michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

また旅だより 55

 

尾仲浩二

 
 

北との国境に近い町を歩いてきた。
道路を挟んで立ち並ぶ可愛いロボットは、有事の際に爆破して道路を塞ぐため。
街を流れる川の上流には大きなダムがあって、北が一気に放流すると街は水没するそうだ。
線路も道路も繋がってはいるけれど先へはいけない。
自動小銃を肩にした若い兵士に通行証を見せゲートを開けてもらう。
車で案内してくれた韓国の友人が彼らにスニッカーズを手渡すと嬉しそうに笑った。

2023年3月3日 韓国、江原道にて

 

 

 

 

川と駐車場

 

道 ケージ

 
 

登戸から
多摩川を左に見ながら
土手を下る
自転車の
いつもの帰り道

東名下を抜けると
それはある
ずらりと並ぶ車

川は小さく左に蛇行する
対岸の駒大グラウンドのサーチライトが
川面にまぶしい

「金の家」
ふざけた名前のマンションの駐車場である

見下ろすせいだろうか
すべて後ろ向きのせい
うすきみわるい
ずらりと並ぶ蓋は
虐殺のあとのよう

白い車
灰色、黒
白いのが多い

トランクには
骨壺が一つずつ
収まっている

駐車場って変だよね
学生に言ってみる
キョトンとしている

駐車場は本当はお墓なんだよ
いないのにある
そこにはいないものがある
いることを示すいないもの

白いエレベーター塔は
大きすぎるスツーパのよう

多摩川に
Nのように入るなら
ここと決めた蛇行地点ではある
冷たいのは嫌だから夏がよい

お墓に行く
こちらは緑ヶ丘霊園
多摩丘陵の端
桜並木が悲しい
そこにはいないものがある
咲いていないからというわけではない

そこから
多摩川を見る
あまり光っていない

Nは繋ぎとめて
自らを
流れないようにした

 

註 Nとは西部邁氏のこと。Wikipediaにその自裁の詳細がある。

 

 

 

たねとつき ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 35     aya 様へ

さとう三千魚

 
 

夕方の
西の山の

空に

木星と
金星は

いた

その下に
月もいた

月は静かだ
種は

夢の中に
ねむった

矢車草の
紫の花の

咲いていた

静かだ
静かだ

 

 

***memo.

2023年3月5日(日)、焼津 案山棒で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十回で作った35個めの詩です。

背後で、パパ U-Geeさんたちの歌が聴こえていました。

タイトル ”たねとつき”
好きな花 ”矢車草”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

改装工事

 

工藤冬里

 
 

あゝ居ちゃあいけないんだ
トイレのない新居で
折り畳みベッドを抽き出し
初心者も熟練者も同じ籤を引いて
透明な瓦もあるのだと
南しかない南を向く
無秩序の反対は秩序ではないから
折角の花がと言い捨てて
外壁はもういいから
加工魚の夫を従え
うたう
籤を使ってうたえ
トイレのない家で

スケルトンの魚が上ってきて
舌足らずの大陸の食材となる
贖罪とは無人店舗の加工品を避けること
ドブ浚いの大陸を南へ南へ
その泳ぎに要点なんてあったのか
災厄の家を組織する五分搗きの米が腹の砂丘の半分に減り
顔の見えない救援を発酵させる
春よ春よ春の夜よ
起きてからでは間に合わなかったそれらしいAIアンビエントの安否
赤い水を衣類が吸う
祈りのない法蓮草と牛蒡から離れて
ハツの焼け具合をつっ突く
分画のインド人は多い筈だ
藍隈の選択肢は書面にする

 

 

 

#poetry #rock musician

心の壁、裸の刻 (青姦スポット、ふたご座流星群の唄。)*

 

今井義行

 
 

Every …body……、
野生の、creature!!
自分で自分の肛門に、指先を挿入すれば
ウンチ、がまとわりつくのは、
自然なことさ……、

糸を引くくらいが
良い デスネ……、

人工衛星、ジャナクテ腎臓肛門、
オシッコ、モ!出チャウ!!

