赤と緑

 

工藤冬里

 
 

恐ろしいフラッシュ・バックでオノマトペで言うと ギン という感じである
月が無くなるまで続く力について話していたが

おいちゃんが呼んどるけんまた後で電話するわ

ギン

血の汗
水槽の藻
冒涜者として死ぬことの奥には余人の窺い知れぬ言語的な実体が横たわっていた

希望の原理を拾い集めていたシティー・ポップスの時代は終わった

希望はない

ギン

 

 

 

#poetry #rock musician

アンディーの気苦労2

 

工藤冬里

 
 

パンデミックはハシビロコウにもハクビシンにも及んだ
しかしながら妻の猫は一匹も死ななかった
アンディは雑草の花の拡大写真を撮った

そして窯は製品を生み出さず代わりにTVが焼かれ大物司会者達が失脚させられた
痒みのためにユーチューバーも動けなくなった
画面から消し去ることも出来たがアンディーは頼まれた茶碗を作らなければならないので存在させられていた

しかし動物だけでなく植物も言葉によって殺られる時が来た
避難命令に従わなかった木は場外ホームランに頭を割られて死んだ
地球が誰のものか知らないまま薙ぎ倒されるのは草だった
アンディは予報を真剣に受け止める質だったので屋根を貫通するJ popを避けることができた

 
小麦粉は無くてもまだ米粉はあったので経済は動いていたがGoToも終わる時が来た
ネットはバグに食いつくされ遂に内調さえ国が壊滅したことを認めぬ官邸に食い付くようになった
アンディーはもはや食物を摂取した記憶に頼る他に空腹に耐える術がなくなった

続く

 

 

 

#poetry #rock musician

アンディーの気苦労1

 

工藤冬里

 
 

アンディーの人生は災い続きだった

最初はすべてのパブリッシングの行間や盤の溝の隙間が様式美として血に浸された
生者が死者に変わったことをメディアも故意に暴露してみせた
アンディーもゾンビに馴れた

次に死ねない死者が死んだ死者を主体の無いシュタイナーの薄笑いで薄めた
価値を減ずる地域通貨が畑の宝をデポジットとして要求した
アンディーも理科室でカエルの腿肉を焼いて食べてみせたことがあるが級友の叫びが授業料だった

それから土が棘となりパンデミックとなった
黒死病ルネサンスの鳥のマスクもアマビエもマニエリスムの病棟に埋もれた
アンディーも加計学園で生物兵器を作った

その後第二波が来てすべての芸能は潰れた
今度は製薬会社も操作できなかった
アンディーはバリアム中毒だったが妻は違った

続く

 

 

 

#poetry #rock musician

また旅だより 23

 

尾仲浩二

 
 

そっと東京を抜け出して北の国へ行った。
テレビでは日本中が大雨で大変なことになって
東京での今日の感染者は二百人を超えたと言っている。
仕事だからしかたないと自分に言い聞かせても
ちいさな町でよそ者がカメラをさげてうろうろするのは気がひける。
駅前の温泉宿の窓を開け、時々走る列車の音を楽しみながら
ホタテクリームコロッケ、オーシャンサラダ、軟骨つくね、ひじき
それに赤ワインとスーパーの惣菜で早々と晩酌をはじめた。

2020年7月8日 北海道江部乙にて

 

 

 

 

Get up, let’s go

 

工藤冬里

 
 

即興は自由だが一人でやる即興は存在しない、と言える
なぜなら第一に待ち受けている愚弄と拷問が耐えられる程度を超えているからである
これは体の弱さに起因する
第二に貫徹しようとすると即興の評判が落ちるからである
でき得るならば即興せずに通り抜けることはできないかという訴えがなされ
他者からの励ましが与えられるのもこの段階である
第三に完全に一人で負う岩がその全容を表すからである
私とはその段階に於いては一人になり切ることの不可能性と一人でしか負うことのできないミッションが合体した張り裂けるプシケーとなる
引き続き他者は存在するがそれに向けられる言葉は get up, let’s go という独語となる

 

 

 

#poetry #rock musician