芝生の
さきに突堤があり
その向こうに
灰色の空と海がひろがっていた
灰色の
胸のなかに
マリア・コゾルポヴァの
ヴァイオリンソナタ第3番が聴こえた
悲しみ
だった
普遍的な悲しみだった
ウォーと叫んでいた
ウォーと叫んでいた
芝生の
さきに突堤があり
その向こうに
灰色の空と海がひろがっていた
灰色の
胸のなかに
マリア・コゾルポヴァの
ヴァイオリンソナタ第3番が聴こえた
悲しみ
だった
普遍的な悲しみだった
ウォーと叫んでいた
ウォーと叫んでいた
まだ
わからないな
死んだことが
ないのでわからないな
いがいとあっけないんだ
と
きいたことがあった
それをいったのはまわりにいたヒトたちだった
そのいがいと
あっけなないんだの背後に
そのヒトたちをみているきみがいたのか
もう
7時になってしまった
仕事にでかけなきゃいけない
シャワーをあびて
下着をかえて
しろいワイシャツをきて
黒いソックスをはいて
灰色のスーツをきて
電車にのって
電車から多摩川をみて
そして空をみて
そしてわたしは生きていつか死ぬだろう
花が
ゆれていた
しろい
ノコギリ草の花だった
イチジクのみどりの葉も揺れていた
雨のあとに
風がわたっていった
なつかしい匂いがしていた
なつかしい匂いがしていた
母が床のなかで微笑んでいた
母は床のなかで微笑んでいた
そう思えた
雨があがって
ノコギリ草の白い花がゆれていた
雨の庭をみつめて
そのヒトは
切れない持続が空っぽになるといった
空っぽの
皿をさしだして受ける
空っぽの皿をさしだして受ける
ノコギリ草の白い花がゆれていた
ノコギリ草の白い花がゆれていた
雨がやまない
左足の親指にLEDランプが赤く
脈拍と血中酸素濃度を計測している
アラーム音は母
アラーム音は母
部屋を満たしている鼓動が途切れると死が
あらわれる
ベットの傍の布団の中に
姉は眠る
深夜
姉の寝息がきこえる
深夜
人口呼吸器のパイプがやぶれ
リーク警告音が鳴り響いた
警告音のさきに母の死が
あった
肺に酸素が送られない事態に
生と死をじっとみていた
母の人差し指がかすかに
左右にゆれていた
そのとき
母の匂いがした
母の匂いがした
雨がふっている
深夜
地上に
雨がふっている
人工呼吸器が
胸を膨らませている
心拍数を計るアラームがなっている
母は
話すことができない
食べることができない
歩くことができない
母を
どの地点からみれば喜劇とよべるだろうか
さむい
わたしは
売りに
いく
さむい夏を売りにいく
田園から
さむい夏を売りにいく
わたしはさむい夏をを売りにいく
さむい
さむい
さむい
さむい
ひとりの夏を売りにいく
さむい
さむいです
クーラーを
つけたまま眠ってしまった
裸で
わたし
売れますか
わたし売れますか
わたし売れますか
わたし売れますか
わたし売れますか
わたし売れますか
わたしの
さむい
さむいです
さむい
さむいです