michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

露寒の指に触れるや小さき花

 

一条美由紀

 
 


ワタシハワタシノナカノ彼女デアル
彼女であるワタシはワタシの全てを知っている
でもワタシは彼女であるワタシを拒否し見ようとしない
彼女であるワタシはワタシの一番の味方であり友人でもある
彼女であるワタシは時に固く小さな実となる
そして待つ
ワタシをワタシが理解してくれる時まで

 


生まれた時から数字で考える機械と育ち、
この世は自分たちとは違う命の形があることを知っている
肉体だけに命が宿るわけではないの
私たちは浮遊する、肉の塊を超えて
私の実存は機械の中にもあり、あらゆる世界と繋がっている
私は我々で、我々は私
個人の肉体を超えて未来を見つめてる

 


言葉遊びの結果は二次元で終わる

 

 

 

結婚指輪(Last one, My bell…)

2023©Cloudberry corporation
 

今井義行

 
 

Rock ’n’ Roll With Me Last one, My bell…(オネガイ、モウイチド…)
わずかな写真しかない
ソレは、
僕の、恋人…
花、を…愛してしまったが最後、
で、アルヨウニ 君ノ夢ヲ見タ
瞳が零れ落ちそうだった、
首の周りに silk 巻いてた、
だから、口吻、出来なかった。
僕が今度、君ト、踊る時ハ
君に、精一杯、
謝りたい……「ゴメンね」
「駄目な、僕デシタネ …」
…………「もう、いいわよ」
Rock ’n’ Roll With Me Last one, My bell…(タノムカラ、モウ一度…)
一枚の写真しかない
ソレは、
僕の、恋人…死ぬ前に、モウ一度。
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
“悠”はるか、
という意味デスネ
girly girl was 36ages.
ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

ソレは、歌詞のようなものである。
だからといって
恥ずかしがることなく
「恋は、水色」。
…彼女…と…いまは、
うたいたい…

君は、病みあがり、の
僕の部屋に すわって
「学生さんの住む
部屋みたい」と笑った

For Everyone!!

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

調布から八王子方面まで降りて、
深夜の……
イタリアンに行った1993年……

seafood pasta
分け合い、ながら……
将来のことについて、話し合う
こと、一つ、無くって、

二つ、歳上……

黙ってしまった
モノデシタネ……。

「此処の、pasta、不味いのよ」

それから、しばらく
君は……、
スポットの下
dance して、いたね…

花、を…愛してしまったが
最後……、
で、アルヨウニ 君ノ夢ヲ見タ
瞳が零れ落ちそうだった、
だから、口吻、出来なかった。

僕が今度、君ト、踊る時ハ
君に、精一杯、
謝りたい……「ゴメンね」

本当は、
僕の、恋人…では、なかった
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
死ぬ前に、モウ一度。
お逢い…、しましょう、ね!

girly girl 36 ages.

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

ソウシテ……

君が、亡くなった……という
噂を聞いた。
ソンナ噂を、書いてはいけない。
だって……

ミンナが、
信じてしまうだろう?

僕は、取り消すよ、君とは
結婚してみたかった……

本当、だ。

That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
girly girl 36 ages.

乳首が尖っているかどうかも、
知らないまま、

It was so fine……!

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 
 
(2023/10/04 アパートにて)

 

 

 

深淵

 

有田誠司

 
 

ひとつひとつの言葉に関係性を探した
理解出来ない謎かけ 暗号の様な言葉の欠片

その断片は他を寄せ付けない独立独歩
僕は全てを同意した
理解出来るか出来ないかなんて
たいした問題じゃ無い

詰問される事も
事の迅速さを要求される事も無い
沈思黙考が少ない語彙の間に流れていた

巧妙な罠 言葉巧みに警戒心を取り除き洗脳して行く
僕はその世界の一部を除外しただけの事だ

一面の雲に隠されたままの太陽と
何かをあてもなく待っている僕が居た
君は時計を持たずに
君に適した時間の流れの中に存在し続けている

僕の意識の周辺にある壁の枠組を
まるで何も無かったかの様に君は入り込んで来る

壁の向こう側にある深淵 其処に君は居る
恐れる事は無い 光無き混沌と沈黙と静寂
其処に君は居る もうひとりの僕が居る

 

 

 

質感って奴

 

辻 和人

 
 

ぷるん
服を脱いだコミヤミヤだ
お風呂場の発砲スチロールの台の上で
ぷるんしている
軽く泣きそうになったのを宥めて
赤ちゃん用シャンプー頭に垂らし
髪の毛シャカシャカ
ちょっと不機嫌残る眉を宥めて
シャワーシャーシャー
お次は首から腕からお腹から足から
背中からお尻から
ぷるんぷるん
シャボン流れる
あんなに小さく生まれてきたのに
保育器の中でけぽっしてたのに
ぷるんぷるん、だ
お腹の皮押せば
ぷるん押し返される
ぶるんとお腹だ
おしっこしたばかりのお股に手を差し込んできれいきれいすると
肉厚の割れ目ぷるん揺れる
2000gで生まれてきたのに
今や5000g
1回50gのミルクがやっとだったのに
今や1回120g
洗い終わってゴム製お風呂に入れる
ざっぷん
ぷるん
いいなあ、赤ちゃんって
この質感だよ
栄養が詰まってる質感
ダイエットなんて知らない質感
それにひきかえ皮膚しわしわ
ぼくの体がいかに硬化してるかわかっちゃうね
質感にやられて
触って触って
もっと触りたい
抱っこして抱っこして
もっと抱っこしたい
目で見ただけじゃわからない
ぷるんぷるんの抵抗感
質感って奴には
力がある
何しろ抵抗してるんだからね
触れた指に対して
ぷるんぷるん
抵抗して逆らって
力がある
洗い場は好きじゃないけどお湯に浸かるのは大好きなコミヤミヤ
顰めてた眉ほどいて
手足とお腹をお湯の中に遊ばせてる
栄養詰まった二の腕が
お湯滴らせて
ぷるんぷるん
たまんない
やられちゃう
抵抗感だ
質感って奴