それを口に運び、
目を瞑り、味わう、なんて
幸福行為以外の
何物でもないと、
……………………………
Guys and Dolls、高笑い。

そんな僕らは、青姦スポットへ
行くと、良いぜ😂
【本質】だけで、生きられる。
When Men were Men, and Girls were Girls
……………………………
Un homme et une femme「男と女」と記せば
チョット、違うねと成り、

ヤリチンヤリマンと言い換えれば素敵
ヤリチンヤリマン無敵、
そんな連中…溢れる、
日本、東京都、
黄金公園のさなかで、
男「性」は、男根、
女「性」は、女陰、
懐かしさも
匂い立つような……感覚の中踏み込む。

Someone just commented that Yoko Ono should have given these girls vocal lessons. Say What? Yoko was a feral screecher whose “songs” were an everlasting embarrassment to her, and were produced only because she was John Lennon’s wife.

イマサラ、
小野洋子の騙る自由に、、腐ったgrapefruit
白石かずこ聖なる淫者ぶち込み
Wandering for the sun…………、
混ぜっカエシ、
この刻(トキ)、
ヒト泡、吹かせてやる。
2023,
何か新しいもの創るからJoinusじょいなす……!!

僕が嘗て「自由主義的で、良いなあ」って、
想っていたのは……
1990年代の渋谷……
一人で、彷徨い、マクッテたら、
強いguitarのカッティングに
【野宮真貴】さんというポップアイコン。
(1960年3月12日 ー)
Maki Nomiya……!!
popiconは、僕の目の前で……燦めいてた、

貝殻のeye shadow、lips,
変容自在な鬘(カツラ)、
徹底して造り込まれた明暗……

LondonーParisーLondonーParisー
LondonーParisー、🇬🇧 🇫🇷
yeah、yeah、yeah……🎶
何だったの? あの唄……は?!

渋谷でLondonーParisかい😂【ぶっ飛びー】ダッタネ😂
あの、スキャット……!!
LondonーParisーLondonーParisー
LondonーParisー、
yeah、yeah、yeah……

textile!
textile design日本に居ながら「馬鹿言ってんじゃないよ」って翻案した……!!

その、【野宮真貴】さん、
現在(2023年)も、燦めいてらっしゃる
と、伝え聴いたから、
僕は、黄金公園(?!😳)のライヴ……、
黄金現場へと 😂、行って、みたのさ。

その、夜は、ね……
ふたご座流星群、が見られる、
という奇跡の日、だった………。

黄金公園の【自由主義的広場】では、
自由主義的学問を修了してきた者達
を除いた、単なる青姦愛好家=【ヤリチンヤリマン】が、まだ青空の残る
夕刻から…スーッポン…スーッポン、
自由主義的性愛=【オフパコ】*に…
耽る光景が、
展開されていたという訳、だった…。

──自由、って、いやらしい、わ😉

中央に、特設ステージが在り、
Introductionの後……、
バトントワラーをしながらウサギスタイルの真貴さんが、
ムニュウ………って、
迫り上がってきたんだ!!
ウサギスタイルの真貴さん……、
股の切れ目から陰毛バサバサ…、
「さあ、かかっておいで」
と、うらごえで煽る、煽る……。

a,udienceの…群がる希望!
押し退けて………… 、😆😆

「はいっ!!」って、
一番最初に、手を挙げた
のは、僕だった、さ。
僕は、黄金公園の木陰から、
中央特設ステージへ
なだれ込み……、
「真貴ぃ、真貴ぃ、…」と、
高揚していた、よ!!

そして、誰にも命ぜられて居ないのに
ズボンを脱いで……、
下半身、丸出し◎に、なったのさ。
ブルンと、オチンチンが、出た。
「ぶらぼー」「ぶらぼー」……と、
僕のオチンチンをねっとり捉えたa,udienceが、
熱くなって、将棋倒しになった、

「将棋倒し」って、古臭い表現じゃないか?!
というところで、僕を含む
自由主義的観客は、うねりとなり、
訳も分からず、交配して……、
深夜まで…スーッポン…スーッポン、
自由主義的性愛=【オフパコ】*に…
耽る光景が、
展開されていたという訳、だった…。

──自由、って、いやらしい、ね😉
ねーーー、😵😆

心の壁を生きよう、裸の刻(トキ)を生きよう! (ここは、青姦スポット、ふたご座流星群の流れる場。真貴さんの唄は μ’s……。)

「ワタシのいもうと、“原田知世” ちゃんの40th Anniversary Special Concert “fruitful days”も、
よろしくお願いしますねーッ………!!」って、
真貴さんは、拡声器でannounceした。

LondonーParisーLondonーParisー
LondonーParisー、🇬🇧 🇫🇷
yeah、yeah、yeah……🎶

と、歓喜の、どよめきが沸き起こる……、
黄金公園…、特設ステージ…で。

そう…、知世ちゃんと言えば……、
永遠のアイドル顔に加え【食糞主義】の…、
噂の絶えない、
これもまた、僕たちのμ’s……サ!!

