野上麻衣
島にきて二日目
港から 山へ
朝の海をうかべた靄は
肌の上のしずく
半径1メートルの
白い情景
その色は
詩の役目を担っていた
ここでは
風だけが動いて
季節は止まっているね
この島には
港がふたつ
どちらに舟がつくかは
その日の風向きできまる
雲をみあげ
波をながめることは
遠くの風をよむことなのだった
島にきて二日目
港から 山へ
朝の海をうかべた靄は
肌の上のしずく
半径1メートルの
白い情景
その色は
詩の役目を担っていた
ここでは
風だけが動いて
季節は止まっているね
この島には
港がふたつ
どちらに舟がつくかは
その日の風向きできまる
雲をみあげ
波をながめることは
遠くの風をよむことなのだった
そのひとは
たっぷり
水辺を泳ぎきり
海のさきっちょをながめて
舟にのった
とってきたばかりの
檸檬をしぼる
その手で
波にふれ
海鳥の声に
しんと沈んで
オールを漕いだ
ずっと ずっと
ながめていれば
ひとびとは
とおくに ちかくに
波になびいて
安心して。
風がはこんでくれるから。
あの場所は
いつものつづき
うたっているのは
岬のひと
とん
とん
ころりころ
金柑の実が
トタンを鳴らす
さわり
さわり
白紫の花が
木をゆらす
風は合図
心よ
はこばれてゆけ
ぷかぷかと浮かぶ
雲みたいな声は
本人ではなく
だれかのいるほうから
聞こえてきた
(声はその人が持っていなかった)
まず椅子を用意する
声が座れるように
ぜんぶで8つ
どちらかあまってしまっても
かさなってゆくから
心配ない
(声は椅子に座りたがらない)
それから
舟をくみ立てる
泡はからだに沿って音をたてる
そのかたちをたどり
水面を漕いでゆくことにした
(声は舟に乗ってくれるだろうか)
2メートル先
水の中で声がする
ぷぅーと吹かれたラッパのように
からだがふるえる
ずっと手のひらにあった
ひとの、声