michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

そよぐ

 

辻 和人

 
 

ふぉわふぉわ
白いおくるみに包まれたコミヤミヤ
ゆっくり柔らかく
首を動かし手足を動かす
保育器からコットと呼ばれる保育ベッドに移った
まだ要注意だけど体温調節も自分でできるし栄養も完全に口から摂れる
「お父さん、それではお風呂に入れてみましょう」
そーっとそーっと乳児用お風呂の台に運び
おくるみ剥がし肌着脱がす
真っ赤な体ぶぉわぶぉわひねって泣き出した
ひるまない、ひるまない
ボディシャンプーの泡で頭を洗い体を洗いお股を洗い
はい、バスタブへ
沐浴布お腹にかけたコミヤミヤ
急に静か
細っこい手足ふぉわふぉわお湯に浮かせて
そよいでるよ
口元ゆるーく結んで
頭からざっぷりかけ湯に
首の皺から股の皺までそよいでるよ
ふぉわふぉわ
「お父さん、赤ちゃんはだいたいお風呂好きです。胎内に似た感じだからでしょうかね」
それじゃ今
コミヤミヤは過去にいるってこと?
一度生まれてしまったら
赤ちゃんにだって過去ができる
わぁ懐かしい胎内だ
懐かしい、懐かしい
温かい液体にたぷたぷ体を包まれて
思わず細っこい手足そよがせちゃう
こりゃ首と肩しっかり押さえとかなきゃ
すっと過去にタイムスリップしちゃうぞ
戻れないところに戻って
コミヤミヤ、そよぐ
目をつむってもっとそよぐ
ふぉわふぉわ
ふぉわふぉわ

 

 

 

不忍

 

工藤冬里

 
 

木を切る百姓が僕は嫌いだ
折角生えた桐なのだから、娘が嫁に行く時に箪笥を作ってやれば良いではないか
庭木を切る家も僕は軽蔑する
切るくらいなら植えなければ良かったのではないか
家よりも木の方が大事だということを家は分かっていない
落ち葉を掃くレレレを僕は哀れに思う
植え込まれたのは底の浅い封建であって真の管理ではない
這い上る蔦の根元を断ち切る壁を僕は憎らしく思う
間違っているのは素材であり工夫すべきは屋根の方だからだ
今は忍冬を愛でる季節であり
忍んではならない池もあるのだ

 

 

 

 

#poetry #rock musician