ゴシパラヤケル

 

白鳥 信也

 
 

伯母さんが来て父親に言う
職場の行事が失敗したのはあんたのせいだと上役に
さんざぱらかつけられた
ゴシパラヤケル
父親はそうくどきすな
見ている人は必ずいるもんだっちゃっと自分の姉に言う
小学生の僕は伯母さんの持参したバナナにかぶりつく
ゴシパラヤケル
腰と腹がやけるものなのか

伯父さんが来て父親に言う
昨日の晩に桃畑に泥棒が来て
桃をごっそり盗られた
ゴシパラヤケル
父親は柵がねえからまたやられるべと自分の兄に言う
中学生の僕はその夜
桃畑の番をさせられる
夏休みの気楽さで手伝うよと言ったけれど
からだじゅう蚊とブヨに刺される
坊主頭まで刺され
かゆくて我慢ならない
こんなとき
ゴシパラヤケル
と言うものなのか

父親の三回忌に出るため
仕事を休んで東京駅から東北新幹線に乗る
法事が終わって実家の茶の間で
リンゴの皮をむきながら母親が言う
おまえたちの父親も伯父さんも伯母さんも
生まれてから死ぬまでこの町にいたから
東京生まれのあたしには
わからない言葉だらけでさ
ようやくわかるようになったころは
みんないなくなっちゃったけど
いまでもゴシパラヤケルは使えない

その場では何も言えなかったけれど
東京で僕は
思わず口から出ることがあるんだ
こんなことされちゃごしぱらやけるって

 

 

 

また旅だより 40

 

尾仲浩二

 
 

初めて津軽海峡を船で渡って函館へ行った。出港が危ぶまれる程の荒天だったが、少しくらいは揺れないと気分が出ない。他に乗客もいない船室で、用意しておいた焼酎を飲んだ。酔う前に酔えばいいのだ。
函館には何の用事もないのだけれど、大人の休日きっぷで青森まで来たので、そのついでに行ってみたのだ。
雨があっという間に雪になったり、突然快晴になったり目まぐるしく変わる空模様で、これは写真を撮るのには楽しい。寒風で芯から冷えた指先は、塩ラーメンのどんぶりに押しあてて温めるのがいいと知った。

2021年12月5日 北海道、函館にて

 

 

 

 

へきそ

 

道 ケージ

 
 

へきそですね
そう言われても
で、どれくらい
わかりません
何をすれば
鶏頭は鶏頭として
その皺を抱えますね
そこの障子に映りますね
牛が
殺されながら
尻尾を振るでしょう
へきそだからです
その紐をですね
ほとけにむすんで
ぶらぶらさせると
よいと言われています
聖福寺
家庭線を引き延ばして
爪弾くことは
やめだらに