さとう三千魚
昼前に
河口まで歩いた
ノラたちに
会わなかった
海がいた
凪いだ
海がいた
しずかに
風は
流れていた
見ていた
打ち寄せるのを見ていた
波が
打ち寄せていた
何度も
打ち寄せていた
波は岸辺を洗っていた
#poetry #no poetry,no life
昼前に
河口まで歩いた
ノラたちに
会わなかった
海がいた
凪いだ
海がいた
しずかに
風は
流れていた
見ていた
打ち寄せるのを見ていた
波が
打ち寄せていた
何度も
打ち寄せていた
波は岸辺を洗っていた
#poetry #no poetry,no life
昨日
午後に
隣り駅に降りた
椅子と
手帳と
ちいさなプリンターをカバンに入れていた
北口広場で
ひとり
月の初めの
日曜日
ここで詩を書くことをしている
立ち止まる人に
名前と
好きな花と
詩のタイトルを
手帳に
書いてもらう
それから
その人の
詩を書いてみる
プリントして
渡す
昨日は
だれも
立ち止まってくれなかった
師走の風
寒かったな
過ぎていった
足早に過ぎていったな
地上で
空から降るものを見ていた
てのひらに受ける
無いものを
受ける
#poetry #no poetry,no life
ワイングラスを探していた
背丈が10cmほどの
吹きガラスの
ワイングラスを
探してた
丸子の
匠宿にも
駅中の駿河楽市にも
なかった
デパートにも
なかった
車を走らせて
探し歩いた
厚く割れない吹きガラスのワイングラスを探し歩いた
帰ったらモコ
居間の絨毯に眠っていた
くの字で眠っていた
夏には弱って歩けなかった
傍にいないといけなかった
今日は
帰って
本のある部屋に入った
アルバート・アイラーの”Deep River”を聴いた *
繰り返し
聴いてた
* アルバート・アイラーのCD「GOIN’HOME」のなかの曲”Deep River”のこと
#poetry #no poetry,no life
一昨日かな
また
詩を読んでた
そのひとは
コーヒーに砂糖は入れない *
と書いていた
詩にはふたつの川が流れている
故郷の川だろう
遠賀川と
六郷川と
ふたつ流れていた
昨日
高円寺の寺には強く風が吹いていた
詩人の通夜だった
帰りの新幹線で
眠ってしまった
夕方
海浜公園で海を見ていた
看板に
雀たち一列に並んでいた
* 松下育男さんの詩集「コーヒーに砂糖は入れない」のこと
#poetry #no poetry,no life
昨日は
市原さんと
望月さんと
会って
飲んだ
ずいぶんと
飲んだ
産む男 *
の反省会だった
反省はしなかった
飲みたかった
今朝
重い頭で
根石吉久さんの詩を読んでいた
浜風に書いてもらった **
詩だった
こころがなくなって ***
しまった ***
そう
根石さんは書いていた
根石さんは
ベッドで
こころがなくなってしまったことに気付いたのだ
午後に
痩せたモコを
美容院に連れて行く
シルキーのおじさんに爪と毛を切ってもらう
* 10月9日(月)に静岡フリーキーショウで開催した工藤冬里ライブ「産む男」のこと
** 浜風は、浜風文庫のこと
*** 根石吉久さんの詩「ベッドで」からの引用です
「ベッドで」
https://beachwind-lib.net/?p=11146
#poetry #no poetry,no life
清澄白河で
ホックニーの *
母と
父の
絵をみた
若い頃
新宿のデパートで
ホックニーの水飛沫の上がるプールの絵を見たことがあった
時間が止まっていた
渋谷の街は
変容していた
地下広場で迷って
シドモトさんの写真展会場に着く **
ここにも
いない母たちはいた
夜
高円寺の鳥渡で ***
千のナイフ
聴いた
ファーストアルバムだった ****
うねうね
していた
最終の新幹線には乗れなかった
朝
窓をあける
ベランダに木の椅子がひとつ置いてある
* 東京都現代美術館で開催の「デイヴィッド・ホックニー展」(2023.07.15 sat ー 11.05 sun)
** ギャラリー・ルデコで開催の「Yoichi Shidomoto. IN MY GALAXY」写真展(2023.10.31 tue ー 11.05 sun)
*** 写真家広瀬勉の店「バー鳥渡」のこと
**** 坂本龍一のファーストアルバム「千のナイフ」をレコード盤で聴いた
#poetry #no poetry,no life
千曲では
根石さんと
戸倉の温泉に入り
近所の居酒屋の
きのこ鍋で飲んだのだったか
千曲から
帰って
何日か
経った
何日か
経って
何をやったのか
覚えていない
海は見ただろう
今日も
午後に
海浜公園から海を見ていた
モコは
居間のソファーに眠っていた
根石さんは
千曲川の流れを見て
詩は
一瞬だよな
そういった
詩は
一瞬でも
まだ生きてるから
書こうと思います
そう
わたし
いった
海浜公園では風が吹いていた
海の向こうに
半島が青く横たわっていた
半島の上に白い雲がふたつ浮かんでいた
#poetry #no poetry,no life
いつだったか
何年か
前だったか
根石さんと
姨捨の駅のホームから
千曲川の光るのを見たのだったか
根石さんは
母を
山の民だと
言ったのだったか
根石さんは
見ていると
詩だと
思える
山の人であり
詩人なんだと思える
なにも望んでいない
なにも望まない
あることのなかに
いる
いることのなかにある
千曲川が光っていたな
千曲川が流れていたな
その山は
姥捨ではなく
姨捨だった *
愛しいものたちを捨てたのだったろう
* 千曲市に実在するのは姥捨山ではなく姨捨(おばすて)山でした
#poetry #no poetry,no life
秋田から
帰った
帰って
2ヶ月が過ぎた
帰って
何度
海を見にきたのか
海には
塩辛い水が
打ち返していた
ボレロだと言った人も
もういない
岸辺の釣り人たちを見てた
岸辺の釣り人たちの背中を見ていた
いつも
見ていた
昨日の夜
電話で
戸塚さんが太刀魚釣りを誘ってきた
日曜は
千曲の根石さんに会いにいく
根石さんは千曲川で鯉を釣ったことがあると言っていた
* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”スポーツとあそび” より
#poetry #no poetry,no life
おととい
かな
朝の庭で
涼しくなったな
そう
思った
モコのウンチをティッシュでひろって
ポリバケツのゴミ箱に
捨てた
モコはこのところ
温かい
サーモンと
キャベツと人参のスープと
薬と
サプリしか
食べていないけど
ウンチは
ウンチだった
涼しかった
風が通っていた
ポリバケツの蓋には
茶色のナメクジがひとり角を伸ばしていた
蓋の上に
白い道が光っていた
***memo.
2023年10月9日(月)、自宅で、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った53個めの詩です。
工藤冬里ライブ「産む男」の日の朝に.
タイトル ”汚”
好きな花 ”サンカヨウ”
#poetry #no poetry,no life