今朝
電車のなかで
毛糸の帽子の女の子をみた
肌色のまるい帽子に
毛糸の細い毛がけばだっていた
光っていた
肌色のタンポポだった
それで
それだけで
しあわせだった
不思議を
きみはたくさんもっているね
たくさんの不思議をもっているね
今朝
電車のなかで
毛糸の帽子の女の子をみた
肌色のまるい帽子に
毛糸の細い毛がけばだっていた
光っていた
肌色のタンポポだった
それで
それだけで
しあわせだった
不思議を
きみはたくさんもっているね
たくさんの不思議をもっているね
増えてしまった
増えて
おなかが出てしまった
おじさんの体型になってしまった
増えるものは信用ならない
どこかで減ったものがあるはずだ
ぷきあぷきあ
ぷきあぷきあ
増えることばでなく
幻影のむこうにないことばがある
ないぷきあぷきあ
名前をあたえている
名前のないものに名前をあたえ
ユージさんはピアノを弾いている
名前のないものは他者を求めている
今朝
浜辺で波紋をみていた
波紋はひろがっていった
波紋はひろがっていった
いくつもいくつもひろがっていつた
今夜、車のラジオでデュファイのミサ曲を聴いた。
わたしは仕事の関係上、週の大半を茨城の土浦で暮らしている。
ミサは「キリエ」から「アニュス・デイ」に移っている。
わたしは毎日れんこん畑の中の道を走る。
道のあちこちに小ぶりの魚のようなものが横たわっている。
雨に煙ってひろがる関東平野に、
デュファイのミサは、もともと彼が若いときに書いた祝婚歌「
何日かして、あの白い腹を見せて横たわっているのは、
しかし、
甘ったるい詩を書いてんじゃないよ
深夜
荒井くんが電話でいった
荒井くんには甘かったのだろう
叙情に過ぎるということか
情が残っていたのか
自我の匂いが残っていたのか
今日
浜辺をつよい風がふいていた
荒れた波の下にテトラポットが青くみえた
そのヒトは
透明なすがたをしていた
そのヒトは
みるひとだった
そのヒトは語ろうとしなかった
ただ
みてしまったんだ
と思った
空襲のことも
死者のことも
みてしまったんだと思った
せかいは垂直にたっています
せかいは垂直にたっています
昨日
雪は降らなかった
鵜の木という駅で降りて
蓮の花という店で鯨をみた
鯨は透明で
ところどころ銀色に光っていた
鯨は捉まえることはできないだろう
ましてひかりは
ひかりは壊れるので触ってはいけません
ひかりは壊れるので触ってはいけません
公園から
突堤と海と空をみていた
突堤の向こうに
海と空がひろがっていた
水平にひろがっていた
遠い光景だった
原初的な光景だった
わたしは理解した
純粋身体は垂直なのだ
わたしには
ドンブリほどの愛もない
だから純粋身体は垂直にたっている
灰色の空はひろがり
昨日は出かけなかった
プールもいかなかった
冷蔵庫の
誕生祝いのケーキを食べなかった
のか
どうなのか
午後に海辺をモコと散歩して
そのあとに散髪した
すこし風があった
この世界はあまり意味がないと言わなかった
ピンクの蕾をひらいて
その花は咲いた
花芯はきいろく
まわりに白い花弁をあつめていた
ピンク色の可愛い花がひらくのを
みていた
なまえは忘れた
なまえは忘れてしまった
忘れてしまったのに俤はのこっている
ピンク色の花が咲いていた