光の疵 迷子

 

芦田みゆき

 

 

よく知った道だった。
だから、あの日のあたしは地図を持っていない。
日差しは強く、道は白く、幾度も同じ場所を通過するたびに、あたしはあたし自身をあちこちに置いてきているような気がした。

 

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魅惑する景観。揺らぐ花、異国の雑貨、まだ入ったことのないレストラン。
あぁここだと角を曲がると、あるのは光ばかりだ。
よく知ったはずの光景は白く塗りつぶされ、ゆるゆると流れはじめる。
そして次第に、あたし自身も白くなってゆく。

 

3

 

4

 

あたしは思い描く。
この道の先にたたずむ、見慣れた店の入り口。珈琲の香り。店内の喧騒。裏庭の立像たち。
いつまでたってもそこへの入り口はみつからず、
歩きながらあちこちに置いてきた無数のあたしは、
迷子に気がつくのだ。

 

5

 

 

 

 

pond 池

 

そこに
いた

ひかりは
射していた

祠のまえに
ござをひいて

すわって
いた

笑って
いた

牡丹の紅い花が咲いていた

母も
沖縄で死んだ

叔父さんも

笑って
いた

祠の横には
泉があり

山椒魚たちが
泳いでた

そこで産まれ
帰る

そこに帰る