michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

北陸から帰った

 

さとう三千魚

 
 

2000kmほど
クルマを運転した

静岡から山梨
長野

新潟に抜け

出雲崎の丘から海を見た

向こうに
佐渡が浮かび

西域かと思えた

柏崎の宿に泊まり
柏崎から

富山
金沢へと向かった

金沢は観光客で賑わっていた
かほく市で海を見た

金沢では
四角い池の

平らな水面を見つめるヒトを後ろから見る
駅前のホテルに泊まる

富山に戻り
岐阜を通り

名古屋に抜けて帰ってきた

2000kmほど
運転した

女は運転が怖くて眠れなかったと言う

帰って
毎朝

小川沿いを歩いている

西馬音内の盆踊りも終わったろう
今年は踊ろうかな

そう電話で
姉は言っていた

風鈴の音を聴いている

風が吹いて
風鈴が鳴っている

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

西成

 

工藤冬里

 
 

滑り易いツルツルの木目の星のイメージはそこから来ているし、
その縞模様は靴下や竜に見られるものだ、と
世代の替わった遊技場のコンセントから充電し、
部品置き場の機具類を床に曝けだす、と
埃を被ったマンブルビーのマイケルたちが飛び立つし、
西成に秋が来る、と
助かるためには記帳されている必要があったし、
ここは間違った地球の中心地であった、と
山頂も野獣の首も七つあったし、
永住させ増やす、と
約束し、
死んでもテントの中では寝ている、と
4キロ離れていても聴こえるし、
なしでやれている外で俄雨野宿し
屋根天幕、と
俄雨野宿屋根天幕しとしと

 

 

#poetry #rock musician

夜について

 

松井陽大

 
 

甘いうつの織りなす絹の十字路で
ぼくは夜の墨に呑まれ彷徨う。
とても深い墨の夜
ぼやけた夏の空を浮遊する鈍い影。
その「墨」を放つ
軟体動物をしめ殺して
昼が再び訪れるとしたら?
また君に会えるとしたら?
あたりはしんとして蜘蛛の糸が
天から降りてきそうなほど
アスファルトに汗を垂らすエアコンと
室外機の虫声
ハイブリッドカーの低音が
僕の腹をかすかに揺らす。
あいも変わらずの夜の街。
ぼくらはこの空っぽのおもちゃ箱の
広大な黒い色面にくっついた
小さな二つの目にすぎない。
偉大な夜の子宮のなかでは…
「ドレイ」は夏を、「靄」と「ユメ」
を曖昧にさせ、2本目の煙草に火をつける。

 

 

 

漁港にいた

 

さとう三千魚

 
 

昨日の夜は
漁港にいた

漁港の幸八という

店で
食事をした

家族たちを迎えた

サラダふたつと
刺身の盛り合わせと
焼鳥と
煮出し豆腐と

ビールと
お酒と
カルピスと
あと

しらす丼と
食べたのだったか

家族たちと別れて
帰りは

漁港の
夜の

水面を見ていた

女がクルマで迎えにきてくれた

今朝
アイスを食べた

白クマのいる山の動物園まで家族たちを送った

白クマはいとしい動物だよ
家族たちもいとしい動物だよ

 

 

 

#poetry #no poetry,no life