朝になってしまいました
西の空が白く
その下に灰青の山々がみえます
パルティータを聴いていたのです
バッハがひかりを感じるには
空しく裸であったろうと思うのです
ひとりの貧しいヒトが見えたのです
いとしいヒトでした
そのヒトは弱くいとしいヒトでした
朝になってしまいました
西の空が白く
その下に灰青の山々がみえます
パルティータを聴いていたのです
バッハがひかりを感じるには
空しく裸であったろうと思うのです
ひとりの貧しいヒトが見えたのです
いとしいヒトでした
そのヒトは弱くいとしいヒトでした
冬の陽射しに
桑原正彦の絵と
SMITHSのジャケットをならべた
still ill をくりかえし聴いている
鉄橋の下でぼくらはキスをした
唇がヒリヒリした
そうモリッシーは歌っている
だけどもうない
だけどもういない
そんなことをモリッシーは歌っている
ゼログラビティのなかで
重力は人間の関係性のことなんですよね
川崎さんはいった
子供を失い関係性を失ったヒトが
宇宙に浮かんでいた
やがて関係を獲得して地球にもどり重力を得たのですよね
川崎さんは渋谷の喫茶店でいった
王はいなかった
王はどこにもいた
昨日の朝は
詩がかけませんでした
すこし
風邪気味のようです
いつも喉から風邪はきます
子供のときからです
日曜日に
姉に電話をしました
秋田では
二階のベランダまで雪がつもったそうです
晴れた日には
雪原のむこうに焼石岳がみえるのです
霧が
流れていた
坂道をとおってきた
闇のなかに
星はひかっていた
林が遠くあった
林は遠くにあった
カーテンがかかっていた
ひかりのカーテンがかかっていた
霧が流れていた
いとしいヒトの声を聴いた
遠い声だった
遠い声を聴いていた
深夜に
ギーゼキングを聴いている
パルティータ 第2番 ハ短調
サラバンド
意図することをやめた声がある
なつかしい声がある
ははのははのははの声がある
意図ではない
意味ではない
遠いははたちのない声がある
柔らかい赤ん坊を産んだ
桑原が
絵はがきを描いて送ってくれた
絵にはしろい雲が描いてある
端っこに青空もある
空を電線が横切っている
電線をいれなくてもとは思わない
空の分断は必要だ
桑原正彦は孤絶した場所にたっている
かつて
桑原のみにくい女の絵を買ったことがある
今朝
水平に移動して朝焼けをみたのです
そのときコトバは無一物のわたしの栖だと思ったのです
ぼたるさんと
来栖さんと加藤さんが
笑ってこちらを見ていました
ラ・モンテ・ヤングの光の音を聴いたのです
眠っていました
眠りのちかくに栖はありました
中目黒の川沿いの
古本屋で写真集を買いました
ブレッソンでした
コルドバのおばさんの写真に惹かれたのです
ふくよかな手を胸に置いて
眩しそうにこちらをみていました
たくさんの
消え去るもの
二度と出逢わないものを
彼は相手としたのでしょう
水辺に佇つヒトがいた
日曜日の
夕方の空はうすい水色だった
灯りが
港にふたつあかく灯った
佇むヒトは水のおもてをみていた
うしろからみていて
そう思えた
いとしいヒトだった
いとしいヒトだった
水のおもてをみているんだと
思えた