にくいため

 

道 ケージ

 
 

憎しみを煮詰めると悲しみができた
悲しみを蒸すと春雨だった
悔しみを茹で上げ筋を抜く
楽しみの唐揚げは二度揚げしない
慈しみを刻んで匂いをかぐ

そうめん
にくいためで一生を過ごす
からすみほうばり
きゅうときゅうっと
おにしめ
だきしめ
血抜き
ちんする
皮むいてむいて
むいてむいて
たるたる
ソース添え
そば
どん

 

 

 

ケラレタサ エス

 

道 ケージ

 
 

ボクけられた
それはボクでないけれど
ボクらしい

デカいブタが
いいかげんにして、ぶー!と
蹴ってきた

ボクじゃないけど
ボクらしい
なぜボクと気づくのか
ブタのくせにさ

ボクじゃないよ
でもボクかな
なぜオマエは気づくの
蹴るかブタ
ブタけったぶたけった

がはがは それエス
独り言だったようだ
ないないないって探してると
蹴られたさ
夜中にパノニカ探すな、マン!ってさ

 

 

 

へぬか

 

道 ケージ

 
 

火曜日
へぬかに行った
何もない
怒鳴り声だけが聞こえる
なれなかった者と
なりたかった者が
罵り合っている

へぬかには何もない
波も風もないから
週末夜明けのFM

廃園の教師が
倒れた鉢を直す
遠くで蹲る男
コンビニの袋を
追い回している

突然耳元でいわれるのだった
言い残すことはないか
ここで終わるとは思えませんが
おまえのきめることではない
丸まった姿をもとに戻すと
すでらかしたのだった

 

 

 

へきそ

 

道 ケージ

 
 

へきそですね
そう言われても
で、どれくらい
わかりません
何をすれば
鶏頭は鶏頭として
その皺を抱えますね
そこの障子に映りますね
牛が
殺されながら
尻尾を振るでしょう
へきそだからです
その紐をですね
ほとけにむすんで
ぶらぶらさせると
よいと言われています
聖福寺
家庭線を引き延ばして
爪弾くことは
やめだらに

 

 

 

月と沼

 

道 ケージ

 
 

沼に差し掛かると
そこへ入るのだった
抜き身は
紫の波紋濡れ
悔いを落とす

月影は伸び
這うように後退りしたのだった
茅で傷だらけになり
黄色い目でマンセー

岸辺ではなく
丸みから肌を知る
時と月(突起と突き)
殺後
笑う

 

 

 

あな

 

道 ケージ

 
 

こんなハムじゃない。こんなあじじゃ南蛮づけにもならない。あなに入って思う。少し飢えて少し痛い。お皿を返す。小さい扉の出し入れ。鉄柵を少し揺らす。赤錆のにおい。罪を考え星状の砂が舞う。酢飯の香りだが、回ってこないことはわかっている。眠れないのは起こされるから。タルズ・ブルースが聞こえ、床のビスケット屑。少しだけ寝る。どうせ起こされる。仕方なしにもう少し掘る。目地の割れ目に釘を指し、ささくれが啼く。免疫学の研究に従事シマシタ。ネズミ、蚤、蠅、蚊。ワレワレノ手ニヨッテ、証明サレタノデス。自慢です。モッタイナイデスカラニ。目地沿いに入る。うまく縮めて。切った方がいいのか。汁状にするか、捩り入れるか。蒸し返す。風は、風は。

 

 

 

なったらしく

 

道 ケージ

 
 

脱皮しようと
もがく
すでに手はなく
脱ぐのは苦労

体液がひどく臭い
うまく脱げない
また嫌われちまうな
「生理的に受け付けらんない」
アクアラングの脱ぐより
ツラい
脱いでも一緒

足は何やらバタフライぎみだが
すでに足なく
妙にばたつく
これ脱皮じゃないよ
呑まれる途中
もがき出てんのかも
まぁどっちも同じ
消化されたらそれになる

歯が当たって
シャーってうるさい

被ってなよ
借り物競走みたい
人殺しの顔して
手癖足癖が悪い
非道の言葉もシャーと同じよ

つけんだりや
殺めたりや
シャー、シャー、シャーって

 

 

 

ミャンマー

 

道 ケージ

 
 

ミャンマーに行く道は二つ
倒木を渡るか
穴を掘るか
途切れるか埋もれるか

泥を呑むのは嫌だし
私は私を引き連れて
我々は影を連ねて押し黙る

なまず溜りで立ち止まる
我々はどこに行った

私は結局透明な水面に渡された
倒木をよろよろと渡る
透き通る青が美しい

女はこともなげに走り行く
頭にお土産をのっけて
これで辿り着くのか

陽射しが翳ると
あまりの透明さに「我々」を思う

この橋をうたがった途端
崩れ行く仕組みになっている
それでも波はないから
投げ出されても安心

透明な塩水は緑の服に染み入って重い 
空気だまりでぷかぷか浮かぶ
上から白い制服の男たちが軍刀でつついてくる
やめてほしい

丸い橋にやっとこ上り
エメラルドグリーンの中
もうどちらがミャンマーかわからない

 

 

 

チエコ先生

 

道 ケージ

 
 

陽水の「チエちゃん」を聞くたび
思い出す
中学1年次の教育実習の先生 
チエコ先生

滝口くんと一緒に下宿に遊びに行ったり
ぼくの家で鍋を囲んだり
ねえさん先生
ケーキを食べた
「スケアクロウ」を見た

家を出る間際、母はなんば浮かれとうとね、と
「イージー・ライダー」との二本立てだった
中州川端大洋館、スケアクロウはよく覚えている

そのころから何やら書いていたので
お別れの赤間の駅のホーム
白い日記帳をくれた
「たくさん埋めるんだよ」
そう言ってくれて別れた
もう会えない