社会は循環している、と気付かせてくれた逞しい少女へ

 

みわ はるか

 
 

緊急宣言がやっとやっと明けたまだ残暑が残るある日。
わたしはものすごーく久しぶりに同業の友人宅へ初めてお邪魔した。
同期入職で長い付き合いになりつつある。
2年も会っていなかったのでほんのちょっぴり緊張したけれど、変わらない優しさでできた雰囲気の空間にすっと溶け込めた。
職種は違うけれど、同じフィールドで活躍している。
彼女は優しさの中に芯のある性格をしている。
風が吹いたらポキッと折れてしまいそうな小枝ではなく、その風とともにしなるススキみたいな感じ。
白を基調とした素敵な大きな家を建て、子育てもものすごく頑張っている。
そんな彼女はいつも眩しい。
8月のもくもくした入道雲の中から差し込む太陽の光のように眩しい。

玄関から出てきた彼女は髪を短く切りさっぱりした印象だった。
その後ろから恥ずかしそうに顔だけ覗かせる可愛らしい女の子。
ん?!まさかこの子は4年くらい前に初めて定食屋さんで会ったあの子なのか??
そうか、そうだそうだ間違いない。
こんなにも大きくなったのかと心底驚いた。
聞くともう小学生らしい。
ミートボールのように焼けた肌色、きれいにまとめて結んであるサラサラの髪、もう一人でどこにでも行けてしまう靴を履いた足。
幼女は立派で逞しい少女へと進化していた。
ははぁ、我々が年を重ねるわけだ・・・・・。
なんか最近首が痛いとか、階段だるいとか、外出るの億劫だとか思うわけだ・・・・。
少女はもちろんわたしのことなんか微塵も覚えていなかったが、わたしに色々教えてくれた。
近所の公園までの近道、カラスノエンドウという植物、ピンク色をしたものすごく気持ち悪いタニシかなんかの幼虫(これは本当に驚いた)、通っている小学校(今やタブレットは必須らしい)のこと、友達のこと。
以前はあんなに幼かったのに今や先導してくれる、成長って目覚ましい、すごい!と心から感じた。
公園に到着すると滑り台があった。
しかも結構急傾斜だ。
ん?あっそうかこれはわたしにもやれということか!
もう何十年ぶりだろう、滑り台の上から見る景色は結構怖かった。
下に降りたとき上手く止めれるだろうか、そんなことを考えながら言われるがままに落下した。
うっ、なんとか大人の威厳は保った形で砂場まで降りられたと思う、きっと。
ケラケラケラケラ笑われたけれどなんだかとっても楽しかった。
こういう子がいるってことは、2回同じ経験ができるんだろうなぁと思った。
なんだかいいなぁと思った。
その後、もう一回もう一回と言う声にやんわりと断りをいれ、近くの東屋にみんなで腰をかけた。
ふぅ~、やっと休めるという心の声を隠してグビグビと冷たいお茶を飲んだ。
将来の夢はボートレーサーだという。
どこで覚えたのか、目はとてもキラキラしていた。
同じころ動物園の飼育員に憧れていたわたしからしても、夢をもつことはいいことだなぁと思う。
これから色んな職業を知っていく中でこれだと思えるものに出合い、叶えていけることを願っている。

帰り道、行きには気付かなかった風景が目に入ってきた。
新築であろう洋風の一軒家の集合体、規則正しく立ち並ぶ賃貸住宅、新しくできたであろう高速道路・・・・・。
売地、空き家もちょこちょこあったけれどきっとこれらもまた素敵な建物に変わってくだろう。
わたしが小さいころよく見た和風、3世代で住んでます、みたいな感じの所はほとんどなかった。
時は抗いもなく流れて行っている。

今回、少女を通じて街、人が循環していくことを肌で感じることができた。
周りのものもそうだ。
IoT化、DX、便利すぎる家電、行政の簡略化システム。
これからも想像をはるかに超えたスピードで色んなものが変わっていくと思う。
その中で循環していく瞬間瞬間を楽しめたらなと思う。
そう簡単にはいかないかな、どうだろう、ついていくのに必死かな。
それでも水のように生きていきたい。
先のことは本当に分からない。

また彼女や少女に会えること楽しみにしている。
もうその時は滑り台に誘ってもらえないかもしれないけど、練習だけはしておこうと思う。
素敵な人生がこれからも続いていきますように。

