花にも
名があった
ヒトがつけた名があった
思い浮かぶ花が
ある
雪解けの庭の隅に水仙が咲いていた
夏に
鶏頭が咲いて
鳳仙花が咲いていた
山の斜面に白い百合が匂っていた
ハハコグサは
都市のアスファルトの亀裂に乾いて
いた
黄色の花を咲かせていた
花にも
名があった
ヒトがつけた名があった
思い浮かぶ花が
ある
雪解けの庭の隅に水仙が咲いていた
夏に
鶏頭が咲いて
鳳仙花が咲いていた
山の斜面に白い百合が匂っていた
ハハコグサは
都市のアスファルトの亀裂に乾いて
いた
黄色の花を咲かせていた
はじめてきいた
蝉が
鳴きはじめた
はじめて声をきいた
風がつよく
空には灰色の雲がひろがっている
西の山は
雲をかぶって頂上が霞んでいる
いまは佇って風をうける
いまに佇って風をうける
蝉の声をきいている
蝉の声をきいている
蝉の声を
もう
目蓋がひらけなくなった
母は
きいていた
目蓋のうらの
瞳に灰色の空はひろがっていた
口もひらけなくなった
母は
きいていた
風の声を
雲の声を
ひまごたちの遊ぶ声を
きいていた
小鳥たちの声をきいていた
小鳥たちの声をきいていた
きのうの
夜
雨にぬれた
ブロック塀を抱えて部屋に
帰った
雨にぬれた
ブロックはいった
片隅は永遠につながっているの
ブロックを抱えて
遊ぶ
ブロックを抱いて
遊ぶ
片隅は永遠につながっている
片隅は永遠につながっている
遠い
声に
おびえる
おびただしい
おびえる
つかえないコトバにおびえる
どこかで
密約があったのだろうか
村をやき
民をころし
おびただしい死があった
わたしの祖母の瞳が灰色になった
うすい
空色のなかに
白い雲がうかんでいる
こと
うすい空色のなかを
燕たちが複雑な線をひいて飛ぶ
こと
きみとモコがにっとわらう
こと
晴れた日当たりのよい場所にいること
ありえないこと
ありえないこと
たしかに
架かっているのだろう
あちらと
こちらのあいだには
今朝
燕たちの飛ぶのをみていた
燕たちは複雑な曲線をひいて飛んでいた
燕たちに橋はいらない
燕たちに橋はいらない
電線にとまって
赤い首をねじって鳴いて
すぐに
飛びたっていった
さっき
バッハの
ヴァイオリンソナタ3番を 聴いていたら
ぼくの窓辺に
燕たちがやってきたんだ
燕たちが
5羽もやってきたんだ
誰の曲を聴けばいいんだろう
宇宙船を呼ぶには
ぼくの窓辺に宇宙船を呼ぶには
誰の曲を聴けばいいんだろう
真近に
感じて
いた
祖母を感じていた
着物を着て窓辺に
たって
いた
いつもとおりをみていた
灰色の瞳をしていた
息子を沖縄の遠い戦闘で失っていた
祖母の匂いがした
祖母の匂いがした
空にひばりがないていた
空にひばりがないて
ひとりの
夏に
みていたな
いつもみていたな
雲をみていたな
雲は遠い
雲は
遠いヒト
遠い遠いヒト
みていたな
いつもみていたな
雄物川の
川面に
うつっていたな
ながれていったな
ながれていったな
ひとりの夏に
ながれていったな