広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
2023©Cloudberry corporation
Ⅰ
Rock ’n’ Roll With Me Last one, My bell…(オネガイ、モウイチド…)
わずかな写真しかない
ソレは、
僕の、恋人…
花、を…愛してしまったが最後、
で、アルヨウニ 君ノ夢ヲ見タ
瞳が零れ落ちそうだった、
首の周りに silk 巻いてた、
だから、口吻、出来なかった。
僕が今度、君ト、踊る時ハ
君に、精一杯、
謝りたい……「ゴメンね」
「駄目な、僕デシタネ …」
…………「もう、いいわよ」
Rock ’n’ Roll With Me Last one, My bell…(タノムカラ、モウ一度…)
一枚の写真しかない
ソレは、
僕の、恋人…死ぬ前に、モウ一度。
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
“悠”はるか、
という意味デスネ
girly girl was 36ages.
ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!
Ⅱ
ソレは、歌詞のようなものである。
だからといって
恥ずかしがることなく
「恋は、水色」。
…彼女…と…いまは、
うたいたい…
君は、病みあがり、の
僕の部屋に すわって
「学生さんの住む
部屋みたい」と笑った
For Everyone!!
ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!
Ⅲ
調布から八王子方面まで降りて、
深夜の……
イタリアンに行った1993年……
seafood pasta
分け合い、ながら……
将来のことについて、話し合う
こと、一つ、無くって、
二つ、歳上……
黙ってしまった
モノデシタネ……。
「此処の、pasta、不味いのよ」
それから、しばらく
君は……、
スポットの下
dance して、いたね…
花、を…愛してしまったが
最後……、
で、アルヨウニ 君ノ夢ヲ見タ
瞳が零れ落ちそうだった、
だから、口吻、出来なかった。
僕が今度、君ト、踊る時ハ
君に、精一杯、
謝りたい……「ゴメンね」
本当は、
僕の、恋人…では、なかった
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
死ぬ前に、モウ一度。
お逢い…、しましょう、ね!
girly girl 36 ages.
ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!
Ⅳ
ソウシテ……
君が、亡くなった……という
噂を聞いた。
ソンナ噂を、書いてはいけない。
だって……
ミンナが、
信じてしまうだろう?
僕は、取り消すよ、君とは
結婚してみたかった……
本当、だ。
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
girly girl 36 ages.
乳首が尖っているかどうかも、
知らないまま、
It was so fine……!
ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!
(2023/10/04 アパートにて)
ひとつひとつの言葉に関係性を探した
理解出来ない謎かけ 暗号の様な言葉の欠片
その断片は他を寄せ付けない独立独歩
僕は全てを同意した
理解出来るか出来ないかなんて
たいした問題じゃ無い
詰問される事も
事の迅速さを要求される事も無い
沈思黙考が少ない語彙の間に流れていた
巧妙な罠 言葉巧みに警戒心を取り除き洗脳して行く
僕はその世界の一部を除外しただけの事だ
一面の雲に隠されたままの太陽と
何かをあてもなく待っている僕が居た
君は時計を持たずに
君に適した時間の流れの中に存在し続けている
僕の意識の周辺にある壁の枠組を
まるで何も無かったかの様に君は入り込んで来る
壁の向こう側にある深淵 其処に君は居る
恐れる事は無い 光無き混沌と沈黙と静寂
其処に君は居る もうひとりの僕が居る
ぷるん
服を脱いだコミヤミヤだ
お風呂場の発砲スチロールの台の上で
ぷるんしている
軽く泣きそうになったのを宥めて
赤ちゃん用シャンプー頭に垂らし
髪の毛シャカシャカ
ちょっと不機嫌残る眉を宥めて
シャワーシャーシャー
お次は首から腕からお腹から足から
背中からお尻から
ぷるんぷるん
シャボン流れる
あんなに小さく生まれてきたのに
保育器の中でけぽっしてたのに
ぷるんぷるん、だ
お腹の皮押せば
ぷるん押し返される
ぶるんとお腹だ
