広瀬 勉
東京・中野界隈。
人間は水でできているから
大気の水が不安定なときは
からだのなかの水も影響を受けて
バランスがくずれてしまうのさ
ぼくがわるいんじゃない
天気のせいだ
6,000度の
熱に
触れたこと
が
ない
70,000人のヒトが
160,000人のヒトが
死ぬのを
見たことがない
石の天使の首が
風で
飛ぶのを
見たことがない
国のために
敵を殺せと言う
母と父と妻と子供のために
敵を殺せと言う
口から漏れた台詞は
静かで 恍けた 冷たい 現実
目がしら 泪つくる
目撃されろ泪
人に見られて
なんぼの泪
自動的に 夜
脱ぎだすぽっくり
きみは 不穏分子
暗闇で光った泪は
百鬼夜行を捕まえる警察の白い笛
に似ていた