ねこと花 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 003     kei さんへ

さとう三千魚

 
 

ねこも
花も

うつむく
ことがある

空を
みあげることも

ある

藤の花は
垂れて

咲いている
薫っている

 
 

***memo.

2025年8月23日(土)、
浜松「はままちプラス」で開催された”再詩丼”にて、
“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第40回、第2期 3個めの即詩です。

タイトル ” ねこと花 ”
好きな花 ” フジ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

コミヤミヤとの肌時間

 

辻 和人

 
 

うっすらしっとり額に汗だ
お昼寝から醒めて手足パッタパタするコミヤミヤ
ようし、よし
ガーゼハンカチ水に濡らして拭っき拭き
顔、脇、お腹、背中、おててにあんよ
ひやっとするよパッタパタ
おしっこで青い筋浮き出たオムツ交換
汗で濡れた肌着も交換
アヒャアヒャッと笑いかけてきたので
抱き上げる
2100グラムで生まれて今は7000グラムのコミヤミヤ
抱っこすれば
ふっくらお腹が密着
むっちり太ももが密着
肌だ
喋るのはまだまだ先のコミヤミヤ
「気持ちいいかい?」って言っても答えられない、けど
頬っぺたすりすり
背中ぽんぽん
お尻ゆらゆら
肌で会話できる
ほーれ
ぽんぽん・ゆらゆら・すりすり
どうだ
気持ちいいかい?
アヒャアヒャアヒャヒャッ、アヒャアヒャアヒャヒャッ
肌で会話できる
肌時間
8月の終わりの午後
コミヤミヤとの肌時間が
アヒャアヒャ流れている

 

 

 

どろ

 

廿楽順治

 
 

わたしの目にどろをぬり
わたしが
それを洗い
そして見えるようになりました

日曜日も
にもつをはこんでいるひと
そのひとは
日曜日をどうおもっていますか

見えるひとたちが
見えないようになるために

にもつをはこんでいます
どろをぬりにいきます
それらの目に
地面をあたえるために

つめたい車を
ひとりで汚れながら引いていき
その轍を洗うと

わたしはおのずと
鏡のような平野になります

べつになにも
思いません

 

 

 

む行

 

道 ケージ

 

「む」は「ん」と読む
むんむんムンムン
んは無音化する
むむ
むほんです

むはむむはむむはん
無は無
んーむ
ハム半分残しはんなり
無理じゃないん

無駄に麦を蒸す
ムハンマドむっつり
昔ムキムキ
無害の不精

無一文の村
無限の昔
息子に無理強い
ムズイとムスコ
無理
結んだ紐でむぎゅ

無我夢中で向かった
酷い
無間地獄
むせびなく

むき身無理やり
無銭飲食
無償の無罪
むく犬の迎え

無勢で多勢
無垢の武蔵
向こう傷
村雨無敵
無為に向かう

無闇に
胸元無造作
むせかえる
無邪気な夢精

紫むらぐも
ムンバイ無風
群れのムクドリ
無響

向かいの村
無辜の婿
無毛無関心
鞭打ち無情

むたいどすえ

 

 

 

鳥海山と手帳と

 

さとう三千魚

 
 

帰った

西馬音内から
帰ってきた

秋田では
姉と

鳥海山の鉾立まで登った
鉾立から人びとのいる地上を見た

花巻の賢治記念館では
照井良平先生にお会いした

賢治記念館に手帳の複製はなかった

珈琲の後に
羅須地人協会と

賢治の墓を見せていただいた
照井先生にはやわらかい笑顔があった

西馬音内では盆踊りを見た
西馬音内の盆踊りは亡霊の踊りだろう

笠を被り
頭巾を着け

顔を無くし
亡き者の傍らで踊る

幻影だろう
亡き者たちを抱いている

鳥海山も
手帳も

姉も
義兄も

幻影だろう

母も父も兄も祖父母も
沖縄の戦争で死んだ叔父も

幻影だろう
ウクライナもパレスチナも幻影だろう

奥羽本線で
山形に抜けるとき

電車の中から

やわらかなみどりの山々を見ていた
やわらかな懐かしい山たちを見ていた

畑のなかのトタン板の小屋も見た

山形新幹線は地上を走った
月山と羽黒山を遠く見て走った

埼玉では激しい雨のなかを走った
新幹線は激しい雨のなかを走っていった

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

Like snow in summer

 

