michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

classroom 教室

夕方から眠ってしまっていた

深夜に
ぼんやりと目覚めた

最近スマホで写真を撮ります

身のまわりの景色を
カメラの向きを少し変えその瞬間を撮ります

そうすると写真がぼけてうつる
このぼけるって何だろう

意識の深層にもう一人の他者がいます

 

 

glad うれしい

帰宅するのをモコはまっている

ドアをあけるとモコは
飛びついてくる

小さなからだで
ぴょんぴょん飛び跳ねる

うれしい
うれしい

わたしもうれしい

そしてモコの首元を
ガルルウと齧り狼の挨拶をする

モコが震えている
モコが震えている

うれしい

 

 

movie 映画

たまにモコを
イタリア風に呼びます

モォーコーモォーコー
モォーコー

モコはキョトンとして
見あげています

イタリアの少年と
映写技師の小父さんの交友を描いた映画でした

モォーコーモォーコー

近くにいるモコを呼びます
近くにいるモコを遠く呼びます

 

 

door ドア

ドアのまえにたっていた

何も持たずに
たっていた

ドアは何も持たないものに与えられた

何も持たないことは
ひかりだった

ひかりだったろう
ひかりだったろう

ドアのまえで
ひかりを灯した

無言のひかりを灯した
失われたヒトたちこそひかりだろう

 

 

save 救う

福島と東北と
沖縄と広島と長崎

戦争で死んでいったヒトたち
慰安婦とアウシュビッツと

だれも救ってなどと言わない

その場所に
もう一度立てばいい

毎時25シーベルトの場所に立てばいい

野原の松の林の陰に
小さな萱ぶきの小屋はない

もう一度
立てばいい

 

 

meat 肉

ギーゼキングの
パルティータを聴いている

第2番ハ短調

シンフォニア
アルマンド
クーラント
サラバンド
ロンドー
カプリッチョ

バッハがライプツィヒに移って
書かれたのだ

愛するひとの心を楽しませるために

肉について言及はない
肉についての言及はない

 

 

 

poet 詩人

こどものとき
ことばをうしなった

すでにうしなっていた

軒下の暗やみで
小石を積んでひとりで遊んだ

そこに真実があった

コトバをうしない
ないコトバに出会うことだったろう

詩は

絶対的な
ないコトバに出会うヒトだろう

詩人は

ないだろう
ないヒトだろう