 

 

 

侵略

 

塔島ひろみ

 
 

この土手に 河川敷に
あっというまに広がった
どこまでも伸び そして増えた
秋 気がつくと河原には
セイタカアワダチソウの黄色が
ザザー ザザーと 嵐の日の海のように揺れていた
仲間をよぼう
肩を寄せよう
この黄色が 鮮やかだから
青空に美しく照り映えるから
私より高く伸び 届かないから
密生して 群落の奥は暗いから
なにかが 隠れているかもしれないから
企まれているかもしれないから
恐いから
手をつなごう
「わたしたち」という固まりになろう

軍手をはめよう

武器をとろう

セイタカアワダチソウたちは 
荒川放水路の土手下で
夕日を浴びて ギラギラと光った

強靭なこの害草を
手に手に 打ち倒し 引き抜き ハンマーで叩き 火を付ける
真っ黄色の花粒が空に舞う
空が染まる
黄色に染まる

よく荒れるから「荒川」と呼ぶ
荒川放水路は水防のために村をつぶして作った人工の川だ
水害はなくならず
河川敷にはいま 「越水までの水位表示」と書かれた堤防高を示す棒杭が立つ
その河原で 橋の下で 
冷え始めた夕刻
ゆったりと流れる黒い水を見ながら お酒をのむ
少しの豆と 焼き鳥の缶詰 
一人が恐くて 仲間と群れて お酒を飲む 
ポケットにハンマーを持っていた
仲間たちが恐かった
川が恐かった
堤防が恐かった
堤防の向こうが恐かった
自分が恐かった
ポケットのハンマーが恐かった
セイタカアワダチソウが恐かった

いつのまにか音もなく シラサギが水辺に立ち 餌を探している
こんな夜に 汚い川辺で
武装して 冷えたトリニクを突っつく酔っ払いたちの至近距離で
たった一羽で
恐くないのか
そして 橋から離れた暗いところには 一面 あの背の高い帰化植物たちが
除いても 除いても 生き延びて陽を受けて膨らみ 伸び 黄色く花開くしなやかな植物たちが
夜が明けるのを待っているのだ

セイタカアワダチソウと太陽と水

セイタカアワダチソウと太陽と水

無防備な鳥を
ハンマーを持った男たちが静かに取り囲む
輪を縮める
ライターも持っている

いつかセイタカアワダチソウになりたくて
この水のそばに 私はいた

 
 

(10月某日、四つ木橋下で)

 

 

 

餉々戦記 (葉つきの葉と茎 篇)

 

薦田愛

 
 

スマホのタスク&買い物メモに「葉もの」と入力
なにがしか青いものを手に入れたい、と心に付箋たてる
冷蔵庫の野菜室の中身がかたよると料理ビギナー
できるメニューがたちまち見つからなくなる
(応用力が育つには経験がまだまだ追いつかないというわけ)

それは師走だったか年の初めか
寒かったころ たぶん
北摂の駅前スーパー産直コーナーは夕方4時をまわって大にぎわい
規格はずれだの一昨日あたり並んで残った青ものに次つぎ半額シールが貼られ
傍から手に取ろうと前のめりのお客一同にはもちろん私もまじっている
(だってオオサカ)
島根産生きくらげのパック一六〇円にも半額シールを認めて白黒ふたつ籠に入れ
コーナー一周こればかりは値引きの有無にかかわりなく並んでいれば連れ帰ることにしている葉つきの小かぶ三玉ひと袋一五八円今日のは徳島産をわしづかみ
白じろきめ細かいに違いない鈴菜とよばれる実は味噌汁に入れようか水菜や薄揚げと煮びたしにしようか迷うところだけれど
いやいやじつは目当てはこのしっかと伸びたひとかかえの葉と茎なのだ
だって 
だってほら
小松菜もほうれん草も高騰しているって時になんて貴重な緑黄色
葉もの はもの
だからね
握り直すスマホの買い物メモから“葉もの”を消去
レジを通って籠からエコバッグに移し替え
よいしょっと担ぎ上げるバッグはすでに鶏胸肉だの鰤の切り身だのみりんのボトルだの入っているので重い
急がなきゃ日脚が短くなったものと踏み出す肩先へ
「すみません、あの」
すわ忘れ物と振り向けば三十歳前後とおぼしき細身の女性
「その葉っぱ、なんですか?」
指さす先はエコバッグから突き出た緑の茎と葉
「ああこれ? 蕪です。かぶの葉なんですよ」
「かぶってあの」
「そうなんです。かぶ。こんなに立派な葉っぱつきなので、食べてみたら美味しくて! 
 あそこの産直コーナーに並んでますよ」と長すぎる答え
「あのコーナーですね? ありがとうございます。買ってみます」とにっこり
いやいやよりによってごくごく料理ビギナーのこのわたくしが
食材のことを聞かれるなんてと冷や汗かきかき
よいしょっとバッグをかつぎ直し
家への近道だけれど急坂へと前傾姿勢

