駿河昌樹
空白空白あゝ おまえはなにをして来たのだと…
空白空白吹き来る風が私に云う
空白空白空白空白空白空白空白空白中原中也「帰郷」
国というものへの落胆や
さらには
絶望も
今年のお盆に
魂迎えの灯をいくつか添えるだろうか
なんといったかな、
あの小さな古いお寺は
木の乾き切った
あの祠にも
顔のすっかり崩れた
古いお地蔵様の
並びにも
まだ
だれか
花を添えているだろうか
蚊取線香を焚いて
大きな団扇を動かしているだけで
あやまちなく
人生の大道にある気がする
あの縁側に
こころだけは
いまも戻る
だれもいなくても
みんながいるような
夏のひろい庭に向かった
あの縁側に
すわり続けている