はは、彼女たちみたいに
強い自由主義者に、成りたい、モノダ……!!

😆😆 twist & shout!!

下半身、丸出し◎に、なって………、
ブルリ ブルリ 🥶と、オチンチン、出した、
僕は、「真貴さーーーん!!」と
叫びながら、ステージの上…転げ回った、
ソシテ 真貴さんの…手のひらに
熱い塊…を脱糞した。「ま…まあ、
美味しそーう🤤…………!!」って
真貴さんは、歓喜して…………、
僕から出た…黄金時代を頬バッタヨ!!

「ああっ、サーイコー!!😋」

良い、役どころを、すっかり……
舞台で…独り占めしてしまった、僕は……、
周りを取り囲むグルーピー、
Hells angelsの連中から羽交い締めに
され、ちゃって……、

ストンストン…!! 他愛なく去勢されて
しまった、のさ……!!
「ああっ、サーイコー!!😋、
それもまた、大いに、良きこと哉!!

……………………………
🌠雑食、万歳!!🌠
……………………………

死ぬ前に たった 一度だけで いい
思いっ切り 笑って みたい
陽の当たる 大通りを
口笛吹いて 歩いていく………………、

         (陽の当たる大通りより)

 
 

*ジョンレノンのアルバムタイトルを参考にした。
*オンラインで知り合ったもの同士でセックスすること。
・男女ともに遊び目的である
・周りの人にバレにくい
・恋愛経験が必要ない
・男性のライバルが少ない…などが、メリット。

 

 

 

RED

 

村岡由梨

 
 

2022年12月14日、水曜日。
眠が可愛がっていたアメリカザリガニのザリ子が亡くなった。
赤いパーカーを着た眠が、
水槽の前でうずくまって泣いていた。
しばらくして野々歩さんが、
ひとしきり泣いた眠を促して
庭のネムノキの根元に、ザリ子を埋めた。
花屋で赤いパンジーを一株買って来て、
ザリ子の亡骸の上に、植えた。
眠は涙を流しながら、
懸命に、シャベルで土をかぶせていた。

12月13日。
下北沢で眠と買い物。
眼鏡屋で眠の眼鏡を直してもらい、
モスバーガーでポテトをテイクアウトした。
帰る途中、小さな雑貨屋に立ち寄って、
手作りのアクセサリーを見る。
赤い小さなバラのイヤリングを買う。
本物のバラを樹脂で固めたものだという。
眠と二人で「かわいいね」と笑いあう。
その後、ドラッグストアへ。
金曜からの入院に備え、必要なものを買う。

12月16日、今日から入院。
出迎えた看護師に、荷物チェックをされる。
ドライヤー、手鏡、ガラス製の容器に入ったヘアオイル
「自殺の恐れがあるため」と返される。
別れ際、施錠されたガラス扉を隔てて、
手と手を合わせた。
さっきまで握っていた手の温もりが
未だ残っていて、急激に切なくなる。

12月17日。
世田谷代田での仕事を終えて、
自転車で病院へ向かった。
16時頃、到着。
本2冊(ピッピシリーズ)
クリスマス柄のチョコウェハース3枚
ベジタブル味のおっとっと
もなか3個
ヘアバンド
スリッパを差し入れる。
二重扉のさらに向こう側にいる眠に手を振ったら、
眠も手を振り返してくれた。
声も届かない。直接触れることも出来ない。
眠をここにひとり残して、
私が帰る姿を見せたくなかった。
けれど、どうすることも出来なくて、
出来るだけ自分の背中を見せないようにして、病棟を後にした。
病院の寂れた敷地内を、ひとりで歩く。
帰り道、眠から着信がある。
さみしい、つらい、と言って、泣いている。
そばにいてあげたい気持ちが募る。

