花たちへ

 

さとう三千魚

 
 

ここのところ
夏バテか

走らなかった

検診でバリウムを飲むから
今朝は

なにも
食べなかった

水も
飲まなかった

すこしだけ
身軽になって

河口まで走ってみた
ゆっくり走ってみた

河口には白い雲を被った不二がいた
鮎の稚魚たちか

群れて泳いでいた

燕たちが低い空を餌を求めて飛びまわっていた
子どもたちが待っているだろう

帰りは
歩いてきた

ゆっくり歩いて帰ってきた

義母の仏壇に女は花を供えていた
灯籠の蓮の花の絵がゆっくりまわっていた

庭のカサブランカの花弁の
地に落ちて

残った雌しべの

突きでていた
尖端が濡れて光っていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

花たち

 

さとう三千魚

 
 

女が出かけるのを

見送りに
出て

今朝

ひらいて
いた

薄みどりの花芽の
膨らんで

クリーム色に膨らんで
白い

花は
咲いた

義母が逝って
犬のモコが逝った

鉢から
金木犀の木の下に

カサブランカを移し
植えた

光を求めて茎が横に長く伸びるのを
紙紐で吊り下げて

支えた

カサブランカは
花弁をひらいた

一つだけ花は大きく白くひらいた

花の中に
モコがいる

花の中に義母がいる
たこさんもいる

カサブランカの花の中心には太い雌しべが突き出ている
その周りを紅い花粉にまみれた6本の雄しべたちが取り巻いている

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

消えた **

 

さとう三千魚

 
 

白と黒の
猫は

テーブルにねそべっていた

背中のまるい毛なみの
ねそべっていた

いつかテーブルから降りて襖の向こうへ
消えた

消えて
音がない

 

・・・

 

** この詩は、
2025年6月27日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第18回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

島へ

 

さとう三千魚

 
 

昨日か

河口まで走った
川沿いを走った

歩道にミミズたちの死骸がいた
たくさんいた

乾いているものもいた

ゴンチチの
ラジオを聴きながら

走った

Archie Sheppのサックスで
“Embraceable You” という曲が鳴った

“抱きしめたいきみ”

というのか
聴いていた

しばらく川沿いの歩道に佇ち止まって聴いていた

まだ
元気だったころ

母を連れて
南の島へ行ったことがあった

島の南端の海の見える公園に
たくさんの四角い石が並んでいた

ひとびとの名が刻まれていた

その石の前で
母は

泣き崩れた

そこに
母の兄の名もあった

母との旅は一度きりだった
母にはなにも返さなかった

その後母は病気で横になった
死んだ母を抱きしめなかった

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

島影

 

さとう三千魚

 
 

一昨日から

雨は
降りつづいた

夜中に
風がでて

鎧戸を叩いた

雨は

昼前に
やんだ

西の山の頂きは雲に隠れている

ここは
港町で

西の山が
港町を抱いている

西の山が風をしのいでくれる
机の上には「島影」がある *

鹿児島県 吹上浜
大阪府 大正区
三重県 南伊勢
新潟県 新潟

撮影地一覧が
あとがきの前の頁にある

好きな写真はどれも
水辺の写真で

いつか見たような光景だが

行ったことのない
土地だった

風が吹くと
水辺は

恐い

春の海に
ボートが沈みかけたことがあった

「島影」に

懐かしい人は
いない

ひとりもいない

写真家がいた
そこにいた

 
 

* 「島影」は、白石ちえこ写真集「島影」(蒼穹舎 2015年刊)のこと

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

河口へ

 

さとう三千魚

 
 

川沿いを

はじめは
歩いて

川の曲がるところで
佇ちどまり

水面を見ている
水面に空がいる

屈伸して
膝と

足首を弛めながら

水面を
見てる

土手の斜面に
オオキンケイギクかな

ランタナも
咲いている

どちらも
外来種か

それから掌をひらいて
空にひらいて

走っていく

土手の雨上がりのアスファルトの
歩道を

カタツムリや
ナメクジや

ミミズ

ゆっくり
歩いてる

いくつか
踏み潰されている

やがて

河口の
水門の前で

不二を見る
いつも見る

見えない時も見る

河口には
野良たちがいる

野良たちは餌を待っている
おじさんたちが

おとなしく
餌をやっている

野良のそばに鴉もいる

野良も
鴉も

やがて土に帰る
ひとも土に帰る

カタツムリや
ナメクジや

ミミズ

ゆっくりと
歩いている

ゆっくり河口を行く
ゆっくりと土に帰る

そこにいる
みんないる

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

くもり空で、
すっきりせん頭 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 002     ken さんへ

さとう三千魚

 
 

降るの
かな


降るのかな

黄色い花が好きだ

ここに
いる

花の
咲くの

待ってる

 
 

***memo.

2025年6月1日(日)、
水曜文庫にて開催した”無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第2期、 2個めの即詩です。

タイトル ” くもり空で、すっきりせん頭 ”
好きな花 ” フリージア、黄色 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

休み明け ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 001     kouichi さんへ

さとう三千魚

 
 

空に
雲が

ひろがっている

どこに
咲いているの

くれないの花
紅い花

空を見あげてる

 
 

***memo.

2025年6月1日(日)、
水曜文庫にて開催した”無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第2期、 1個めの即詩です。

タイトル ” 休み明け ”
好きな花 ” つつじ、紅い ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

つなぐ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 127     tokihisa さんへ

さとう三千魚

 
 

つなげないだろう

なにも
つなげないだろう

ダリアは

佇んでいる
崩れている

なぜ殺すの
なぜ飢えさせるの

なぜ
見捨てるの

なぜ声にならないの

なぜ
声に

ならない声で言うの

なぜ
呻くの

なぜ
白いの

なぜダリア白いの
なぜダリア白いの

ダリア
咲いている

佇んでいる
崩れている
叫んでいる
呻いている

 
 

***memo.

2025年5月29日(木)、
自宅にて

“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 127個めの即詩です。

タイトル ” つなぐ ”
好きな花 ” 白いダリア ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

冬 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 126     maiko さんへ

さとう三千魚

 
 

秋が終わり
冬の始まるころ

天辺が
白く

光るのを
見たことがある

あれが焼石岳と教えてくれたひとは
いない

もうみんな
いない

冬は
言葉がない

紅い椿を胸に抱いている

焼石岳の
天辺を

白く光らせ

紅い椿を
抱いて

雪の細道を行くひとがいる

 
 

***memo.

2025年5月28日(水)、
自宅にて

大磯 ” soui ” 詩をひらく、の後で

“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 126個めの即詩です。

タイトル ” 冬 ”
好きな花 ” 椿、紅い花 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;