michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

ファンファーレ

 

長谷川哲士

 
 

ケムリ模様の雨模様
雨ばっか降りやがって
どんどん雨激しくなりやがって
哭く喚く天の声なのかよ
ひゃっひゃっひゃっ

ああキノウの蝶々だなこれ
地に目を遣る
激しい雨に打たれ打ちひしがれて
飛ぶ事諦めさせられ
死んで行った美しい揚羽蝶
その美し過ぎる屍はヌルリ輝く

まるで嬉々として残酷シャワーに晒され
爆音警報鳴り止まぬ中
びしゃびしゃ飛翔しようという
抵抗の姿を見る
それは神々しく狂おしくも無残解体へと変容し
黒いアスファルトに貼り付けられる結局

その燻んだ翅模様、死んだ一昆虫の微々たる光
ぺたりと存在しています、ばらばらばら
ひとごとでも無かろうに、ククク笑いが込み上げる

死への面影だけは身綺麗にしておきたいものだ

 

 

 

蝶のように

 

さとう三千魚

 
 

犬猫病院から帰った

郵便局で
手紙を出して

海によってきた

秋の空
みてた

帰りにカナダビール屋で
缶ビールを

買ってきた

詩をひとつ作り
カレーも作るはずだったが

飲んでしまった

夏が終わり
犬のモコ

すこし元気になってくれた

うれしい

ビール
美味しい

夏は終わったのかな

ことし
庭に

羽黒蜻蛉はこなかったな

いつも
梅雨の終わりから

夏に

番いで
蝶のように

浮かんでいた
浮かんでいたな

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

岐れ路

 

工藤冬里

 
 

明るすぎる
時は来なかった
一日の千年の
速い日暮れだった
半分しか息をしていなかったから
騒音が明るすぎたのだ
地下茎はいつのまにか途絶え
朱は山陵を染めなかった
透ける肉を翳して
G20に出席する政府の
岐れ路を見る
政府か政府ではないか、ではなく
その政府か別の政府か、なのだ
内向きの肩を開いて魚の背骨を矯正するつもりだろうか
腰のない湯呑を削り
嫋嫋と立たせ
傾けて雨水を流すなら
礫の多い虐めの記憶が
岐路としての器の冬なのだ
マスクをした国が孔に落ちる
息が出来ずに
盆地の集積としての球の一部分でしかないアースに
明るすぎない視線を引く
無理強いしないが
岐路が岐路として叫ぶ立体を聴かせる

 

 

 

#poetry #rock musician

足を上げていた

 

辻 和人

 
 

朝の
ミルクを飲み終えて
こかずとんが
仰向けの姿勢で
こちらに顔を向けながら
足を
上げていた
右足左足一緒に
いち、に、さん、し、
5秒数えるか数えられないか
湯気が立って消える
みたいに下した
こんなに高く上げたのは初めてだ
足は
ぴんとしていた
30度くらい?
マットの上でもぞもぞ
動かしてるのとは違う
足に力を込めていた
こちらを向いた顔は笑っていて
力を働かせたことを
知っていたよ
誇っていたよ
ミルクを
飲み終えた
朝の
湯気が立って消える

じゃあぼくもいっちょやってみるか
ごろっとこかずとんの横に寝っ転がる
いち、に、
足上げるのって結構きついもんだな
おや、湯気立ってる
横で寝てたこかずとん
いつのまにかこちらに顔を向けて
さん、し、
足を
上げていた
ぼくはただ足をいっちょ上げてるだけだけど
こかずとんには上げた先に待ってるものがある
足はぴんとしていて
笑ってた