尾仲浩二
息を切らしながら考えていた。どうして山に登っているのだろうと。
頂上までたったの45分と言われ、軽い気持ちで歩きはじめすぐに後悔した。
なんとか引き返す言い訳を考えていたが、だんだん頭が回らなくなって、景色を眺める余裕もなくなった。
石でガラガラの足下ばかりを見ながら、なぜ山に登っているのか、いまさら考えても仕方のないことをぐるぐる考えているだけだった。
モンテローザの雪を眺めながらのビールの味は忘れない。
そうして、どうして山を下るのかは考えるまでもなかった。
2018年9月7日 Italy Gressoney にて