もとはといえば最寄りの駅前ビルの図書館
レシピ本をあさってみつけたひと品は
私の目にはちょっとひねったおひたし いや和え物
ほうれん草をゆがいて絞って切ってまた絞り
そこへすりごま、かつおぶしにオリーブオイル、ちりめんじゃこを投入
ぽん酢を和えてできあがり、だったのだ
そもそもつれあいユウキが
「ほうれん草のおひたしって、なんだか時々食べたくなるんだよね」
と言うので
ありきたりのおかかのせを何度か作ってみたあとのこと
そういえばというくらいかすかな翳り
ほうれん草にはほの暗い思いが、あるといえばあるからだろうか
ついね 
くったりくたくた
ゆですぎてしまってね

五歳だったかあるいは
学校に通い始めていたろうか
常づね仕事から戻るのが遅い父を待たず
母とふたりの夕食
ならぶひと皿がその夜
ほうれん草のおひたし
ゆでられかたく絞られ
かつぶしと醤油
つまんではこぶと
鼻をつくあおみのにおい
むぐ んぐっ ぐちゃ
どれだけ噛みしめても
くちいっぱい筋っぽくて
それはつくり方のせいだったのか
そのころのほうれん草はそんなものだったのか
くちゃっくちゃっ ぐちゃむちゃ
むふう
ぼお
のみこめなくて むちゃぬっちゃ
ぼお
ぬっちゃ ぐ ぐっちゃ
ぼおお

ぴしっ 
いたっ

打たれたのだと すぐには
わからなかった だろう
ぼお
いつまで噛んでるのよっ

言われた

思っていたが
つくって食べさせたひとは
のちに
その子すなわちわたしが
テレビを見ながらぼおっとして
口が止まっていたのだと言った
血がにじんだ
かるくはたいたらどこか
くちのなかを嚙んだみたい、と

「どうしてかな、こどもの時は
 ぼくも好きじゃなかったな
 こどもの味覚じゃわからないのかもしれないね」
ガスを早めに止めて
鍋からざるへ すぐに冷水
それでもね
くったり
ぬちゃっ

ところがね
それがさ

日脚短くなる頃どこの店頭
まるい白い実がみっつに葉っぱあおあお
茎もしっかとぐいぐいのびきったそれが
かぶが
並んでいて

ざくり 実を切りはなし
実は野菜室に収める(出番は別の日)
ひとにぎりに余る葉と茎は湯がく前に
ざっくざく 大きなざるふたつに盛ってにゅうねんに水
その間に鍋にはぐらっぐらと湯
だってね
湯がいてから絞って 切ったらまた絞る
その段取りもたもたするのをひとつ減らしたい
ざるから鍋へ まず茎からどしどし
ガスは止めて刻んだ葉もぎゅぎゅっ
ややあって
念のため茎の太めひときれつまんで もぐ
ん、だいじょうぶ
ざるにとって流水 水けきりながら
オリーブオイルちりめんじゃこかつぶしすりごまぽん酢
オールスター揃いましたら
ぎゅぎゅっきゅっ
握って絞り にぎってはしぼって
次つぎボウルへ
どさどさっ
つつうっばらばらはらりぱららっしととっ

混ぜ入れまぜいれ うん
葉っぱは嵩が減るよね でも
茎はもりもり
すきとほるあさみどりの茎が
かつぶしとすりごまをまとって
きれい

ばりっ もぐっ んぐ
噛みごたえあるよね
「ああ、これはいいね。
 ほうれん草よりこっちがいいな」
うん、おいしい

かくして
白い実がまだ野菜室にあるうちに
次の葉つき小かぶをとくとくと持ち帰る
かたよるにも程がある
季節の幕開け

 

