泳いでいましたね
夏休みには泳いでいました
雄物川の流れのなか
魚たちと泳いでいました
魚たちは
川底の小石のうえを群れになって泳いでいました
世界は水色にひかって
緑色の水草がゆるりと腰をふっていました
言葉のない世界でした
言葉はありませんでした
泳いでいましたね
夏休みには泳いでいました
雄物川の流れのなか
魚たちと泳いでいました
魚たちは
川底の小石のうえを群れになって泳いでいました
世界は水色にひかって
緑色の水草がゆるりと腰をふっていました
言葉のない世界でした
言葉はありませんでした
さよならアドルフ
というドイツ映画を観ました
窓の外で
火が燃やされていました
犬がピストルで殺されました
女の子には妹と弟たちと赤ちゃんの
兄妹がいました
深い森を逃げました
女の子は三角の窓から雪を見ました
燃える世界を見ていました
こんな朝が暴かれると、
知らぬうちに、茶碗は割れる。
斜光に、誘われるままに、吸われる、視界の
乾いた、野の、散らばる陶の欠片を、
ちくちくと音立てて、陽光の食う、その無残な作法に
飽きたのならば、まず滝のある隅の方角から
修行の血汗として、ぼとぼとと降ればいいことだし
それを語る、経を持つ僧の心気も、迸る虚言のようで
吐く川は、削ぐ皮となり、炎暑の鈴虫みたいに
すこし冷気が吹く、土塊の奥に潜んで
土食いに、喰われる。
斜光ちゃんの、茶汁がひびから漏れて
雲母の、急登に、踵がからまって、
それからやわな史蹟となり、
この甘辛さは寿司に巻かれる。
●
農夫の、濃みどりと
衣に降りかかった粉の白さと、斜光の暴きと、
どのような、誤記の作法で、みすぼらしい沼ができ
そこに汚い鯉を浮かべたのか。
●
正月も、縄燃える。
祈りの、おまえが、煙に化ければ、溶けるやないか。
●
巻紙の、水面が夕空の、弱法師、
追いかけてくる足音が、また煙を吸い
混濁は、坂の水を干す。
風を見るために、雲母の坂を降りてきた
猿に殴られ
鹿に蹴られ、
烏に頭髪の根を突かれて
それでも朝に、帰っていく。
(連作のうち)
手を振る
ヒトたちはいた
手を振るヒトたちはたくさん
いた
旗を振るヒトたちも
いた
日の丸を振るヒトたちもいた
たくさんいた
たくさんいた
すこし浮かれていたかもしれない
すこし悲しかったかもしれない
旗を振った
旗を振った
さよならといわなかった
わからない
わからなかった
そこは
赤土の崩れた
断崖の夕暮れの
坂道をのぼっていった
暗闇に
紅いぼたんの花が咲いていた
夕暮れは地獄だ
そこにあなたはいたのだろう
性を失って
わらっていた
あなたは紅い空をみていた
坂は過ぎていた
海を見てると
海って毎日違うんですね
波は繰り返しのようだけど
違う波が打ち寄せてるんですね
同じように見えるけど
変わってるんだろう
あなたも
毎日がまいにち
毎日がまいにち
変わっている
不思議に気づいたら佇ちどまっていた
このクニの
水辺に立てばいい
このクニの土の上に立てばいい
このクニの農民はいまどこにいるのか
このクニの漁民はどうしているのか
大きな夢のあとに
残されたものはなにか
夢のあとに消えさったものはなにか
アタラシイ自由のあとに勝ち残るものはだれか
朝になってしまいました
西の空が白く
その下に灰青の山々がみえます
パルティータを聴いていたのです
バッハがひかりを感じるには
空しく裸であったろうと思うのです
ひとりの貧しいヒトが見えたのです
いとしいヒトでした
そのヒトは弱くいとしいヒトでした
冬の陽射しに
桑原正彦の絵と
SMITHSのジャケットをならべた
still ill をくりかえし聴いている
鉄橋の下でぼくらはキスをした
唇がヒリヒリした
そうモリッシーは歌っている
だけどもうない
だけどもういない
そんなことをモリッシーは歌っている
ゼログラビティのなかで
重力は人間の関係性のことなんですよね
川崎さんはいった
子供を失い関係性を失ったヒトが
宇宙に浮かんでいた
やがて関係を獲得して地球にもどり重力を得たのですよね
川崎さんは渋谷の喫茶店でいった
王はいなかった
王はどこにもいた