Still Alive On The Eighth Day

 

狩野雅之

 
 

「過去の真のイメージは、ちらりとしかあらわれぬ。一回かぎり、さっとひらめくイメージとしてしか、過去は捉えられない。認識を可能とする一瞬をのがしたら、もうおしまいなのだ」(野村修訳「歴史哲学テーゼ」)

 


On The First Day

 


On The Second Day

 


On The Third Day

 


On The Forth Day

 


On The Fifth Day

 


On The Sixth Day

 


On The Seventh Day

 

 

 

分断の詩学

 

工藤冬里

 
 

病んでいるのでトイレに籠っていた
雨粒の付いた髪の毛が揺れる
一度切られた桐もまた伸びた
でも水をかけられているのはバオバブの木
二十年で言葉も変わってしまった
選挙当日
二十年で言葉も変わってしまった
世界は邪悪な者の配下にあるので
議会制民主主義など役に立たない
電子機器に気を散らされ
選挙当日
不法の者を未分化のままにして
選挙当日
分断の詩学
選挙当日
柔らげる努力はした
切断面は衝上断層を見るようで
選挙当日
差異ではなく切断面の看板を眺める
「衝上断層」
断層をとくと眺める
中生代が新生代を衝き上げている
まだ進化を信じているような人に何を言っても無駄だ
選挙当日
人の棲まない場所になる
選挙当日
助六型のトヨタシエンタの目が増えた令和
小スプーン一杯の表面のDNAで全ての思い出は生きているから
順ちゃんにはまた会えるよ
目は少し小さくなってるだろうけど
歌集 標野は作ってあげたかったな
つぎつぎに声がする
クリミナルのひとりだ
選挙当日
子どもは大人とは全く違う別の動物だ
美学にしたのには訳がある
近づく人を信頼できなくなるんだろ
選挙当日
「全部おまえのせいだ」
選挙当日
「これは二人だけの秘密だよ」
選挙当日
「きみの言うことなんかだれも信じてくれないよ」
選挙当日
「好きだったらこういうことをするんだ」
選挙当日
幸福の扉が閉じられたと思ってたら
別の扉が開く
桐のように
選挙当日
またボーダーを着てるのか
選挙当日
温められた菓子にはグッときたと思います
(What’s your business here, Elijah?)
ボーダーを着たパゾリーニ組の座員
選挙当日
創が深くなりづづけている

 

 

 

ミロより優しく、ゴッホより激しく、ピカソより純真

 

佐々木 眞

 
 

ミロより優しく、ゴッホより激しく、ピカソより純真
私は、そんな絵を描く人たちを知っています。

それは、ミロさんよりおつむが弱くて、ゴッホさんより気が弱くて、ピカソさんより間違いなく貧しい人たち。

そのほとんどが、家族や親切な人たちの助けなしでは生きていけないような、世間のひとさまと争うことさえできない弱い弱い人たち。

まあこういってはなんですが、落ちこぼれのような人たちなんですが、
それでも
ミロより優しく、ゴッホより激しく、ピカソより純真
そんな絵を描く人たちなんですね。

ミロより優しく、ゴッホより激しく、ピカソより純真
そんな絵。そして、そんな人たち。
ああ、私にもそんな詩が書けたらいいのになあ。

 
 

 

 

last song ending

 

原田淳子

 
 

 

雨粒に光
暗闇はまぶしいって、はじめて知った

光の速さで
願いごとをかけるまもなく
雨は流れ星になった

与えられた問いは単純で
扉は開いてるはずなのに
ふくざつに絡みあってしまった鳥籠のなかで
雲の影がかたちをかえた

望んだものは与えられた
願いを投げたところとは違う角度から

おまえは自分の掌しかみえてないね
おまえの背中をみてごらんとでもいうように

生は死にぶらさがり
死は生にさかあがり

生まれてはじめてのことばをおもいだしている

誕生は月食

願いは純化して
雨粒が鳥籠を砕く

暗闇がまぶしい

 

 

 

あきれて物も言えない 02

 

ピコ・大東洋ミランドラ

 
 


作画 ピコ・大東洋ミランドラ画伯

 
 

海の日なのだ

 

今日は海の日だったのかな。

この港町にも、
参院選の宣伝カーが回ってくるようになった。

候補者の名前が連呼される声は、
やかましいが、今回はやかましいとは言えない場合なのかな。

参院選の争点は、Y!ニュースの88,045人が回答したアンケート結果を見ると、
1)経済政策 33.2% 2)社会保障 26.3% 3)憲法改正 17.8% 4)外交・安全保障 9.6% 5)働き方 2.5% 6)子育て 2.4% 7)原発・エネルギー 2.2%
となっています。

選挙民の関心は、直近の自己メリットということなのでしょうか?
各政党は選挙民の自己メリットに訴えてくるのでしょう。

優先するべき「働き方」や「子育て」、「原発問題」、「憲法」など人間の基本的な問題が後回しになっている。

そう言えば、「経済で勝つ!」というコピーのポスターが数年前の町々には貼られていた。
それでその政党は勝ったのだった。その政党の選挙参謀は人々の自己メリットへの傾斜を見据えていて勝利したのだったろう。

