光の疵 「青い矢」(十九歳)

 

芦田みゆき

 

 

部屋の窓をすべて鎖で縛った
無数の青い矢があたしに向かって
その一瞬確かに見た三次元の肉体が
黒いラシャ紙に焼きついて丸まった

マッチ売りの少女が戸を叩く

外は何世紀昔だろう

あたしは
探されていることを意識しながら
息を潜めたが
青い矢に成り変わったあたしは
向かう的をやはり探さなくてはいけない

マッチ売りの少女が獣に跨って
戸を突き破ってきた

不規則に燃え上がるマッチの火は
唯の炎に過ぎず
黒いラシャ紙が少女の体を裂いた

 

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―『記憶の夏』昭森社―

 

 

 

家族の肖像~「親子の対話」その4

 

佐々木 眞

 
 

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「お母さん、輸血ってなに?」
「怪我をしたときに他の人の血を入れることよ」
「宇宙戦艦ヤマトの島大介さん、輸血したお」
「そうなの?」

「マコトさんとファミリーナの田中さん、好きだお」
「マコトさんって、お父さんのこと?」
「そうですよ」
「ありがとう」

「お母さん、向こう岸てなに?」
「川の向こう側のことよ」

「キョウコさんが、気をつけてお茶飲むのよと言ったお」
「誰が?」
「キョウコさんが」
「ああ、亡くなったおばあちゃんがそういったのか」

「お父さん、トシヒコちゃん結婚したの?」
「結婚したよ」
「お父さん、トシヒコちゃん、子供できたの?」
「できたそうだよ」

「鎌倉郵便局は本局だお。しばらくお待ちください。ただいま修理をしております。
ぼく、鎌倉郵便局の真似をしたお」

「お父さん、こちらこその英語は?」
「ミー、トゥかな?」
「こちらこそ、こちらこそ、こちらこそ」

「さて耕君、今日の晩御飯はなんでしょう?」
「分かりませんよ。なにがつくもの?」
「ヒがつくものよ」
「ヒ、ヒ、ヒレカツ!」
「あたりー!」

「ぼくハッピーバースデイ歌いますお」
「今日は耕君のお誕生日だからね。お父さん、お母さんと一緒に歌いましょう。耕君は何歳になりましたか?」
「41歳だお」