加藤 閑
朽ちた枝
わたしの最初の個展は2007年4月。6年半以上前、四日市の山画廊で行なった。
魚住陽子の個人誌『花眼』の表紙にこの絵を描いたのが、思いもかけず八島正明先生に評価していただき、山画廊を紹介していただいた。女主人の満代さんは、どこの馬の骨とも知れないわたしの個展を開くのを承諾してくれた。その後もわたしが絵を描き続けていられるのは、このとき自分の絵をひとに見てもらうことができたという手応えによるところが大きい。山さんには、どんなに感謝しても感謝しきれない。
その山満代さんが昨日未明に亡くなった。わたしより4つも若いのに。
「朽ちた枝」を彼女にはじめて見せたとき、わたしは枝を流れた時間が描きたかったと言った。満代さんは、もっといろいろなかたちで時間を描けるといいですねと言った。
しかし、今となってはもう彼女との時間を持つことはできない。
今年4月に、この画廊では3度目となる個展をした。その最終日に三千魚さんから、ぼたるさんの訃報の電話をもらったのだった。
今年はその前に同級生が二人亡くなっている。
大事なひとが次から次へと向こう側に行ってしまう、そんな歳に自分もなったのだなと、思わずにいられない。
キャベツ
このところ、雑誌の仕事が続き、いきおい写真をモチーフにして絵を描いてしまうことが多い。このあいだ、なにか実際にある「モノ」を描いてみたいと強く思い、家にあったキャベツを描いてみた。何でもないものをごろんと描きたい…と口の中で言って、ぼたるさんの傑作「ごろん」が立ち上ってきた。