かつて
ひだまりに
コトバをならべた
無いコトバをならべた
無いコトバが死ぬのをみていた
背後からさらに無いコトバが死ぬのをみつめるものたちが
いた
熱風は
過ぎただろう
過ぎさっただろう
熱風こそ過ぎさるだろう
熱風のさきに白い道があった
白い道があった
かつて
ひだまりに
コトバをならべた
無いコトバをならべた
無いコトバが死ぬのをみていた
背後からさらに無いコトバが死ぬのをみつめるものたちが
いた
熱風は
過ぎただろう
過ぎさっただろう
熱風こそ過ぎさるだろう
熱風のさきに白い道があった
白い道があった
かつて
叫びがあり
叫びの日々には
太陽への干からびた祈りがあり
無い
コトバがうまれた
無いコトバは夏の日の遠い母語のひだまりだった
夏の朝に
エアコンのカタカタとなって
トトトトトと
とまった
階上から水の流れる音がゴオーとなった
あまいコトバを
まだ書きたかったのだろう
うすき口あつき口へ・・・・
とかいた
紙片をそのヒトは渡して
逝った
カタカタとなって
トトトトトと
とまり
水の流れる音がゴオーとなった
今朝の音信はそれだけです
今朝の音信はそれだけです
今夜は
すずをころがすよう
虫たちの鳴いて
秋の虫たちの声をきいて
います
今夜は
それだけです
虫たちの声をきいて
すずをころがすよう
すずをころがすよう
あのヒトの俤も消えてしまった
虫たちの声の
この世の果てまで響いていました
灰色の
瞳をしていました
わたしの
祖母は灰色の瞳でみていました
いつも窓辺に着物でたって
みていました
窓辺から
みていました
過ぎていくもの
消えていくものの
山百合の
花の
暗い林の中の
しろく咲いて揺れていました
しろく咲いて揺れていました
灰色の
瞳でみていました
沖縄で死んだ息子や
近所のヒトや
親類のヒトや
あじあのヒトたちや
てんのうへいかばんざい
てんのうへいかばんざい
そう叫んだことや
窓辺から
みていました
窓辺から
みていました
おびただしい死者たちをみていました
おびただしい死者たちが過ぎていくのをみていました
おびただしい死者たちが消えていくのをみていました
指導者にならなかった
指導者は
多くのヒトビトを先導するひと
指導者は
手を挙げて真ん中に立つひと
指導者は
大きなメッセージを大きな声で告げるひと
ヒトビトは指導者の声をきいた
ヒトビトは指導者の声をきいた
片隅で
ヒナタで
いまどうしてる
いまどうしてる
きみ つぶやく
いまどうしてる
いまどうしてる
わたし つぶやく
ない管をとおして
つぶやく
ない管が無数にある
ない管が無数にある
きみとわたし
きみとわたし
なにも共有していない
支配されている
隅々まで
支配されている
がんばったヒトも
がんばらなかったヒトも
支配されている
小鳥ほどの自由もない
文は
言い渡す
宣告する
文は強制する
キャーと叫んではいけない
ウォーと叫んではいけない
小鳥ほどの自由もない
消えていく
消えていくものの
そばで
きいていた
ざわめきの
なかからきこえてくるもの
ざわめきのなかに
あるもの
散乱するひかりのなかに
あるもの
今日
消えていくもの
今日 消えていくものたちの声をきいた
今日 消えていくものたちの声をきいた
ぼたるさんの
庭に芝桜が咲いていた
白い花がひとつ咲いていた
猫が
ひとり縁側にねむっていた
家の前には
川があり
川に沿って歩道があった
ぼたるさんのいない世界があった
奥さんが形見分けに
おちょこと徒歩新聞合本を渡してくれた