michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

その天辺で男が歌っている *

 

墓参してきた

けさ

義母の
墓に

線香をあげた
手をあわせた

きょう
きみのお誕生日だね

きみの幸を

祈った

詩を書くために
君たちから

離れた
かもしれない

いま海を見てきた

海は

空を映して
青く

平らだった

ヒトは何万年もまえから
海をみてたろう

このまえ駿河さんの詩を読んだ

宇宙はまったく待ってなどいない **
という詩だった

そう
宇宙はまったく待ってなどいない **

だけど

海をみてると

この海も
この男も

宇宙だと思う

宇宙は待ってなどいないよ
だけどこの胸の中にあるよ

その天辺で男が歌っている *
その天辺で男が歌っている *

その歌をきみに伝えたい

ここがほんとうのはきだめなら *
ここがほんとうのはきだめなら *

その歌を

きみに伝えたい

 
 

* 工藤冬里の詩「三つ巴」からの引用
** 駿河昌樹の詩「宇宙はまったく待ってなどいない」からの引用

 

 

 

三つ巴

 

工藤冬里

 
 

歳を取るほど忙しくなるのは
時間が減って休息を許す余裕も減るから
狂わないで
一文字違うだけだ
ここがほんとうのはきだめなら
却って背筋を伸ばせ
水道管は殺された
涙の蛇口とか
農業は一月早まった
キウイとか
実話現代
ボルヘスの国から来た人が
共有相手が見つかりませんと言って
ドロップを呉れたが
人殺しの味もしたし
温泉で野菜売るか
と突っ込み革命
確かにナスの焼いたのしか
作らなかった母は
身罷りし父を悔やみ
カードが出てこない
よし寝よう
時間つぶそう
空耳ドンドン

映像が積み重なって
その天辺で男が歌っている
映像の天辺をどれにするか

話し方じたいは救いになれない
まやくのぼくめつはできない
あんさつされるのでコントロールできない
サタンと私達の不完全さの三つ巴
顔の上に線などない
恭しくあるべき
男が出来たのかと思われてはいけない
症例エ×ラルド
細線端
行って淫行の妻を娶れ
労働と安息の対立ではない
大抵のことは三つ巴なのだ
企業と労組の対立ではないのだ
爽××××
話し方は描線に似ている
いつからそんな書き方になった
家畜も仕事をしてはいけなかった
石組みの会堂
帆布
古城の窓が緑
亀裂
波が洗う岩礁
楽にして食べて飲んで楽しめ
過酷な奴隷状態
ねる機械
שבת sabbath
テレビのパロディー
やぎの角のドアノブ
宿舎から違う

 

 

 

自由

 

松田朋春

 
 

猫は日向で眠っている
夜更けには出かけて
首輪をなくして帰ってくる
生まれてすぐ
避妊手術をして
恋からも未来からも
自由になった
毛皮で傷がわからないから
自由に生まれてきただけにみえる

そうしよう
男も女も
生まれたらすぐ
100年もすれば
おろかで卑怯な国が
すっかり片付くのだ

 

 

 

温かい孤独

 

小関千恵

 
 

孤独の喜びは膨よかだ

寂しさは、懐かしく
悲しみは、柔らかい

いのちを品定めなどされないで
こころを妨げられないで

わたしだけが、わたしにしか分からないわたしを感じること

わたしだけが、わたしのこころを
大切にできること

ほんとうの孤独

これから
どんな命に触れるのか、
どんなこころに出逢うのか、

これからの、お楽しみの為の
わたしの
大切な孤独

温かい孤独

 

 

 

 

キリリ

 

駿河昌樹

 
 

わたしは抽象的なものが好きである
つかみようもないものをつかみようもなく思うのが好きである
はっきりしないものをすこぶるぼんやり語るのが大好きである

しかしながら
ことばはものに寄り添わせて並べるとキリリとする
ひとがことばならではのことばに触れた気がするのは
このキリリが随所随所に現われているような場合である

そこでいつも思いなやむのだが
抽象的なものをキリリと表わせたらいちばんだろうと憧れる
つかみようもないものをつかみようもなくキリリとやれたらと悶える
はっきりしないものをすこぶるぼんやりキリリできたらと恋い焦がれる

 

 

 

宇宙はまったく待ってなどいない

 

駿河昌樹

 
 

時間を無駄にしているのは
じんるいの
ぜんいん

わずかの木の実や草を食べるほかは
黙って
空や
海や
川や
森林のみどり
花々のとりどりの色
かたち
雪の白さ
はかなさ
雨のふしぎなやわらかさを
見ていればいいのに
風に吹かれてもいれば
いいのに

それ以外は
たゞの時間の無駄
ちからの無駄

宇宙はまったく
待ってなどいない
望んでなどいない
じんるいが
なにかをこしらえたりするのなど
ことばの連結を
理解ということだと思い間違えたりすることなど
数千年すればなにひとつ残らないのに
まるで
なにごとか成し遂げたかのように
思いあがることなど

 

 

 

凍蝶に 春の陽ヒラリ 舞い射して

 

一条美由紀

 
 


いい子を装う笑みはデフォルト設定
無防備に見せることが可愛がられるコツ
目的の本当の意味はわからない

仮面を何枚も付けた他人と手を繋いで
同じ列車に乗りたいな
そうしたら傷つかない
そうしたら明日は見なくていい

霞のかかった土地に到着し
美味しい何かを食べたいの
誰かがおかしなことを言ったら
みんなで笑うの 
楽しいだけの毎日、そんな幸せが欲しいの

 


最近、余計なものが付いている
他人に1個あげたら、2個になって帰ってきた
今は、こいつらが私を余計だと言ってくる

 


遥か遠くに生まれ この地を愛した
誰かを愛し 誰かを傷つけ そしてすべて許された
漂い 一つになり あなたを待ってる

 

 

 

馬の首を折る *

 

姉と

甥夫婦が
週末に遊びにきていた

甥夫婦は

さわやかと
動物園と
駿府城と
海に
行きたいといった

それで車でさわやかに寄り海を見に行った

姉は
味噌と荏胡麻とふくだちを

送ってくれていた

納豆汁を
作ってくれた

ふくだちは湯掻いて食べてといった

秋田では
まったく雪が無いといった

めまいがして
このまえ仕事を休んでいたのだと姉はいった

日本平動物園では
チンパンジーと

ハイエナ

キリン
白クマ
ゴマフアザラシ
ジャガー
ライオンを見た

ペンギンも見た

どの動物も寒そうに丸まっていたが
ペンギンとゴマフアザラシは元気に泳いでいた

キリンは冬の空の下で長い首を捻り高い木の葉を食べていた

キリンは

どうしてそんな首が伸びたか
わからない

 

* 工藤冬里の詩「二月」からの引用