 

 

落選

 

工藤冬里

 
 

ロシアではアースされていた
日本でそれを感知した

感情の雷親父
きみ(俳句)が悲しいから雨が降るんだよ
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1452681393335455744?s=20

次手に太陽も食べられる高さにあります
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1452666294117961731?s=20

義務化されれば従いますがそれまでは自由意志を行使します
さらに義務化されても従えない部分もあります
重要なのはそこだけで、
それ以外の幼児の色分けは角谷の言う足の裏に貼り付く一円玉や五円玉のように私たちの価値にべったりと貼り付きます
 

ユーチュー舞踏
というのをやっています
室野井が死んでからですからもう三年半がかりです

踏舞ーュチーユ
すまいてっやをのういと
すでりかが半年三うもらかすでらかでん死が井野室
 
 

月光は温度を下げます
冷えたライムを寂と言い
歳を食ったラッパーはその径を辿ります
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1452651198784303112?s=20

俎板の恋であってはならぬ
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1452696494180421633?s=20

眠りが浅い時は自分を殺せば夢が前に進んでゆく

GOsの動きに合わせたover the rainbowの最初の跳躍

堀モータースというガレージがあればメンテはそっちに変えてもいいよ

He pecado contra ti, sobre todo contra ti

NYの展示は3日からだそうです
https://youtu.be/aCmlEtFToeE

こうあってほしいと思うことを数式で説明しようとする科学と同じように、歴史に関しても他の選択肢のある限り逆説に留まろうとして迂回を続ける。手紙の言葉を信じなくなることによって未来は断たれる。

Queremos ir con ustedes
 

鶏頭の十四五本もありぬべし 子規
 

26 and died


銅​を​金​に​、鉄​を​銀​に、木​を​銅​に、石​を​鉄​に​、平和​を​監督​と​し、正義​を管理​者​と​する
金銀銅鉄木石の順か
 

Notamos la expresión inspirada de la verdad y la expresión inspirada del error

https://twitter.com/Cafeoto/status/1453691834207703042?s=20

We will now be living in a temporary virtual paradise
https://twitter.com/therecount/status/1453789257521315841?s=20
https://youtu.be/kt0jVDeu2Qc

https://twitter.com/twisuspendead/status/1454669167311740932?s=20

俺がまだ生きていたらという耳で俺以外の二楽章を裁断するベトちゃん案外ポーツマス的なのも良くないか?いやダメだベルリンもウィーンも土地がなってるだけだリスト編曲は偏屈な東洋リズムを細かく伝えれば済むってもんじゃない要はお前らは俺じゃないってことだ。

14:44 https://youtu.be/-4788Tmz9Zo

 
 

落選

俺は落選した
ムサシも効かなかった
岡山駅前のムナシも潰れた
無惨の造形には甘さがあった
民主主義的の方法で俺は落選したのだ
多数決で!
多数決じゃない一対他全部だ
三分の一が俺の尾で払われたものの
三分の一は
ワクチン打って鬼殺隊
ヒットエンドラン
ヒットエンドラン
ワクチン打って鬼殺隊
民主主義が最終政体として教え込まれている限り左右はその掌上で踊るだけだ
九条に対して
出産は身体が巻き込まれる暴力であり
病める血液が民主主義から零れ落ちる
私は彼より強い
ではなく
私は彼より正直だ
と主張する場合
裁判は時間を要する
自民はしばらく支配している
一貫したテーマは国家である
ツルツルと変換するな
小野の岐れ路のつまらない借家の
ブロック塀に国家が綻ぶ
枡目の中で綻ぶ
乱暴な巨人が白茶ける
神は化石を創造した(ジジェク)
患難から這い出して来ない人々を抱きしめる
バイデンがPopeを抱くように
第二の死も意味はない
綿から目鼻口が覗く
羊毛の汚れは捨象されている
家の軋む音は断続している
剪定しなければ実をつけない柿のように
未だに市民と言う木の市
共通点がなければ市民の交感はない
窓の向こう、干した綿のタオルが乾いて揺れることや外の気温をナメクジやサカナと共有するのだ
巻尺で測る頭のデカさに太いミサイルが配備されるインド
一層親しくなれるコックピット
移動してから気がついた
酸化の白の脳の表面の陰影
可愛いけれど顎のない輪郭
顳顬に鎧の鍔
中の人には言葉がなかった
岐れ路の絵を化粧台に貼る
吊られたマスクが揺れる