おしっこしたばかりのお股に手を差し込んできれいきれいすると
肉厚の割れ目ぷるん揺れる
2000gで生まれてきたのに
今や5000g
1回50gのミルクがやっとだったのに
今や1回120g
洗い終わってゴム製お風呂に入れる
ざっぷん
ぷるん
いいなあ、赤ちゃんって
この質感だよ
栄養が詰まってる質感
ダイエットなんて知らない質感
それにひきかえ皮膚しわしわ
ぼくの体がいかに硬化してるかわかっちゃうね
質感にやられて
触って触って
もっと触りたい
抱っこして抱っこして
もっと抱っこしたい
目で見ただけじゃわからない
ぷるんぷるんの抵抗感
質感って奴には
力がある
何しろ抵抗してるんだからね
触れた指に対して
ぷるんぷるん
抵抗して逆らって
力がある
洗い場は好きじゃないけどお湯に浸かるのは大好きなコミヤミヤ
顰めてた眉ほどいて
手足とお腹をお湯の中に遊ばせてる
栄養詰まった二の腕が
お湯滴らせて
ぷるんぷるん
たまんない
やられちゃう
抵抗感だ
質感って奴
真夜中3時半に目覚めてしまった
二度寝できないたちなので
イ・ランのイムジン河を聴いた
イ・ランのイムジン河はいいよ
ソウルで踊ったばかりのせつ子のひとこと
雪の積もるイムジン河のほとりで
イ・ランが、かそけく美しい声と手話で歌ってる
静かな映像の凛たるイ・ラン
はじめてこの歌が好きになった
半世紀のむかし、フォークルが歌った頃から
この歌に感じていた靄々が消えて
イムジン河がイムジン河として流れていた
2017年4月連翹の花も盛りを過ぎたころ
38度線近く軍の砲撃演習が時折響く
ムンサンに独居していた弟サンヨンと
イムジン河に沿って車を走らせた
大きな川にしては、水は清く、滔々と流れ
その流れの遠くないところが北の大地
ほとりに降りてイムジン河の水を掬った
4月の水はさほど冷たくはなく、柔らかかった
川べりの料理屋で鯰の鍋料理を食べた
古びた韓屋風の店を選んで入った
日本で鯰料理は食べたことがない
言葉少なに流れるイムジン河で砂や泥をかぶり
風采の上がらない鯰氏をどう料理するのか
たっぷりの芹、青菜とにんにくの効いた汁で
鯰の靄々を覆い隠しているような鍋
鍋は大きく、「あら」というほど高価だったが
やたら骨が多く名物のわりにそっけない味だった
いつもはよく喋る弟がさっきから黙っている
イムジン河の北に思いを馳せているのか
なぜかと思ったら、鯰の小骨が
喉に刺さったという可笑しな始末で
よくやるようにご飯をぐっと飲み込んだら
そのうち小骨は取れたようだった
小骨はとれたが靄々はとれなかった
イムジン河がたどった悲運の物語はよく知られている
心に響くまっすぐな言葉、メロディも抒情はるか
万感こめて歌う歌手たちがいたが
僕が感じていた靄々、そういうことではなかった
僕にはさわれるようで、さわれない詩情
イ・ランは声と手話でさわっていた
イムジン河 水清く 滔々と流れていた
私が彼らを愛してると言いはじめた時から
人々はおかしなものを褒めはじめた
イ・ランの抑えながらストレート語る歌に虚を突かれた
「世界中の人々が私を憎みはじめた」
イ・ランの歌にはいつもチェリストの伴奏がつき
そのチェリストはソウルの友人の友だちであり
何曲か聴き、気がつくと外は明るくなっていた
いつもの朝の食事をしてせつ子がでかけたので
思い立ってu-nextで50年ぶりに
浦山桐郎の『キューポラのある街』を見た
60年代の北朝鮮帰還運動が伏線になって
映画のなかでチョーセン、チョーセンと連呼されるのが
次元を超えてなぜか新鮮だった
キューポラのある街が公開される数年前、小学1年生のころか
父親に連れられて埼玉の朝鮮部落に行ったことがあった
川口だったのだろうか、キムチの匂いと道沿いに積まれた塵芥
野放しの子豚が走り回り、土埃が舞い
座り込んで働くオモニ以外はあまり人影もなく
新宿落合の我が家もそこそこ貧しかったが
侘びしく立ち並ぶバラックは、時が停まった異界のようで
胸がしずかに動悸を打っていた
キューポラの煙突は残念ながら記憶にない
映画のモノクロ映像と少年たちの生態は
匂いがないせいかトリュフォーのように美しい
頑固な鋳物職人東野英治郎はチョーセンを嫌い
娘のジュンはチョーセンの娘ヨシエの友である
ジュンを演じた15歳の吉永小百合には魂を抜かれた
不良たちに犯されそうになったジュンが
公園の蛇口に唇つけて思い切り洗う場面
小百合15歳にして畢生の演技
ジュンの弟の市川好郎はこれも天才子役
ヨシエの弟で天才の子分サンキチが
北に帰還するくだりには泣けた
さてこんな日だから気を取り直して
またイ・ランのイムジン河を聴いて
本棚からイ・ランの小説『アヒル命名会議』をだした
訳者の斎藤真理子さんから送られて
まだ読んでなかったのだ
とても良き日になりそうだ