michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

胎児

 

原田淳子

 
 

 

イチョウの実
産毛のない肌

生まれたての生きものの匂いに似て
子どもの頃の親友だった犬を想い出す

こどもたちがクサイクサイと実を踏むので
さらに生きものの匂いが立ちこめる

時間軸を失ったわたしに
窓から生きものたちが
いまは秋だ、と告げる

骨を持たないまま流れていった
胎児が降り注ぐ

墓の山に埋めてあげる

牡牛座の胸に眠れ

二十年前に死んだ
犬の名まえを呼ぶ

きみも
わたしも
みな、胎児だった

 

 

 

あきれて物も言えない 17

 

ピコ・大東洋ミランドラ

 
 


作画 ピコ・大東洋ミランドラ画伯

 
 

Philip Glassの “Dead Things” というピアノ曲を聴いている。

 

もうすぐ朝になるのだろう。
Philip Glassの”Dead Things”というピアノ曲を聴いている。

なんども聴いている。

死んだ物たち、
という曲。

死んだ物たちを思うのは、生きているヒトだろう。
生きているヒトは死んだ物たちを思い、語りかけるだろう。

そこに”橋”がある。

昨日の昼には、
静岡市に開店したHiBARI BOOKS & COFFEEという新刊書店に行き、
おいしいコーヒーを飲んだ。

それからお店の奥で開催されている多々良栄里さんの写真展「文と詩」を見た。

多々良栄里さんの写真にはヒトがいた。
そこにはヒトがいた。

懐かしいヒトたちだった。
懐かしいヒトたちの前で言葉は慎まなければならない。
懐かしいヒトたちは、わたしたちの中にいるヒトたちだろう。
わたしたちの肉体の、血となり、肉となり骨となったヒトたちだろう。

多々良栄里さんの写真には懐かしいヒトたちがいた。
その懐かしいヒトたちはこちらを無言で見つめていた。

 

昨日の朝日新聞の朝刊一面に「処理水 海洋放出へ調整」と見出しがあった。 *
副題に「関係閣僚会議で月内にも決定」とあった。

福島第一原発で溶け落ちた核燃料を冷やした汚染水を多核種除去装置(ALPS)で処理した処理済み汚染水が福島第一原発の敷地内のタンクにすでに120万トン溜まっていて2022年には満杯になるのだという。
その汚染水をもう一度、多核種除去装置(ALPS)で処理し、トリチウム以外の放射性物質の濃度を法令の基準値以下まで下げ、トリチウムは海水で薄めて海洋に放出するのだという。

安倍総理の政策を継承すると宣言した菅新総理は政策をスピーディに決定するのだというが、
新総理の「福島第一原発 汚染水処理」政策のスピーディを世界は認めないだろう。

わたしたちは経済優先で進められた世界の近代化の行き止まりにきているいるように思える。

この秋にわたしは新幹線で福島を通り故郷に帰省してきた。
わたしたちの肉体の、血となり、肉となり、骨となったヒトたちや物たちが、叫び声をあげているのが聴こえる。
わたしたちの世界は人間だけのものではなく、たくさんの動物や植物、微生物の生きる世界なのだったはずだ。
たくさんの動物や植物、微生物や死んだ物たち死んだヒトたちでわたしたちの身体は日々に生成されているはずだ。

核廃棄物の問題もコロナの問題も温暖化の問題も、人間を原因とした問題なのだ。
経済優先でスピーディに決定される新政策は人間だけでなく世界の動物や植物、微生物にも影響を与えるだろう。
それらがやがて全て、われわれ自身の生存に帰結するのだろう。

“Dead Things”というピアノ曲を聴いている。
懐かしいヒトたちの声を、いま、もう一度、耳を澄まして聴く時間を持ちたい。

この世界にとって取り返しのつかない事がこの日本から起こりつつあるように思える。呆れてものも言えないが、言わないわけにはいかない。

 

* 2020年10月17日 朝日新聞 朝刊

 

作画解説 さとう三千魚

 

 

 

I was at a loss what to say.
何と言えばいいのか、私は途方に暮れた。 *

 

さとう三千魚

 
 

yesterday
returned in the evening

then I fell asleep
on the sofa

slept

in the middle of the night
the woman is back

I woke up
TV was on

it was “time theory public theory”

yhen again
I fell asleep

I wake up at midnight
I went into the bedroom with Moko and slept

so it was morning

the west mountains stand blue under the gray sky

I was at a loss what to say *

 
 

昨日は
夕方

帰った

帰って眠ってしまった
ソファーに

眠った

夜中に
女が帰って

目覚めた
TVがついてた

“時論公論”だった

それからまた
眠ってしまった

深夜に目覚めて
モコを抱いて寝室に入って眠った

それで朝になった

西の山は
灰色の空の下に青く佇っている

何と言えばいいのか、私は途方に暮れた *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

I do not despise him because he is poorly dressed.
彼の身なりが悪いからといって私は彼を軽蔑しない。 *

 

