michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

五月の歌

 

佐々木 眞

 
 

IMG_4686-2

IMG_4703

 

美しい五月よ
三里塚には、もう革命児サパタも戦うパンチョ・ビラもいない。
廃墟と化した巨大な空港の高みに、ミラージュやコンコルドが舞っているばかり。

美しい五月よ
西新宿の大通りには、もう夜鷹もルンペン・プロレタリアートもいない。
四谷区民ホールのガードマンが、夜鍋しているだけだ。

美しい五月よ
新宿御苑の広大な敷地で、草上の昼食を楽しむ中産階級の市民は、もういない。
日がな一日画眉鳥が、「再見再見」と鳴いているばかり。

美しい五月よ
甍が無惨に崩れ落ちた熊本城には、もう誰もいない。
くまモンと鉄腕アトムと鉄人28号とドラえもんとのび太としずかちゃんと六つ子だけが、懸命に石垣を直そうとしている。

美しい五月よ
傲岸不遜な為政者たちは、もうこの国にはいない。
ビア樽ポルカのような奥さんと世界各地を訪れ、わが世の春を謳歌している。

美しい五月よ
十二所村の旧家の屋根の上では、もう親子の鯉幟は泳がない。
遠く旅立った一卵性双生児の息子が今どこにいるのか、誰も知らない。

美しい五月よ
時ならぬ横時雨に躑躅の花は忽ち散り失せ、もうアオバセセリはやって来ない。
はじめての恋は色褪せ、虚ろに開かれた四つの目を、夕闇がゆるやかに閉じる。

 

 

 

光の疵 White

 

芦田みゆき

 
 

ある朝
粉雪のように
白がはじまった
あちこちに降り積もっては消え
ひと粒が膨らんだりつぶれたり
よく見ると
あたしのカラダはまだらで
目をつむってもあけても
まったく同じ白が広がっているのだった
さぁ、出かけるよ
どこにでもついてくるがいい
晴れた日の白というのも
おつなものじゃないか

 

13184575_943129179138991_334840855_o

 

13170562_943129562472286_1608362434_o

 

13170737_943129802472262_57450466_o

 

13161124_943129922472250_1187980773_o

 

13148138_943130335805542_1372982663_o

 

 

 

良い子は眠れない

 

佐々木 眞

 
 

IMG_4577

 

怪しい男が、可愛い女の子と一緒に教室に入ってきた。
鈍く光るナイフを突き付けられて蒼ざめているのは、
なんと私の昔の恋人ヨイコではないか。

私は、いきなりヨイコの腕を摑んで、教室の外へ飛び出した。
すると男も、あわてて私らの後を追ってくる。
私らは、キャンパスの坂道を転がるように駈け下りて全速力で走ったが、男に追い付かれそうになってしまった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中からおそ松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になっておそ松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中から一松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になって一松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中からカラ松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になってカラ松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中からチョロ松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になってチョロ松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中からトド松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になってトド松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中から十四松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になって十四松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは着ていたジャケットを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男は夢中になってそれを拾い、自分の身につけた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコ子は着ていたセーターを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男は夢中になってそれを拾い、自分の身につけた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコ子は着ていた天使のブラを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男は夢中になってそれを拾い、自分の身につけた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコ子は着ていたスカートを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男は夢中になってそれを拾い、自分の身につけた。

その隙に私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコ子は身につけていた黒いパンティーを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男が夢中になってそれを拾おうとしたので、私は思わずヨイコの手をふり離し、それを拾って素早く自分の身につけたのだった。

 

 

 

小舟

 

Hitoha Nao

 
 

image1-5

 

なにも変わることがなかった日にも

風がやって来て
さざ波と
ちいさな光が
水面で遊んだ

雲がでて
光は翳り
それから また

風が来た

すこしだけ
わたしは揺れて

なにも変わらないと思った

空空空0子供らの声がする
空空空0すぐそばで
空空空0石投げをしているらしい

さざ波が
わたしを揺らした
光は

水面から
わたしの中に
風を運んだ

すこしだけ
わたしは揺れて
それから

ロープを切った