あきれて物も言えない 12

 

ピコ・大東洋ミランドラ

 
 


作画 ピコ・大東洋ミランドラ画伯

 
 

酔生夢死

 

夜が明けて朝になった。

また、
朝になった。

部屋の窓を開けると西の山が霞んで青く見える。
空は灰色で、雨になるのだろう。
燕が低く飛んでいる。

コロナや、
戦争や、
紛争や、事故や病気で、
自分が死んでも、
他人が死んでも、お日様は昇り朝になる。

ここのところ世界は新型コロナウィルスの感染で人々が死んでゆく。
人々は、ステイホームし、自粛している。
自粛するよう要請されているのだから、自粛というのだろうか? 疑問だ。

まあ、それでも、朝は来るのである。
燕が飛んでいる。
生きているからこそそのことを知る。

国会ではコロナの最中に「検察庁法改正案」が上程されている。
検察幹部を退く年齢に達しても政府の判断でそのポストにとどまれる特例を可能とするという法案だ。
安倍総理は検察にも忖度しなさいと言っているのであろう。
政府は大多数の国民のコンセンサスを得られないだろう法案を強行採決しようとしている。

すでに呆れてしまう。

元検事総長ら検察OBたちは、
「検察人事への政治権力の介入を正当化し、政治権力の意に沿わない動きを封じて、検察の力を削ごうとしている」* 1 と、意見書を法務省に提出したという。

政府に対して「火事場泥棒」という言葉も聞こえる。
わざわざこのうようなコロナによる緊急事態宣言が発令されている時に急いで通す法案では無いだろうとわたしも思います。

国民はコロナでそれどころでは無いが国会の審議に注目しているだろう。

さて「酔生夢死」である。
ここのところ辻潤の本を読んでいて、この言葉に出会った。

辻潤は明治19年に東京浅草橋に生まれ、
昭和19年に新宿上落合のアパートで室内でシラミにまみれて死亡しているのを発見された。
餓死して死んだ、思想家で、ダダイストです。
伊藤野枝を大杉栄に寝取られた男でもある。

「浮浪漫語」という文章で「酔生夢死」という言葉を使っている。

酔生夢死

「なにひとつ有意義なことをせずに無自覚のまま死んでいってしまう」という意味と、
「自由奔放に生きる」という意味があり、
辻潤は後者の言葉の実体を、望み、生きて、死んでいった人なのだろう。

「人間の姿の一人もいない広々とした野原を青空と太陽と白雲と山と林と草と樹と水となどにとりかこまれて悠々と歩いていると、それらの物象がいつの間にかことごとく自分である。」* 2

と、辻潤は「浮浪漫語」に書いている。

辻潤は空っぽのまま、最後の最後まで自由を求め、生き、死んでいったのであろう。

世界にコロナウィルスは広がっている。
第2波、第3波のウィルスの猛威が想定されるのだという。

部屋の窓を開けると山が霞んで青く見える。

空は灰色で、雨になるのだろう。
燕たちは低く高く曲線を曳いて飛んでいる。

南方から大風が近づいているのだということだ。

 

作画解説 さとう三千魚

 

 

* 1 「朝日新聞」2020年5月16日朝刊より引用しました。
* 2 「辻潤全集 第1巻」「浮浪漫語」より引用しました。

 

 

 

lurk・隠れている

 

さとう三千魚

 
 

一昨日だったか

モコと

出かけるとき

路傍の
オキザリスの

ピンクの

花の
風に震えているのをみていた

昨日の
夕方も

ハルジオンの
花の

ピンクと
白の

夕闇に

かたまって
咲いていた

どれも
ちいさな花たちだが

そこには声があり
佇ちどまってみていた

地上は

わからない
わからないこと

ばかりだ

この地上には隠されている
大切なことが隠されている

佇ちどまる
佇ちつくす

この地上で感受しようとするが受けることができない
この地上でかつて繋がった者たちが片足から消えていく

オキザリス
ハルジオン

小さく震えていた
小さく揺れていた

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

neglect・無視する

 

さとう三千魚

 
 

無視されたことがある

かつて
大切と

思っていたヒトから

無視されたことが
ある

時間は追いつけなかった

なにも
手にはなかった

世界には
限定的なものだけがある

無限定なもの
無差別なもの

そのようなものたちは遠い

いまは
韮の花の

白く揺れるのを
みて

佇っている

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

mediocre・平凡な

 

さとう三千魚

 
 

