島影 50

 

白石ちえこ

 
 


新潟

 

海からの強風で国道に砂が押し寄せていた。
誰もいない浜を歩くと捨てられた冷蔵庫や季節外れの海の家が半分砂に埋まっている。
こんなに埋まってしまうまで、どのくらいの時間がたったのだろう・・。
立ち止まってぼんやり景色を見ているうちにも砂は吹き寄せる。
わたしも足元から砂に埋まっていく恐怖がわいてきて足を踏み出す。
歩くうち、轍がついた浜辺に出た。遠くに紺色の海が鈍く光っている。
ヒトの気配に触れて、少しほっとした。

 

 

 

わたしの車で行こう

 

工藤冬里

 
 

路面凍結しても
七草が見つけられなくても
手のひらを刺し通されても
ラブシャケやFBIが工作しても
生姜や葱が足りなくても
看守のために祈り
發音が人形劇のようであっても
怒り狂って道連れにしようとしても


国に陽が当たり
ジャズに影が差している
地軸は傾きを矯正され
私たちはストレートネックとなっている
北からの見えない波の濃淡を測定せよ
いつまでですかと問い続けよ
新しい歌が歌われるまで

阳光照耀着国家
爵士乐上有阴影
倾斜轴线在拉直
我们成了直肠子
衡量北方的波浪
继续问它有多长
直到新歌被唱起

 

 

 

#poetry #rock musician

ちょっと傾いた塔

 

辻 和人

 
 

四角い
白い
薄い
ひらひらひら重なり
ちょっと傾いた塔
1回の洗濯でできた
ガーゼハンカチ15枚だ
グリーンのソファーの上に畳み終えたトコ
コミヤミヤのやわやわお顔をやわやわ拭いたり
こかずとんのげっぷたらーりミルクたらーり掬い取ったり
はい1枚、はいもう1枚
他にもベビー服にシーツにバスタオル
気づくと日に4回以上洗濯機回してる
洗濯機のセンタッキー
キミはえらいなあ
ぼくも深夜までコミヤミヤとこかずとんあやしてて
寝不足で階段から転げ落ちちゃったくらいだけど
センタッキーの働きぶりには負ける
こないだ排水の部分を開けたら
ぬるっちょっ、こりゃ何だ
今まで2週間に一度掃除してたんだけど
かつての2週間分の埃がたった2日でぬるっちょっだ
ぼくとミヤミヤが交代で寝てる間にも
グォーングォーン
水回ってる
見えないトコ、知らないトキ
回る水ってのがあって
その結果としてここに
ちょっと傾いた塔が立ってるってわけ
つまりこいつは
センタッキーの不眠不休の化身
おくるみの中で手もにょもにょ口もにょもにょ
お昼寝に入ろうとするコミヤミヤとこかずとんを支えてる
おっ、ミヤミヤまた洗濯モノの山持ってきた
「乾燥しない」モードで動き出す
グォーングォーン
眠らない、休まない
ひらひらひら
四角い
白い
薄い