michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

準備

 

道 ケージ

 

春、午前一時
ゴミ出しで
廊下に出ようとすると
電話をとった妻が
お母さん亡くなったって

そうか、と廊下に出る
途端
ものすごい号泣
息が詰まるほどだ
崩れ落ち
こんなに泣くのかよと思う自分

息苦しくて
起きる

夢だった
福岡の兄にライン
あゝそう
「こっちは大事ないたい
すっかり誰が誰ともわからなくなったが
口から食べられるごとなった
ケージは? とも言ったったい」

昨夏、危篤、救急車に同乗
覚悟した
春、驚くほどの回復
ゼリーを食べた!
夏、また会う直前
本当に亡くなってしまった

棺におさまる母
こんなんなっちゃって
父への母の言葉
嗚咽

まぁ号泣はしない
ホッペを触る
冷たい

  いまさら孝行息子でもあるまい。よせやい。泣いたらウソだ。涙はウソだ…
  いまにも、嗚咽が出そうになるのだ。
  私は実に閉口した。(太宰治「故郷」改)

嘘だ嘘だ
泣くのはよしにして
飲みに行く

ついでに吉野ヶ里
カメに入った大王は
丸まって笑みをもらす

刀剣は出ない
印章は出ない
ここに卑弥呼はいないよ
汗だくの元自衛官のガイドが笑う

蚊をつぶす

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その72

 

佐々木 眞

 
 

 

2024年8月

お父さん、台風の英語は?
タイフーンだよ。
お父さん、台風の英語は?
だから、タイフーンだよ。
お父さん、台風の英語は?
だからあ、タイフーンだよ。

お父さん、洗濯物かわいた?
かわいたよ。

お父さん、ボク田中みな実と暮らしていますお。
え、ほんと?石原さとみと暮らしているんじゃなかったの?
田中みな実です。
そうなんだあ。

お父さん、ボク、タナカミマミとおウエハラミツキが好きですお。
そうなんだ。

お母さん、田中みな実、お茶のんでになって。
コウさん、一緒にお茶飲みましょう。

お母さん、キモダメシてなに?
コウ君、小さい時にキモダメシしなかった?
分かりませんお。
真っ暗な小学校へ行かなかった?
行きましたお。
それがキモダメシよ。
キモダメシ、キモダメシ、キモダメシ。

お母さん、機会があったら、って、なに?
よい時が来たら、よ。

お勘定って、なに?
お金を払うことよ。

お母さん、Uターンって、なに?
Uターンすることよ。

お父さん、背中って、英語でどういうの?
バックだよ。
バック、バック。

 

2024年9月

待っとれよ、ってなに?
待っててね、のことよ。

タナカミナミ、アメリカで生まれたでしょう?
え、そうなの?
そうですお。

お父さん、「小児療育」の英語は?
さあねえ、チャイルド・ナーシングかな。

お父さん、神様の英語は?
ゴッドだよ。
ゴッド、ゴッド、ゴッド。

 

2024年10月

お母さん、迷惑ってなに?
こんなことしちゃ困ります、よ。

 

2024年11月

ぼくウエハラミツキとタナカミナミ好きですお。
お父さんはウエハラミツキとタナカミナミよりコウ君が好きですよ。

 

2024年12月

スピード違反て、なに?
40キロと決まっているところで、それ以上で走ることよ。

平成の後は令和だよね?
そうだね。

ナカムラさん、注意されたんですお。
アカムラさん、嫌いなの?
じゃあないですお。

えーとねえ、お母さん、ぼく授産所好きだったの。
授産所? そうなんだ。

お父さん、蓮佛さんのドラマ、全部録画してくださいね。
分かりましたあ。全部録画するよ!

 

 

 

通過する ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 011     sato さんへ

さとう三千魚

 
 

夜に
なった

静岡駅北口の
地下広場の

天窓の
夜の

藍色の
空の

すべてのひとが

目の前を
過ぎていった

ヤブタビラコの
花の

黄色の

揺れてた
風に

揺れていた

 
 

***memo.

2025年9月7日(日)、
静岡駅北口広場実施した、
“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第41回、第2期 11個めの即詩です。

タイトル ” 通過する ”
好きな花 ” ヤブタビラコ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

過去過去の幸福

 

工藤冬里

 
 

過去は存在していなかった
未来が過去を決めていくのだった
2012年のヒッグス粒子発見の未来の前、ファシズムの台頭する1930年代にエリオットは「荒地」でこう書いた
what might have been and what has been
point to one end, which is always present
詩は、いいところまでいっていたのだ
現在過去未来は同時に生起する泡として観察される
全てを知っているわけではないがそのステージに参入しているというのが実相だ
正確であろうとすればするほど狂うので観察者としては断念しなければならない
重力というより欠落
つまり貧乏を鍵とし餓死した大過去を黒穴として眺めるのだ

 

 

 

#poetry #rock musician