michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

海から帰ってきた

 

さとう三千魚

 
 

モコは
いないから

居間のソファーの
モコの

傍らにいることもない

仏間の
小机の

本や
資料を

二階にあげた
二階の机の上の積まれた本を下ろした

半年
二階のこの部屋は使わなかった

ダンボールは畳んで
クルマのトランクに積んだ

ホームセンターのリサイクル置き場に出して
海を見にいった

フロントガラスの向こうに

半島はいた
貨物船は浮かんでいた

水平線が光っていた

海から帰って
ベッドに大の字に眠った

呻いていた

夢なのか
憶えていない

なぜ呻くのか
わからない

ベッドから起きると羽毛布団は身体の形に凹んでいた
身体の形の凹みを見ていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

Piccininaに至る

 

工藤冬里

 
 

異次元エフェクターも毀れて剥き出しの心配を配線する
半田付けされた銀杏葉を写体として
その黄色を非車体として流す
現実界仕様だな
病疾を美容室と聞き間違えてはや6年
覚えずウラの家に至る
ウラニホン
ウラニホン
ウランに惚れるのと
コバルトも掘れる能登
よ! 半導体に敝れた女は能登へ行くのよ!

 
現在、過去、未来
私たちはあり得たかもしれない未来を生きているだけだ
https://video.twimg.com/ext_tw_video/1766454952183144448/pu/vid/avc1/18×12/17xUX6I-Yyxmfh79.mp4?tag=12
過去は脳内にしかないし現在は瞬間的に過去になっていくから未来しかないわけだが、例えばどんなに寒くても風呂場の前で服を脱ぐだろ?だから大事なのは湯の温度とその保証だ。ビデだけあって湯の出ないホテルなんて沢山あった。脱げなくなったらおしまいだ。
未来のライオンが過去を並べ替える
現在は言質を取ることしか出来ない
髪型はお任せで
出来ることをする
花の見かけの無力を観察する
やられたことを思い起こす
そうでなければ4月に羽が生えるだけだ

Piccinina
https://soundcloud.com/lafestadellerane/piccinina-n8?utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing

 

 

 

#poetry #rock musician

今天,由我來送死

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

今天,由我來送死
盛大的守夜,彌留者的祈禱。
磨擦着聲音的細節,抬頭呼吸,
蘇醒的獸破解了的沉默。

每一個字𥚃骨頭都在呐喊!
不在的花朵深處
讓羊水流動,除了呼吸之外
我可以說的,只有那麼多。

驚蟄盲月的胸膛已洞開,
無知取代了我的呼吸。
我們悔意全無
雷,已經聾了。

在潮濕中燃燒我的信
燃燒我的呼吸我的號哭。
死的書!經書失去了信仰。
今天,由我來送死。

 
2024年3月9日 於碩門

 

 

 

 

いない人

 

野上麻衣

 
 

くらす人が家をるすにする日がつづく。

くらして2年、
ふたりの時間をすごしてきたあとの、
ひとりの時間。

いない夜がつづくと
声にならないぶんが
文字になった。

ふたりのひとりがいないぶん、
部屋はよごれない。

飲みかけのお茶、
洗わずにおいたままのお皿、
ひきかけの椅子。
景色がひとつも動かなくて
ここではひとりんぼう。
しん、と
きこえた
ひとりぶんの、声。

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その69

 

佐々木 眞

 
 

 

2024年1月

紫式部、なにするひと?
御本を書いたりするひとよ。
ボク、みますお。
みようね。

鎌倉、ツツツー、のあるとこですよ。
コウ君、ツツツーの信号、まだ苦手なの?
ダイジョウブですお。大丈夫。

コウ君、歯医者さんで虫歯を治してもらおうね?
嫌ですお。ダイジョウブですお。大丈夫。

ボクはねえ、オオヤさんとマイさん両方好きですお。
そうなんだ。お母さんも。

まひろ、泣いちゃったよ。
大丈夫だよ、コウ君。

まひろ、寂しかったんだよね。
そうだね。

ボク、まえポンキッキ好きだったんだお。
そうなんだ。

ボク、「光る君へ」の音楽、好きですお。
へえ、そうなんだあ。

 

2024年2月

めぐりあうって、なに?
また会うことよ。

お母さん、これなーに?
これはね、シロヤマブキの実なんだよ。
はい、わかりましたあ。

請求書って、なに?
これだけお金使いましたから下さい、というお知らせよ。

お父さん、あした石原さとみの番組、録画してくださいね。
分かりましたあ。

コウ君、うちのお金を黙って使うの、ドロボウだよ。ドロボウどうなるの?
ケイサツにつかまります。
つかまると、どうなるの?
困ります。
そうでしょう。ドロボウしたらダメよ。
分かりましたあ!

ドロボウ、困ります。うちお金ないのよ。
はい、分かりました。大事に使います。

ボクはイイコですよ。
そうなの? ワルイコは?
ドロボウですよ。
コウ君、ドロボウ?
違いますよ。

比較的って、なに?
わりあい、よ。

タイミングって、なに?
ちょうどいい時よ。

「転校生」で蓮佛さん、死んじゃったでしょう?
死んじゃったね。

お父さん、ホンマって、なに?
ほんとう、のことだよ。ホンマカイナ、ソウカイナ、エーだよ。

ボクは我慢できます!
なにが我慢できるの?
分かりませんお。

コウ君がどんどん遣うから、うちのお金、全部なくなっちゃうよ。
ぼく、無駄遣いしませんお!

