dear 親愛なる

 

昨日
荒井くんと飲んだ

浅草橋の
西口やきとんで

飲んだ
隣りの席に

アメリカからの
若い旅行者のカップルがいて

ふたりとも
可愛かったな

ゆったりと
わらっていた

うぶげが
金色だった

国家はいらないね

日本人も
アメリカ人も

中国人も

 

 

 

人指

 

爽生ハム

 

 

献身的に皮膚がただれた私は
かさつく皮膚を指す

爪が結晶をかすめ
爪の隙間が満たされてゆく
爪は枝に留まる際
役立つだろう

それは
希望を持って自噴した砂に
似ていた

砂に埋もれないように
留まった枝の上
皮脂塗れのひどいかたまり

もはや餌である
餌を食べに
あなたに似た蜂が襖に針を刺す

それは
急に横切り
餌に眼を与えた
時間を見せつけられ恐怖に怯えた

あなたに似た蜂が横切ったからだ

餌を狙うあなたに似た蜂は
火宅にくすぐられ
ひどくかたまり
抜けなくなっていた

羽根がカサカサと音を立てている
その音に希望の衰えを感じ
餌にもなれないことを悔んだ

襖はやがて変色し
私を閉じ込めた

 

 

 

@150109 音の羽

 

萩原健次郎

 

 

6.22

 

眼の躓き。

剥がれた膜を
電気で焼きながら、元の球になおしていく。

数日前に、浴した夕照の、急速に上昇してい
く鳥影は、なにかを報せていた。

どんな音楽も
かすかな音もそこで、鳴っていたかどうかは
思い出せないが、
脳にからまっている細い糸には、切れていく
弦楽が、破線状に詰まっていた。

此方の岸の欠片も
彼方の岸の欠片も、
透明の責を
双岸から擦り合わせて
もう、勝ち負けのつかないことになっていた
からただ、茫然と、
夕暮れのせいにして帰ってきた。

たしかに、その時刻、その気象の下にいまし
た。

因という因を、川に捨てて坂を、足早に降り
てきて
空は、轟々と間に挟まっている音楽を暴き出
そうとしている。

眼を損傷しただけのことだ。電気の熱波で、
つるつるに焼き切ればいい。

交換しないことを条件に
引き分けに、もちこもうと
その時の夕暮れは、考えたのだろう。

虚の壷にわたしの回路は、入っている。
引き分けでいい。

ここで説いている喩えに水流の音が聴こえな
い。

やはり、
もう交換してしまったのかもしれない。

夜、布団に入って寝てしまい
別の、破線の糸がつながる。

欠片だけが散乱する
絵図の
絵図の
絵図の、

音。

ぺきんぺきんと、
折れていく。