人々は直近の自己メリットを生きている。

さて、海の日なのだ。
海には、魚たちやフナムシたち、亀たち、海豚たち、鯨たち、カモメたち、海鳥たち、貝たち、ゴカイたち、などなどなどがいる。

今朝の「天声人語」には島崎藤村の詩「椰子の実」が引用されていた。
<名も知らぬ遠き島より/流れ寄る椰子の実一つ/故郷(ふるさと)の岸を離れて/汝(なれ)はそも波に幾月(いくつき)>

新聞には引用されていませんが、詩はやがて<我もまた渚を枕/孤身(ひとりみ)の/浮寝の旅ぞ>と藤村の心情が歌われる。

しかし最近は、椰子の実よりもプラスチックの洗剤容器、レジ袋、サンダル、ペットボトルなどが、浜辺には打ち寄せているのだろう。嵐の後などは浜辺にうずたかく堆積しています。
わが港町の浜辺だけじゃない。どこの浜辺でも似たようなものでしょう。

海は繋がってますからね、国を超えて繋がっている。

今朝の「天声人語」では、2050年には海に捨てられるプラスチックが世界中の魚の総重量を上回るという試算が述べられています。

海には、あまり自己メリットはないから、捨てちゃえ、ということでしょうか。
わが港町の突堤にも土曜、日曜にはたくさんの釣り人たちが集まります。
子どもを連れて釣りにきている若い夫婦もいます。
それで土日の休みが終わると突堤はゴミだらけになるんです。
そのゴミを常連の釣親爺たちが月曜日に片付けていたりしてるんですね。

わたしも以前は遊漁船に乗って釣りをしました。
それでコンビニ弁当やカップラーメンを食べたりしますと最後に船頭さんがゴミを集めて、
海にポイと捨てたりするのを見てしまうんです。

もう何も言えません。

たまたまわたしたちヒトに生まれちゃったのです。
ちょっとした遺伝子の組み合わせでヒトではなくわたしたちゴンズイやコノシロ、サヨリ、キュウセン、オジサンであったかもしれない。フナムシであったかもしれない。

一度、真夏の海に一人でボートで浮かんでいて、ウルメイワシの大群の上に浮かんでいたことがあります。

海がウルメイワシの背中で真っ黒になるんです。
サビキの仕掛けを海中に下ろすとウルメイワシはいくらでも釣れちゃうんです。
それでその海中をよく見ると無数のプランクトンが泳いでいるのです。
ウルメイワシの大群はそのプランクトンに集まっていたのでしょう。

海は生命のスープなのだと思ったのを覚えています。

 

作画解説 さとう三千魚

 

 

 

塀 180928, 181001.

 

広瀬 勉

 
 


25:180928 東京・杉並 阿佐谷南

 


26:181001 東京・杉並 阿佐谷北

 


27:181001 東京・杉並 阿佐谷北

 


28:181001 東京・杉並 本天沼

 


29:181001 東京・杉並 井草

 


30:181001 東京・杉並 井草

 


31:181001 東京・杉並 井草

 


32:181001 東京・練馬 南田中

 

 

 

The abuser

 

工藤冬里

 
 

ほど遠く
1968の歌謡曲を組み合わせる
cell様の中に黒點
投票日に児童虐待をおこなった
小石や根の多い部分に行き当たる指先が
絶望を攀じるようだ
腰にずきん
革命からほど遠く
法律はぼくらを護る
蛍光マーカーのどんな色もフィットしない雨の日の
どんな声色も眉もフィットしない雨の日の
grossがsinを形容する様
愛からほど遠く
ほど遠く

 

 

 

また旅だより 11

 

尾仲浩二

 
 

且つて阿佐ヶ谷で古いアパートを借り写真ギャラリーをやっていた。
5年前に大家さんが亡くなり取壊しのために立ち退いたのだった。
人づてに、まだ街道のアパートが残っているよと聞いてはいた。
でも朽ち果てた姿や、更地になっているのは見たくはなかった。
その日は天気も気分も良く散歩のつもりがついつい遠くまで、そして街道はまだあった。
それほどひどくもなっていない、今にも誰かが出てきそう。
ありがとうと言って階段は登らずに駅に向かった。

2019年6月13日 東京 南阿佐ヶ谷にて

 

 

 

 

蛇道

 

道 ケージ

 
 

蛇の抜け殻のような道
その果てまで両側は
灰色の竹
竹並木というのか
こんな処があったとは

何やら苔のような
おびただしい
びらびらを
はためかせている

かなり急だから
もう登れそうにない
ウロコの跡は
あぁ、キャタピラの跡か

何やら息苦しい
肺か心臓がやられている
カジイかよ
坂に耐えられない

あぁ、オレは人殺しだったのだな
はなから許されてない
なら呼ぶなよ
この道行きが罰?

靴はもう泥だらけだ
土産の水羊羹はどうする
詫びじゃない
礼儀にすぎない

先輩が言ってたな
相撲辞めちまいな
川沿いの堤の道である
自転車が捨てられ
錆に雫

野望はどうする
張り手で殺した
茅の輪くぐっても
もう遅い

 

注「カジイ」は梶井基次郎のこと。