michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

小さな喜び ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 25     yukiko 様へ

さとう三千魚

 
 

朝に

目覚めて
明るい

庭を見ている
生垣に

野ばら
咲いている

うすい
黄色の

野ばら
咲いている

それでいい
それだけで

 

 

memo.

2022年11月26日(土)、しずおか一箱古本市での水曜文庫で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第七回で作った25個めの詩です。

お客さまにお名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”小さな喜び”
花の名前 ”バラ(うすい黄色)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

燈明

 

たいい りょう

 
 

生者が 死者へと
変貌し
彼岸へと赴くとき
残されし者は
死者の足下に
燈明を手向ける

盲目の死者たちは
微かな光を頼りに
無限の世界へと
渡ってゆく

瞼を焦がす
ような
彼岸の灯りは
未だ死者のもとには
届いていない

長い長い 道程を
経て
死者は 大いなる光を
身に纏う

その時 生者は 死者との
再会を果たす

 

 

 

ねこ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 24     kaho 様へ

さとう三千魚

 
 

どこに

いるの
どこに

いったの
きみの

きいろい
ガーベラ

まっすぐ
首を伸ばして

いたね

咲いて
いたね

 

 

memo.

2022年11月26日(土)、しずおか一箱古本市での水曜文庫で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第七回で作った詩です。

お客さまにお名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”ねこ”
花の名前 ”ガーベラ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

白昼夢 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 23     minami 様へ

さとう三千魚

 
 

夏の
終わりに

たくさん
実をつけてた

まるく
膨らんでた

夏の
午後

夢をみた

わたしの
ひまわり

膨らんでた
実っていた

 

 

memo.

2022年11月26日(土)、しずおか一箱古本市での水曜文庫で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第七回で作った詩です。

お客さまにお名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”白昼夢”
花の名前 ”ひまわり”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

敵の前でフルコース

 

工藤冬里

 
 

脳を食べる。それで?それで?二世の悲しい鋭角の字体で 仰ぐ絶望
(瞼に気を取られている) よくない よくない

消し去るのではなく塗り潰す
迫るのではなく輪郭の外から浮き上がらせる
シニフィアンにニュー息吹
今まではそこには良いことをする人も悪いことをする人も居ると考えられていた
良いことや悪いことは過去形でしかない
悪人が存在しえない地もあるのだ

復興大臣秋葉けんや君に立憲源馬謙太郎君が詰め寄っている

悪人は塗り潰されるのではない
悪人の輪郭が浮き上がることで保護観察処分となるのだ
(そのためには)
愛されていないという偽り全てを退ける必要がある

人(ルーアハ・イーシュ)は病苦に耐えることができる
私の敵の前で、あなたは食卓を整えてくれる

 

 

 

#poetry #rock musician

冬の中の流れることばをとめて

 

ヒヨコブタ

 
 

好きな歌手の歌詞ばかりを集めた詩集のようなものを数冊パラパラとめくっては
この数十年を思っている

この歌が大好きだった頃は、と
あまりに輝かしいこととは無縁だと思っていた
その頃のじぶんの若さ
このまま這い上がれずに沈んだままなのかと怯えたいくつもの夜

通い慣れたカウンセラーは
昔精神科というものがコンビニのように立ち寄りやすく、奇異なばしょではなくなることを願っていたという

その数十年、這いつくばって生きてきたわたしは
あの頃のようには絶望もしない

世界では理不尽がまかりとおるのにも
憤慨することは変わらないのに
わたしじしんというのは
変わっていくものだとそれじたいは受け入れることができるような齢にはなったのかもしれなくて
それがあまりに残酷な裏表を持っていることもわかるから
時々は思いきり涙を流す
誰のための涙なのか
わたしじしんがまだ理不尽をゆるせず
人ではなく、人の中にたしかに感じる理不尽と戦っては涙する

年老いた人達と数少ない兄弟に
送った手紙は沈黙の返事しかない
もう大丈夫だよといっても意味がないことも
少しは、のみこまなければならないのだろう
のみこみ、咀嚼して強くなりたい

ああ寒い冬が
わたしのこころには優しい
寒い冬や雪はいつも味方だと思う
そこになんの汚れもなく、しんと冷え切って
わたしには静けさが残るから

ぱたりと倒れながら、涙しながら
今日も冷えた空気を受けて、少し歩く