赤山

 

萩原健次郎

 
 

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青い山を歩いている。
青い山は、翻って、逆さに屹立している。
青い山に、影がさしている。
黒々とした影に、光がさしている。

私の線路に、黒鋼の列車が走っていく。
私の線路の脇に、いい香りのするヨモギがそよいでいる。
私の線路に、誰か、首筋をのせて眠っている。
それが、影の中の光で、四角い隅が歪んでいる。

やわらかく無くなっていく。
やわらかな毛の生えた小さな動物が
やわらかく鳴いていた。
幼いころに、飼っていたごろごろする、誰か。

赤い山を歩いている。
手が焼けている。燃えている。灰になる。
足が、やわらかく萎えていく。ナマコ、軟体。
私は、拝む人になることもある。

拝む人は、私とは別の世で群れとなって
私の周囲を取り囲む。
別の世の、神も仏も信じられず
私は、カエルの真似をする。

カエルの膚の色が、わからない。見えない。
私は、拝む人たちに囲まれても、私の姿が見えない。
山の中で、コケの斜面で生きたことや、死んだことを
私は、私の帳面に記した。

拝む人たちの祭りであったと気づいて
私は、真水を飲んだ。
濁った水を吐いた。
それが澄んでいることを願ったのに。

黒い山を歩いている。
山が千切れていく。
隙間からさしてくるのは
別の光だった。

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 11

 

昨日は
曽根さんと神田の清龍で飲んだ

升酒 6杯

お通しと
里芋豆腐揚出し

二人で2500円だったか

帰りに新丸子の東急ストアで

金宮25度 618円
絹美人 92円
おかめ極小粒ミニ 98円
ホテルブレッド 250円
玉葱3個 174円

 

 

 

ビリジアンを探して 

 

芦田みゆき

 
 

2012.6.10.

 

「…ビリジアンが死んだ。ぼくにはわかる。
窓のほそい縁に太陽が反射して白く光った時、ぼくは理解した。ビリジアンは死んだのだ。水源からゆるゆると水が流れだすように、ひとすじの血がひろがり、床に小さな湖ができる。ビリジアンは、そこに横たわっている。いずれ発見されるだろう。川沿いの湿った室内。
ビリジアンはぼくを見ることができない。
ぼくはビリジアンを抱くことができない。
ビリジアンは捨てられた植木鉢のように、割れた陶器の皮フから内側があふれだしたまま、眠っている。
ねぇ、ビリジアン、ぼくにはそれが見えるんだ。」

 

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たんたんタヌキの三太郎

 

佐々木 眞

 

 

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今朝、アクザワ先生が歩きながら投げ入れたハイライトを、滑川*は黙って呑みこんだ。

午後、カナイさんのお爺さんが投げ入れたポチの糞を、滑川は黙って呑みこんだ。

夕方、お隣のヒグチさんが投げ入れた垣根のサツキの枝を、滑川は黙って呑みこんだ。

真夜中、県道246号ではねられたタヌキを、滑川は黙って呑みこんだ。

そのタヌキは、時々私の庭にやって来て、サンダルを散らかして遊んだりしていた。

三本足なので、私が三太郎という名前をつけたタヌキだった。

三太郎のふさふさした毛皮は、カラスやセキレイの鋭い嘴によって綺麗にはがされ、秋の冷たい水は、無惨に露出した赤身の上をさらさらと流れてゆく。

たんたんタヌキの三太郎の白い骨も、ハイライトも、ポチの糞も、サツキの枝も、滑川は黙って呑みこみ、今度の大水で、相模湾に流し込むだろう。

 
 

*滑川は鎌倉市と横浜市に跨る朝夷奈峠の湧水より発して太刀洗川となり、鎌倉市十二所にてその名を滑川と改めて由比ヶ浜に注ぐ。なお呼称は「なめ」川に非ずして「なめり」川なり。

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 10

 

それから
荒井くんと

神谷バーで電気ブランを飲んだ
荒井くんがご馳走してくれた

帰りには
新丸子のまいばすけっとで

QPフレンチドレッシング 169円
ミツカン卵醤油納豆 99円
たまご6個 149円
特濃調整豆乳 209円
キャベツ半カット 213円

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 07

 

昨日はわたし

文化の日だった
遅く目覚めた

窓の外でもう
小鳥は

鳴いてた

コーヒーに豆乳を入れて
浴槽に

浸かってた
スティーヴ・ライヒを聴いた

文化の日って
なんだったかな

日本国憲法が公布された日だったのかな

コーヒーに
砂糖を入れた

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 06

 

一昨日はわたし

昼に
門前仲町の

日高屋で
生中と空豆を食べた

生中が310円
空豆が170円

レバニラ定食が650円

それから夜に
神田の

葡萄舎で芋焼酎を飲んだ

賢ちゃんと
賢ちゃんの姉さんにも

焼酎をご馳走した
3600円だったかな