さとう三千魚

 
 

wake up

human

in the morning
wake up

humans take off their clothes

another
clothes

wear

face
wash

and
humans open the door

human
along the river

head to the estuary

in the river
the water is flowing

fish

waterfowl
swimming

aquatic plants
it is swaying

ears of silver grass shine in the morning sun

on the peninsula
the morning sun is rising

the sea shines
at the estuary

stray cats live

stray cats are in the morning sun

stray cat kids are playing
in the nearby grass lawn

parents are closing their eyes

they are looking
with their eyes closed

standing

I do not despise him because he is poorly dressed *

 
 

目覚めます

ヒトは

朝になると
目を覚まします

服を脱いで

別の
服を

着ます

顔を
洗います

そして
ヒトは

ドアを開け出ていきます

ヒトは
川沿いを

河口に向かいます

川には
水が流れていて

魚や

水鳥が
泳いでいます

水草が
ゆらゆらとゆれています

すすきの穂が朝日にひかります

半島に
朝日がのぼっています

海が光ります
河口に

ノラたちは住んでいます

ノラたち
朝日の中に

います

ノラの子供たちが遊んでいます
近くの草叢に

親たちが眼を瞑っています

眼を瞑って
見ています

佇んでいます

彼の身なりが悪いからといって私は彼を軽蔑しない *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

we live in a twilight world

 

工藤冬里

 
 

終わりは非常に近いので映画はそれを手繰り寄せようとしている
手繰り寄せようとしてネックになるのは人類愛でも家族愛でもなく
その場限りの
魚であった
ἀγαπᾷς με
are you loving me?
ἀγαπᾷς με
are you loving me?
φιλεῖς με
are you having affection for me?
いいんだよ別に
麻痺した湖水が言う
弾丸みたいだ
ルアーは飛んでいく
いりこ出汁のように
かなりの譲歩だけど
丸亀に出る亀はドルチェ&ガッバーナを付けている
真のサイケとは
親は何人いるんだってはなしだよね
今日は無理っぽいかもね
ブラジルすごいね
大大大失敗だ
気を付けないとね
手繰り寄せる網の手触り
着衣で飛び込む春の水の熱さ

 

 

 

#poetry #rock musician

また旅だより 26 番外編

 

尾仲浩二

 
 

あいかわらずどこへもいけない。
家で昔の日記を編集して本にしているので、そこから2004年の10月分を。

 

10月3日 雨
山の上ホテルに親族を集め結婚披露の食事会。そういえば森山さんの還暦祝いのパーティーを数年前のこの時期にここでやったのだ。

10月4日 雨
カラー暗室の途中で丹野さんより電話。カメラ付き携帯電話が欲しいとのことでヨドバシへ。僕と同機種を買ってもらい使い方の説明を三越デパート地下四階のファミリーレストラン「ランドマーク 」 で。迷路のような店内を抜け、隠し階段を降りると新宿のど真中に現れる別世界。

10月6日
こどじで森山さんと遭遇し、かえるで朝までカラオケ 。

10月8日 台風
朝までカラオケの所為か昨日より咽痛く、ついに発熱。台風のなか病院へ 。

10月10日 曇り
昨日の予定だった幼稚園の運動会の撮影が台風で今日に順延。まだ風邪具合はよくないので終わって早々に帰宅してすぐに蒲団へ。

10月13日 曇り
アサヒカメラの暗室紹介ページの取材で鳥原学さん来宅。これまで紹介されたのはどれも立派な暗室ばかりで、僕の極狭手作り暗室がどう紹介されるのか楽しみ。機材も自慢できるようなものはなにもないし、小道具も主婦のアイデア的なものばかり。あまりに狭くてカメラマンは撮影アングルに苦労していたようだ。

10月15日 晴れ
PGで吉永聡子展。風邪も治ったようなので調子を試しにゴールデン街。 もう大丈夫。

10月16日 曇り
昼からこどじを撮影。

10月17日 快晴
写真学校の撮影授業で早稲田から都電に乗り三ノ輪まで。鬼子母神の御会式には花園神社とは違う見せ物小屋が出ていた。庚申塚でファイト餃子。夕方に三ノ輪橋集合。荒木さんの生家跡を見てもんじゃ焼き。

10月21日 晴れ
デイズフォトギャラリーでモノクロプリントのワークショップ。新宿通りで広瀬くんと遭遇し、最近お気に入りの三越地下食堂でカツカレー。プレイスMでトリヤ展 。

10月22日 晴れ
ペンタックスのサービスセンターでMZ・Mを点検してもらう。このカメラは東京、上海、ラトビアとかなりの本数を撮っていても一度も故障していない。今度のスペインにも同行予定。ヨドバシでモノクロ印画紙80枚。

10月23日
モノクロ暗室。こどじ展示用。

10月25日 晴れ
三越地下食堂でラトビアの写真を担当の楠本さんに見せる。最近はここに人を連れて行くのが楽しみになっている。

10月27日
モノクロ暗室。橋本くん宅へ仔猫を譲り受けに。由布子さんがぐみと命名。母猫はロシアンブルーだけど、ぐみは黒いまだら模様。ちいさいけど元気はすこぶるいい。連れ帰ってすぐにきちんとトイレをしてくれたのでひと安心。

10月31日
図書館の帰りに猫ジャラシを買う。おとなしいと思っていたぐみは、とんでもないおてんばだった。噛むわ引っ掻くわ飛び回るわで、カーテンはボロボロ。 そして叱ってもケロッとしている。