葛の巻き付いた引込線から火花が出ている
たまに風が吹くと電球が点滅する
ブレーカーを切った方がいいのは分かっているが本を読んでいるので

近江八幡7日合奏用


美大によくあるトランスパラント症候群
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1454583967789637640?s=20

クラゲと共にやってきた
ヨン・ヤ・サ
https://twitter.com/NagautaLyrics/status/1454583659936174086?s=20

 
すげ替えてもすげ替えても全員不合格となれば人を裁ける人はいないということで落ち着くんじゃないでしょうか
あとは駆け込み寺なき復讐の地獄になると思うでしょう奥さん
ところがそうはならないんですなこれがまた

金木犀二度咲くことを知らぬ人

多数派は存在しない。批判の多さでその数が推し量られるだけだ。
しかし石を投げて敗北できた時代とそれ以降を比べて、どっちが充実感あった?投石すべきは海馬ヴァーチャルである。

 

 

 

#poetry #rock musician

悲しみ

 

たいい りょう

 
 

深くうな垂れている
疲れているのか
それとも 悲しみに
慄いているのか

手が顔を覆い
腰を老人のように折り曲げ
深く椅子に沈んでいる

悲しみは癒されようもない傷として
深い淵の中に
心を落としている

いつまでも いつまでも
降り続いてゆく
深雪のように
彼岸へとさらってゆく

 

 

 

褪せた水色と白のストライプ、血痕

 

村岡由梨

 
 

1. 娘A

 
楽しそうに話す学生たちの声。
キュッキュッと忙しく歩く上履きの音。
「学校」という色々な音が渦巻く空間の中心で、
ひとり孤独感を募らせた、娘。
特に誰かに悪口を言われたわけでも、
意地悪をされたわけでもない。
鳴らないスマホ。
周囲の友達の、悪意の無い無関心。
自分という存在が持つ意味がわからなくなって、
娘はやがて、呼吸の仕方がわからなくなった。
そして、学校へ行けなくなった。
もちろん、それだけが理由なのでは無いのだろう。
理解のある面倒見の良い先生。優しい友達。
誰も悪くない。だから辛い。
「高校3年 大学4年 仕事を始めたら40年」
「今、選択を間違えたら、この先大変なことになりますからね」
オンラインの特別ガイダンスで声を張り上げる先生たち。
それを虚ろな目で見る娘。
思わず抱き寄せると、
体が静かに震えていた。
将来のことなんてわからない。
考えたくもない。それなのに
カチカチと無情に時間を刻む時計。
カチカチとカッターナイフの刃を出す音。
切れ味の悪い刃で、娘の白い皮膚が裂かれるのを見て
悲鳴をあげる。

 

「自殺したい」
親が子供にそう言われる苦しさを思い知りました。

そう言って診察室でうなだれる私。
「今はたくさん甘えさせてやりなさい。」
先生はそう言った。

娘が「ママさん、ママさん」と言って無邪気に抱っこをせがんでくる。その無防備な二つの胸の膨らみに、抱くのを躊躇う私がいる。これまで母親のような役割も果たしてきた夫に娘が抱っこされるのを見て、戸惑う私がいる。父娘が抱き合うのを見て、男女の性愛を思い浮かべてしまうのだ。うなされ苦しむ娘の声を聞いて私は、女である私と母親である私との間を右往左往する。これは育て直しなのだ。甘え直しなのだ。ぎこちなく娘を抱き寄せて、背中をさする。「ママさんって、いい匂いがするね」しばらくして抱いている手をゆっくりとほどいて、娘を寝かせて、手を握る。娘がどこか遠くを見つめて言った。

「ママさん…ママさんは近いのに遠いね」
「そう?」
「うん。近いのに、遠い。」
「そっか…」

そんなことないよ、とか
遠くなんてないよ、とか
そんな風に娘の孤独を受け止められる母親に、
これから私は、
なり得るのだろうか。

 
 

2. 娘B

 
夜遅くに塾が終わって、
突然の雨で全身びしょ濡れで帰ってきた疲労困憊の娘が
怒り任せに、こう言った。
「何でこういう時に限って迎えに来ないの」
「死ね、毒親」

 

