こどものとき
ことばをうしなった
すでにうしなっていた
軒下の暗やみで
小石を積んでひとりで遊んだ
そこに真実があった
コトバをうしない
ないコトバに出会うことだったろう
詩は
絶対的な
ないコトバに出会うヒトだろう
詩人は
ないだろう
ないヒトだろう
こどものとき
ことばをうしなった
すでにうしなっていた
軒下の暗やみで
小石を積んでひとりで遊んだ
そこに真実があった
コトバをうしない
ないコトバに出会うことだったろう
詩は
絶対的な
ないコトバに出会うヒトだろう
詩人は
ないだろう
ないヒトだろう
石に
薔薇と秋桜の花を刻んでいた
白い雲が青空にぽかんと浮かんでいた
在ることを停止して
ぽかんと浮かんでいた
そのヒトもそうだろう
在ることを停止してそこにいたのだろう
花の刻まれた石の前で
たばこを吸った
しろい煙があがっていった
テーブルの上にはたくさんの物があります
長崎で買った陶製のキリスト
伊豆の射的場の裸婦の人形
アフリカの石彫の魚
石ころ
公園で子どもが拾ってきた石ころ
モコはテーブルのしたで眠っていた
モコは
テーブルのしたにいた
何もない闇がテーブルのしたにある
今朝は
もう時間がない
もう
出かけなければならない
でも
ひとことあなたに言いたい
生んでくれてありがとうございました
生んでくれてありがとうございました
やっと最近
そう言うことができます
やっとそう言えます
ありがとう
朝露の中で
閉じた花がひらくのをみていた
小さなラッパのように
閉じた白い花がひらくのをみていた
朝日にあたって
白い花はひらいていった
小さな命がひかりの中で振動していた
ひらいていった
ひらいていった
振動するものをみていた
昼寝のつもりが
夕方まで眠ってしまった
それから
散髪はやめてモコと散歩にでかけた
夕方の青空に
千切れた雲がオレンジ色に染まっていた
夢の中で見た雲だった
夢の中で見た雲だった
青空の中に
オレンジ色のテープがちぎれて浮かんでいた
北千住で
会津田島行きの列車に乗った
列車から
青空に白い雲が浮かんでいるのをみた
白い雲はそこにあった
白い雲はいつまでもそこにあった
ぼたるさんの墓石には
薔薇と秋桜の花が彫られていた
ぼたるさんの花が薔薇で
わたしの花は秋桜と奥さんは笑っていった
部屋の机の上には
がらくたがあります
若いころ長崎で買ったキリストの陶製の置物
アフリカ展で買った石の魚の彫物
温泉の射的の的だった裸婦の人形
セメントの地蔵
子どもが公園でひろってきた石ころ
がらくたは
机の上で見ていました
わたしも見ていました
あまり
なかったな
あまり
考えていなかったな
波が
あれほどの大きさになるとは
ヒトビトが
あれほどの大きな波に流されるとは
原子炉が
あれほどの大きな波をかぶり爆発するとは
わたしたちのサイズを超えるものを
わたしたちのサイズを超えるものを
休日には
波を見ています
休日には
いつも波を見ています
いつまでも
打ちよせる波を見ています
荒れた日も
凪いだ日もそこにいます
そこに
ヒトビトはいます
ヒトビトのまぼろしはいます
ぼたるさんもいます
手を振りました
手を振っていました
何も言えませんでした
何も言いませんでした