 新聞

このクニの
水辺に立てばいい

このクニの土の上に立てばいい

このクニの農民はいまどこにいるのか
このクニの漁民はどうしているのか

大きな夢のあとに
残されたものはなにか

夢のあとに消えさったものはなにか
アタラシイ自由のあとに勝ち残るものはだれか

 

 

weak 弱い

朝になってしまいました

西の空が白く
その下に灰青の山々がみえます

パルティータを聴いていたのです

バッハがひかりを感じるには
空しく裸であったろうと思うのです

ひとりの貧しいヒトが見えたのです

いとしいヒトでした
そのヒトは弱くいとしいヒトでした

 

 

possible 可能な

冬の陽射しに

桑原正彦の絵と
SMITHSのジャケットをならべた

still ill をくりかえし聴いている

鉄橋の下でぼくらはキスをした
唇がヒリヒリした

そうモリッシーは歌っている

だけどもうない
だけどもういない

そんなことをモリッシーは歌っている

 

king 王

ゼログラビティのなかで
重力は人間の関係性のことなんですよね

川崎さんはいった

子供を失い関係性を失ったヒトが
宇宙に浮かんでいた

やがて関係を獲得して地球にもどり重力を得たのですよね

川崎さんは渋谷の喫茶店でいった

王はいなかった
王はどこにもいた

 

 

curtain カーテン

霧が
流れていた

坂道をとおってきた

闇のなかに
星はひかっていた

林が遠くあった
林は遠くにあった

カーテンがかかっていた
ひかりのカーテンがかかっていた

霧が流れていた

いとしいヒトの声を聴いた

遠い声だった
遠い声を聴いていた

 

 

line 線 電話線

桑原が
絵はがきを描いて送ってくれた

絵にはしろい雲が描いてある
端っこに青空もある

空を電線が横切っている

電線をいれなくてもとは思わない
空の分断は必要だ

桑原正彦は孤絶した場所にたっている

かつて
桑原のみにくい女の絵を買ったことがある

 

 

sleep 眠る 睡眠

今朝
水平に移動して朝焼けをみたのです

そのときコトバは無一物のわたしの栖だと思ったのです

ぼたるさんと
来栖さんと加藤さんが

笑ってこちらを見ていました

ラ・モンテ・ヤングの光の音を聴いたのです

眠っていました
眠りのちかくに栖はありました

 

 

much たくさんの

中目黒の川沿いの
古本屋で写真集を買いました

ブレッソンでした

コルドバのおばさんの写真に惹かれたのです

ふくよかな手を胸に置いて
眩しそうにこちらをみていました

たくさんの

消え去るもの
二度と出逢わないものを

彼は相手としたのでしょう