工藤冬里

 
 

首を傾げて
塗り固めた本能を
屡々強く糺される必要があった
一方的な推論の矢が
耳を吐く戦場では矛盾していない
転がした石が戻って来て潰される
食べるのも億劫
Am not I in sport? 悪戯をしてはいけません
仙台育英がモーニングの目玉焼
羽のインスタが駐車場契約を吐く
9月になれば
新しい言語が始まる
食糧難は陣痛のはじまり
飽和状態で推移する暮らしは終わる
地震の規模ではなく苦しみの多寡で判断される
4355年前
売り場に豆腐が並んでいる
切り分けられて服している柔らかさ
紋章は狼のよう
チャラチャラしたバリエーションはあるけれども汚名を晴らすことが中国ショートムービーの王道となっている以上
誰が上帝かという法廷は必ず開かれなければならない
青い嘘としての球
二の腕の弛み

 

 

 

#poetry #rock musician

激しい雨

 

さとう三千魚

 
 

昨日か


嵐の朝か

雨のなかを河口まで歩いてきた

小川沿いの歩道には
蛞蝓や

蝸牛が
いた

角のような眼をのばしていた
ゆっくり

歩いていた

時折
雨が地上を叩いた

蛞蝓も
蝸牛も

地上に
いた

人もいた

午後に女と
映画「国宝」を観に街に出かけた

女は

よかった
三時間眠らずに観れた

そう言った
満席の映画館は

夏休みのアニメ映画のようだ
エンターテインメントなんだ

面白ければいいのか
我を忘れるほどにか

昨日か

嵐の朝か
いつもの朝にか *

激しい雨に打たれて *

いた
歩いていた

角のような眼をのばして
ゆっくり歩いていった

 
 

* ボブ・ディランのアルバムのタイトル”HARD RAIN “と歌のタイトル「One Too Many Morning」を引用しました

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

無防備都市

 

工藤冬里

 
 

無防備都市は灰とピンクか黒と薔薇か
世界政府であろうと信頼できない
右目を押さえると黄緑が湧き出る
魚は食べない
今ゲームしてるからちょっと待って
今や彼らはしようと思ったことを何でもできる?
煉瓦で塔は建てられない

駐在!Ambassador

大夏では共産主義は根付かなかった
大使はバージョンアップされてゆくゲームに沿って盛大な平手打ちの音を立て
世界の半分と顔の雛型を生産し
滅ぼしてから返す
あとは父に直接言ってくれ

駐在は朝からラーメンを作って死んだ、
と未亡人は懐古した
遺影は笑っていた
イエイ

 

 

 

#poetry #rock musician

Pella 或は一時的な娯しみは

 

工藤冬里

 
 

詩の場所で寝ているなら
寝シャカになってしまってそれは間違いだ
口中血を流しながら寝るのだ
やられたらやり返してもらえ
相対的に価値が低いので
時計を囮に使うな
娯しみよりも深くdeeper rooted
うれしさよりも輝きradiant
表現的demonstrative
瑠璃色の窪みが琉球ガラス
5時頃
蛍に続いて最期の挨拶に来たかなかなをビーリールしようとするのは間違いだった
ペレアで透明にされ、
紫の壁に引っ掻き傷の通報

 

 

 

#poetry #rock musician

街に佇つ

 

さとう三千魚

 
 

月の初めの
日曜の

夕方

街に佇つ
昨日も佇った

静岡駅北口の地下広場に佇つ

天窓の向こうに青空と駅前の木立が見える
地下広場には水の流れる音がする

“殺すな!”
“STOP KILLING IN GAZA! ”

そう書いた
ダンボールのプラカードを持つ

佇つ

ほとんどの人たちは目の前を通り過ぎていく
チラと見て眼を逸らし通り過ぎていく

この世のすべてが通り過ぎていく

昨日は
インドの人か男性がカンパしてくれた

ほほえんで
握手もしてくれた

MITさんも最後に来てくれた

流転の人を感じる
目の前に通り過ぎていく人たちも

GAZAの人たちも
ここに佇つ男も

地上を過ぎ去る者たちだろう

夜になり
MITさんと別れた

地下広場の丸い大きな天窓に群青の空が見えた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life