犬の
モコと

散歩してると

白い星型の花と出会う

道路の片隅に
細い首を伸ばして

白い花
揺れている

細い首の先に白い花を乗せて
揺れている

ハナニラだと思ってた

でも花は
もっと小さいんだ

調べたら
野菜の韮の花だった

白い星雲が道ばたで風に揺れている

ブラームスの
最晩年の

ピアノ曲のようだ

なにも差し示すものがなく内側で光っている

6つの小品の
ふたつめの曲だ

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

feminine・女性の 女らしい

 

さとう三千魚

 
 

日は沈んだ

モコと
近所を歩いて

帰ってきた

西の山の稜線の上に

仄かに

真珠の
空が

見えた

帰ってきた
溟い部屋の奥で

マリア・ユーディナを聴いている

平均律の22番を
聴いている

表層で

くりかえし

波は
干渉し

あたらしい波は生まれた

中層から
深層へ

うねりとなり

うねりは
突然

表層にあらわれた

女は
海だろう

海の身体だろう

純粋身体だ

女はこの男を産んだ

消えて
顕れる

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

literary・文学の 文語的な

 

さとう三千魚

 
 

午後から
子どもたちと

遊んできた

青空の下の
校庭で

マスクして
駆けっこをしてきた

子どもらは

何度も
駆けっこをしようというから

終いに
おじさんは

へとへとになり付いていけなくなる

コロナの終わる頃
世界は

分断が進むという
二極化が進む

富めるものとその他の人びと

コロナの終わる頃
詩は

どこにいるのか

詩はいつも子どもらの傍にいる

その他の人びとの傍にいる
詩は語らない

そこにいる

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

voyage・航海 空の旅

 

さとう三千魚

 
 

今朝も

5時に
スマホは振動した

モコと

女を
起こさないよう

ベッドを
離れた

部屋の窓をあけた
西の山をみた

晴れあがった
空に

燕たちは飛んでた

川面の虫を
捕っているのだろう

この季節
燕たちは遠く

南アジアから
渡ってくるのだという

遠い空を飛んで

この国の
家々の

軒下に

子どもたちを産み

育てて
帰っていく

燕たちは曲線を曳いて飛んでいる

チキチキ
鳴いて

飛んでいる

赤い首をまわして飛んでいる

燕たち
風の中を

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

district・地区 地方

 

さとう三千魚

 
 

夕方

モコを
車に乗せて

港まで行った

海浜公園も

港の
駐車場も

閉鎖されていた

行き場もなく
帰って

近所を散歩した

小川の土手の韮の花の白く咲いている

道端には
オルレアの

花も
白く咲いている

オルレア
セリ科の花だという

芹の花も
白だ

秋田では田圃で育てていた
納豆汁に入れた

薬草なのだろう

一昨日みた
“火口のふたり”という映画を

思い出している

秋田が
舞台だった

象潟だろうか
海が見えた

西馬音内の盆踊りの景色もあった

セックスばかりしていた

男と女には
そうしたこともあるだろう

“火口のふたり”

もう
夜になった

西の山も見えなくなった

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

spread・広げる 広がる

 

さとう三千魚

 
 

5時に起きて
浜風に

HAPPY HONG KONG 2047 was disturbed by TOKYO 2020
のコンテンツをまとめた

昼前に
アップした

それから
広瀬さんのブロック塀の写真と

工藤さんの
少年という詩を

アップした

昼過ぎに
階段を降りていくと

モコと女がソファーで待っていた

昼食なしで
おしるこを食べて

また

二階で
アニュス・デイを

聴いてた

全てが貨幣に置換された世界に

その声は
いらない

辻潤は死んだ
たくさんの人が死んでゆく

汚泥に佇つ
人よ

汚泥に佇つ人たちよ

声は
与えられたか

夕方

モコと
散歩した

ノラたちがいた

西の山が雲に隠れていた

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

flesh・肉(体)

 

さとう三千魚

 
 

仕事
無く

家にいる

元々
仕事はなかったが

もっと
無い

午後に
浴室の裏の草むしりをした

軍手に
枯れた草が絡まる

素手で
草を毟る

トカゲがいて
女は

逃げていった

昨日の夜
“火口のふたり”という映画をみた

男と女が性交ばかりしている

西馬音内の盆踊りの
場面で

男は女の手を曳いてゆく

“はぐれている肉体” **

という
いいかたを土方巽はしていた

寒い
雨の日

家の軒下で小石を積んでいた

家出して
自転車でどこまでも走っていった

肉体は

どこへも
帰らない

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.
** 土方巽「美貌の青空」より引用しました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life