「死ね、毒親」

 

かわいいとか愛しいとか、かけがえのないとか
そういった熱を帯びたような感情が、
すっと冷めていくような気がした。
こんなことくらいで感情が冷めていく、
自分の心の脆さが、こわかった。

「冗談だった」と言ってくれた娘。けれど、「私の知らないところでも、私のことを毒親だと嘯いているのではないだろうか。」自分の子供のことを邪推する。他人から悪い母親だと言われるのがこわい。いつかひどい言葉で傷つけられるんじゃないかと警戒する私がいる。自分自分自分吐き気がするような自己愛に耽溺する私。それを軽蔑する娘たち。自分自分自分自分自分自分自分自分いくら人から作品を認められたって、二人の娘の心に響かなければ意味がない意味がないもうどうすればいいのかわからない。自分という存在に意味を持たせようと必死だったけど、意味がない もう意味がない 自分の都合のいいように娘たちを解釈しようとする私 後ろめたさ いい母親ぶっていること 全て見透かされている

 
 

3.

 
ある日、私たち家族は、窮屈なベッドで眠っていて…
身動き出来ないほど、窮屈だった。
その時、まるでフラッシュバッグのように私は
2017年に訪れたアウシュビッツ(オシフィエンチム)で見た光景を思い出したのだった。
ぞっとするほど冷たい手で心臓を握りつぶされて
引きちぎられたような衝撃だった。
気がつくと、私はアウシュビッツの収容棟にいた。

モノクロではなく、鮮やかなカラーの光景だった。
私は、褪せた水色と白のストライプの囚人服を充てがわれ、
たくさんの囚人たちと同様、「名前を奪われて」、
一緒に収容棟へ入れられた。
寒い寒い夜だった。
古びて煤けた粗末な二段ベッドで痩せた体を押しつけ合い、
互いの体温を分け合いながら、
身を切るような寒さをしのいでいた。
生きのびるために
生きのびるために、自分以外の誰かの体温が必要だった。

ある日、一人の看守が一人の囚人を表にひきずっていった。
間も無くその囚人は頭を撃ち抜かれて死んでしまった。
地面に広がる赤い鮮血。周りにいる人たちの無関心。

夢から覚めて、
その血の赤さを思い出して
これまで「詩」という名の暴力で
娘たちの「名前」を奪ってきたのではないかと思う私がいた。
ただでさえ生きづらさを抱える娘たちを
自分勝手に振り回して、
私は今まで一体何を思って書き続けてきたのだろう。

過去の何もかもを消してしまいたい。
でも消したくない。
娘たちが許してくれてもくれなくても、
無条件に人を愛せる人間になりたいから。
娘たちになら、頭を撃ち抜かれて死んでも構わない。

けれど
生きのびるために
私たちは「名前」を取り戻さなければならないのだ。
生きのびるために
人は、自分以外の誰かの存在の温かさが必要なのだ。

生きのびるために
生きのびるために。

 

 

 

見てた

 

さとう三千魚

 
 

そのひとは
いまも

リビングのベッドに横たわっているのか?

なにを
見ているのか?

庭の
花を

見て
いるのか?

戦争も
空襲も

見たのか?

60年代も
70年代も
80年代も
90年代も
2001年も
2011年も
2021年も

見たのか?
見ているのか?

過ぎてゆくか?
過ぎ去ったか?

この世か?
この世のこの身か?

今日
優しそうに

見えたよ
看護師さん

この男は
2回目の筋肉注射を打ったよ

打って
もらったよ

15分間
タイマーを

渡された
熱帯魚が泳ぐのを見てた

眼が
まるい

鱗が青く光る
水草を口先でつついた

見てた
見ていたよ

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

断捨離の中の思い出と向き合って

 

ヒヨコブタ

 
 

みながすなる断捨離といふものをわたしもしてみむとてするなり

探しているぬいぐるみがきっかけで
いろいろなものをお譲り頂いているうちに
もくもくと片付けを始めた
こういうときは勢いが肝心

私の少しのスペースを占拠しているものをあらためると
箱のなかに箱があり、さらに箱がある
鞄のなかに鞄があり、さらに布の袋やポーチが発掘される
これは面白いといいつつ、少しばかりあきれる
どこへ行ったかと探していた木箱が見つかるとこころのなかでガッツポーズをする始末だ