お母さん、ごめんなさいとボクいいました。
お母さんのお財布の中のお金はお母さんのお金です。コウ君のお財布の中のお金がコウ君のお金です。
分かりました、分かりました!

お母さん、モリダクサンて、なに?
いっぱい、いっぱいのことよ。

 

 

 

レ・サングロロン デ・ヴィオロン

 

駿河昌樹

 
 

詩というと
ヴェルレーヌの『秋の歌』に
やっぱり
極まっちゃうのかな

思う

近代の

の場合は

簡単
シンプル
音の粋

だれもに沁みる
嘆き節
嘆き節以外に
詩なんぞ
ある
もんか!

あきらめ悟ったうえでの
明瞭な
つぶやき

ああ、いいね
あの音

 レ・サングロロン
 デ・ヴィオロン
 ドゥ・ロトン
 ブレス・モンクー
 デュヌ・ラングー
 モノトン

 トゥ・シュフォカン
 エ・ブレーム・カン
 ソンヌ・ルー
 ジュム・スヴィヤン
 デジュー・ザンスィヤン
 エ・ジュプルー

 エ・ジュマンヴェ
 オ・ヴァンモヴェ
 キ・マンポルト
 ドゥサ
 ドゥラ
 パレイユ・アラ
 フゥユ・モルト*

「なによりも音楽を!」
と言った人の
詩だから
まずは音でしょ
カタカナを通したのでもいいから
まずは音でしょ

意味は添え物

人生の意味や意義が
いつも
添え物でしかないように

だから
訳す必要はない

 秋の何挺かのヴァイオリンの
 長いすすり泣きが
 抑揚のあまりない愁いに満ちた音色で
 私の心を傷つける

 時の鐘が鳴る時
 息苦しくなり青ざめて
 私は昔の日々を思い出し
 涙を流す

 そして私は立ち去っていく
 悪い風に
 枯葉のようにそこここに
 運ばれながら

などと
なるべく芸もなく直訳ふうに意味を取ろうとしながら
訳す必要など

 
しかし
芸もなく直訳ふうにしてみると
うまかったなあ
上田敏は

思い出す

 秋の日の
 ヰ゛オロンの
 ためいきの
 身にしみて
 ひたぶるに
 うら悲し。

 鐘のおとに
 胸ふたぎ
 色かへて
 涙ぐむ
 過ぎし日の
 おもひでや。

 げにわれは
 うらぶれて
 ここかしこ
 さだめなく
 とび散らふ
 落葉かな。

やっぱり
これも
うまかったなあ
堀口大學の
訳も

思い出す

 秋風の
 ヴィオロンの
 節ながき啜泣(すすりなき)
 もの憂き哀しみに
 わが魂を
 痛ましむ。

 時の鐘
 鳴りも出づれば
 せつなくも胸せまり
 思ひぞ出づる
 来し方に
 涙は湧く。

 落葉ならね
 身をば遣る
 われも、
 かなたこなた
 吹きまくれ
 逆風(さかかぜ)よ。

金子光晴の訳も
あったなあ
これは
すっかり口語になっていて
なるほどなあ

思い出す

 秋のヴィオロンが
 いつまでも
  すすりあげてる
 身のおきどころのない
 さびしい僕には、
  ひしひしこたえるよ。

 鐘が鳴っている
 息も止まる程はっとして、
 顔蒼ざめて、
  僕は、おもいだす
 むかしの日のこと。
  すると止途もない涙だ。

 つらい風が
 僕をさらって、
  落葉を追っかけるように、
 あっちへ、
 こっちへ、
  翻弄するがままなのだ。

そもそも
音だけでいいのだし
これだけ
訳もいろいろあるのだし
訳す必要など
ない
こんなふうには

 秋
 すすり泣く
 ヴァイオリン
 緩急なく
 ながながと
 音のびて
 愁いのしみる
 わがこころ

 時の鐘
 鳴ったりすると
 泣けてくる
 思い出すのだ!
 むかしの日々を!
 息も詰まり
 青ざめたかな?
 すこしは
 顔も

 そして
 枯葉
 まるで
 枯葉
 荒っぽく
 そこやここ
 吹き散らされて
 去るほかに
 なきわたくしと
 なりにけり

 なりにけり

 
 

*Chanson de l’Automne  Paul Verlaine (1844 – 1896)

Les sanglots longs
Des violons
  De l’automne
Blessent mon cœur
D’une langueur
  Monotone.

Tout suffocant
Et blême, quand
  Sonne l’heure,
Je me souviens
Des jours anciens
  Et je pleure;

Et je m’en vais
Au vent mauvais
  Qui m’emporte
Deçà, delà
Pareil à la
  Feuille morte.

 

 

 

いちみり

 

道 ケージ

 
 

いちみり
あといちみり
風に消えるか
風を迎えるか

罪人になるか
罪人にするか

あといちみりは
耐えられない
耐えられる

起こってみないと
わからない
どこかで
音がする

バンジョーではない
祭りではない
何かが轢かれている
何度も何度も
細切れ
切り落とす

穴のような
寝床で
腐ったものを食べる
雑巾のようなものが放り込まれる

皿の破片がアヘンのように白い
指で拾う
どこに落とすか
マネスキンだよ