帰宅後、花と野々歩さんと三人で夕食。
夜、久しぶりに自分で髪を洗った。

12月某日。
花が、今朝、眠が亡くなる夢を見て
泣いて目が覚めたという。

12月21日。
午前中、眠から着信がある。
「学校きちんと行けるから、ここから出して」
と言って、泣いていた。
自分のカウンセリングの前に病院に寄り、
もなかとボディシートを差し入れる。
心配したけれど、思ったより元気そうで安心する。
扉の向こうの眠と、メッセンジャーでやり取り。
「もなか持ってきたよ!」
と送ったら、嬉しそうに手を振っていた。
病院を後にして、経堂のクリニックへ。
今後の方針を話し合う。
「入院期間1ヶ月くらい。
クリスマス年末年始も病院で」
夜、眠に電話して伝える。
小さな声で「がんばる」と言ってくれた。
「ねむまろが頑張るんならママも頑張る」
「毎日会いに行くよ」
尖った爪で心が抉られるように、痛かった。

12月22日。
朝、冷たい雨が降る中、陸橋通過。
眠から「帰りたい」「ここから出して」
と泣いて電話。
仕事が終わる頃には、
空がきれいに晴れ上がっていた。
野々歩さんと合流して、病院へ。
扉を隔てて、メッセンジャーでやり取りする。
眠の病室からは、公園や電車が見えるらしい。
「きれいなんだよ」と眠。
「今日は、看護師さんと一緒に散歩したよ。
敷地内にガチョウがいたんだよ」
「寒くなかった??」
「大丈夫。赤のパーカー羽織ってたから」
「赤のパーカー」

 

「赤のパーカー?」
「うん、赤のパーカー。」
「赤。」
「うん、赤。」
「赤。」
「赤。」
眠の涙
赤い涙
何もいない水槽はまだブクブクと音を立てていて

今月18歳になるというのに
余りにも幼すぎる眠の寝顔を見ながら
今、この詩を書いている、私。
2023年3月7日、深夜。

スヌーピーのトレーナーを着て、
ホットケーキが焼けるのを嬉しそうに待っている眠。
猫のサクラが見守る中、
洗い物をしたり、掃除機を掛けたり、
洗濯物をたたむのが上手くなった眠。

この春、徐々に学校での勉強を再開して、
眠の時間がまた動き出す。
私にとって春は苦手な季節だけれど、
3月は、別だ。
なぜって、それは
私の大切な、愛おしい眠が生まれた月だから。
ザリ子は亡くなったけれど、眠はまだまだ生き続ける。
だから元気を出して、
前を向いて、
時には立ち止まっていいから、
休み休みでいいから、
生きて 生きて 生きて

 

 

 

 

村岡由梨

 
 

およそ二週間前に、義父が荼毘に付された。
詩人だった義父の為に、
棺に詩集を何冊か入れた。
そして今、
私は目を閉じて、
火葬炉の中で詩人の身体が焼かれていく様を
心の中で何度も反芻している。

激しい炎は、
詩人の詩集を焼き、詩人の肉も焼いた。
残ったのは、少しの骨と
金属製の人工股関節だけだった。

そんなことを思い出しながら私は、
今日も台所に立っている。
そして、焦がし過ぎないように、肉を焼く。
夕飯に肉が出ると、育ち盛りの娘達は喜ぶ。
娘達が嬉しそうに
食べる姿を見るのは気持ちが良い。
けれども私は肉を食べない。私は
肉を嬉々として食べる女が嫌いなのだ。
それなのに、次女がお腹にいた時、
無性に肉を貪りたくなった。
尖った犬歯で肉を引きちぎり、
滴る肉汁など気にせずに、
幼い頃食べた肉の味やにおいなど
遠い記憶をたぐり寄せ、
心の中で何度も何度も咀嚼したが、
結局実際に口にすることは無かった。
私は、肉を嬉々として食べる若い女が
たまらなく嫌いだったのだ。

昔、直立二足歩行をする犬によって
首に縄をかけられ、
真っ裸で地べたを這いずり回る、
という8ミリ映画を撮った。
肉を食べる・食べさせるという
優越性の転換だ。

 

今日も私は、
目を閉じて、
詩人の身体が燃えていく様を
ゆっくりと味わう。
幼い頃食べた肉の味やにおいを思い出し、
ゆっくりと咀嚼する。

けれどもやはり、
私は肉を食べることが出来ない。
肉は死だ。
死体は、こわい。
私はその死に
責任を持つことなど出来ないのだ。