michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

代行

 

工藤冬里

 
 

人生がまだあると思っている頃の金の使い方には宵越しの云々の荒さがあるが
人生がもうないと思うようになると早く済ませなさい的の焦りからある面さらに荒くなる
貨幣は死者のアーカイブのために取り置かれているマイナス茶碗であり
貸した金も資産に含める銀行の絡繰はジュビリーによってしか解決できないニ人スキーの分裂病を生んだ
かれの跳躍は即ち下降であり上下増減何れも銀行の資産となる
貸せば貸すほど円トロピーは増大するから
我らの不景気は換金できるマイナス果実の生る木であり
スナック歓呼鳥が苦しめば苦しむほど頭取は喜ぶ
それで私は池の端にパブを作った
リヤガーデンにベンチ付きテーブルを組み
労働者階級のムスッとした娘を立たせて
ビターのサーバーを並べた
宣伝はせず
上下する田舎道のために
若手の代行要員も用意したのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

三つ編みおさげの彼女の

 

ヒヨコブタ

 
 

たくさんの年始の挨拶のなかに
おばの懐かしい文字があった
幼い頃に農家へ養子に出たその人の
一文字一文字が胸をうつ

元気でいればまたお目にかかることも出来るでしょう
そのときを楽しみにしています

親の兄弟姉妹のなかでも一目おかれる彼女は
確かにそう思っているのだと
一つひとつの文字の強さにそう感じる
この冬も家のまわりは吹雪くだろう
田畑は雪に覆われて
地吹雪も酷いだろう

腰はとうに曲がり
いつも生まれたての玉子を持たせてくれた
訪ねると持っていった以上の収穫物を
美味しい米も美しい花も

彼女にいまとても会いたい
白髪の長い髪を乙女のように三つ編みにした
愛らしいひとに

わたしが生まれたばしょではないのに
訪れるたび先祖の開墾をおもうばしょに
確かに彼女はいる

叶わぬことも
叶えるために
日々呼吸をしている
また彼女に会うために
またあの地に立ち
あらゆる記憶をつかみとるために

 

 

 

He was so kind as to show me the way.
彼はたいへん親切だったので、道を教えてくれた。 *

 

さとう三千魚

 
 

of glass windows
inside

shoji

when I open only a little

on electric wires
there are sparrows

there is the west mountains

today
the west mountains

it has a dark gray color

was the person discharged?

in that large living room bed
lying down

is he there

withered flowers in the garden over the glass

is he staring

Poor Poor
told me

be there

He was so kind as to show me the way *

 
 

ガラス窓の
内側の

障子を

すこしだけ開けると
電線に

雀たち
いる

西の山がいる

今日は
西の山は

濃い

灰色をしている

そのヒトは
退院したのかな

あの広い居間のベッドに
横になって

いるのかな

ガラスの向こうの庭の枯れた花たちを

見つめて
いるのか

プアプアが教えてくれた

そこに
いる

彼はたいへん親切だったので、道を教えてくれた *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

島影 27

 

白石ちえこ

 
 


千葉県船橋市

ある年。
団地の交差点にあった竜舌蘭。放射状の葉の真ん中から、みるみる茎がのびていき、
あっと言う間に団地の三階に届くほどになった。
やがて大きな花房に黄色い花が咲いた。その巨大さは大昔の恐竜時代の植物を思わせた。
竜舌蘭の開花は30~50年もかかり、そのあとは枯れる、と新聞で知った。
この年、関東のいたるところで竜舌蘭の開花が見られ、新聞の記事になっていた。
火星大接近の年だった。

 

 

 

When did this world come into being?
この世界はいつ生じたのか *

 

さとう三千魚

 
 

dawn

I was awake
I was listening to the sound of rain

on the roof
eaves and

on the boulders in the garden

rain
will be hit

there was a sound

countless rains
flat

on the ground

will be hit

also in the ocean
rain

will be hit

When did this world come into being *

 
 

明け方

目覚めてた
雨の音を聴いてた

屋根や
軒先や

庭の玉石に

雨は
あたっているのだろう

音がした

無数の雨が
平らな

地上に

あたっているのだろう

海原にも
雨は

あたっているのだろう

この世界はいつ生じたのか *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

「道程」の引用されるclimate futurismの光景

 

工藤冬里

 
 

建物がごちゃごちゃと 校歌を唄っている
バッハにとってのフランスはVOGUEのようだった?
準備しなければならない即興は身に余る
地球が禁煙して
随分経つ
参道は俯いて
携帯を見る人々の
クーポン用アプリの檻
バッハにとってイタリアは
Lanciaみたいなもの?
不死の主題は同じでも
山が、木が、代わりになっている?
コロニーの歌を唄うとでも?
集合の重なりが青くなっていて
そこに経済ITアナリストの正当性のみが簾のように呼んでいる
命のクーポンを前もってゲットしようと
人々は俯く
手指から首に
首から頭上に
疲労は二酸化炭素のように上っていく
ああ自然よ
父よ
ぼくの前に道はあるが青い
ぼくの後ろに道はできない

 

 

 

#poetry #rock musician