火星にひとり

 

加藤 閑

 
 

風船に鳥と息入れ次の町

悉くゼロにしたき日白子干

約束の石吐き出して牡丹咲く

新緑に眼射られぬことを家訓とす

嘴を風に曝して抱卵季

消しゴムの滓半分はうごく蟻

火星にひとり麦秋の中にゐる

言の葉を朱夏に染めけむ鳥数多

花ひとりは死なず「返禮」の詩人連れ行く

衣脱げば蛇も階踏み外す