思い出だけを着た服は
もう何年も袖も通していない
誰にも着てもらえないものと思い出にはさようなら、ありがとうと言葉を掛ける

ひとつ物を買ったらふたつは棄てなさいと
あまりに厳しく言われた昔
潔癖なほど私のまわりは整っていた
病的な子どもだった
もし母がこのじょうたいを見たなら
怒り狂うのではないか
容易に想像できて、少し笑ってしまうのだ

わたしのもの集めは昔からだ
よく石ころに愛着をもち撫でてポケットに入れては帰る
地面に字が書けそうなものを探す同級生には
変人に見えたろう
まだそれがなんの石ころなのか習う前に
墓石の欠片をキラキラとながめたり
ひとさまの庭の石を持ち帰ったのを父にとがめられ
それが高価な石でわざわざ敷き詰めてあったことを教わったときには驚いた
こんなに素敵な石がたくさんあるというのに
大人はお金を出して買うのかと
子どもには不思議でしかたなかったが
こっそり返しにいった
その家のひとは笑って、ひとつくらいいいのだと言ったが
頑なに返すと粘った
さようなら、キラキラの白い石
じぶんの家の玄関までの飛び石のあたりの石も買ったものだと父は言ったが
もっときれいな石にしたらいいのにと
言いかけてのみこんだ

箱の中のまたその中の箱にメモを見つける
鞄のなかのそのまた鞄のなかに少し先のじぶんへの手紙がある
苦しいじだいのじぶんからのメッセージだと思い出して
別の箱にまとめる
まだ開くには早すぎる手紙だと

大切な思い出だけは棄てぬようにと
とある人に忠告されながら
大切とじゅうぶんな思い出を分けていく

ありがとう、さようならを分けていく

 

 

 

さ_ち

 

工藤冬里

 
 

Vamos a un lugar retirado para que descansen un poco
ロンドンの新しさはいつも延命としてある
英米の中の出来事に風穴を開けるふりをし続けてきたのだ
騙しおおせなくなったSNSのようにそれらは明るみに出される
タイムラインをネタに思考が進行する事態から抜け出さなくてはならないがそれは龍であってはならない

もう意地悪ぐらいしかすることがなくなったんだよ
https://twitter.com/_YukioHakagawa/status/1450431173570613250?s=20

俺は喪主
復活させた後無茶苦茶になる劇を抜け出てトイレに行くとドアしかなく
男を開けると女
女を開けると男
メッシュモッシュ
自分らだけ生き残るとか言う話じゃないんだ
そこから出なければ誰も生き残れないと言ってるんだ
復活したらバビロンだったというお粗末
業界の消滅と目玉焼アンダーグラウンド
脳書きを垂れる
能下衰退
注視していく
虫垂炎艦隊
猫に中露
チロチロ満ちろ
しっかりっ ngea
やっていくっ

北に到達するには南へ向かわないといけないし眼は螺旋に付き合うのでこれはどうにも八幡浜の大変優れた直感である
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1450476883196346368?s=20

馬鹿かこいつ
ってはっきり言ってやれる奴が居ないのが不気味だ
https://twitter.com/borges_bot/status/1450485790836879360?s=20

meme
そもそもは4Gの中もそもそ動いていた
そもそも耳鳴りはシャーッという空ミミズに脳が耕されてゆくカルチャーだ
下ってゆくアルジャーノンはアルジャジーラが懐かしい
米大陸水没後ムジャヒディンは様変わりしたのだ
プリーズミスタータリバンマン
銀座の宝石店は5Gですか
ティファニーを送りつける手足

園児の服に背鰭が付いていた
リュックに付いているのもあった
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1450597705860796421?s=20

おれはねる
くらゐのことし
かできない

それもりつぱな
とくぎでせうよ

Nunca se angustien
案ずるとangustienは似たる 哉

死にたいのは悲しいからなので、対処法としては身体でゆっくり悲しむしかない。

https://youtu.be/-puYg7L63GA

名前
名前
名前(遺伝子組み換えではない)
名前

納豆(なっとうではない)
納豆(なっとうではない)
納豆(なっとうではない)
納豆(なっとうではない)

死なない人を選べ

それがどうしたボルヘス。悲しくない国なんてないよ
https://twitter.com/borges_bot/status/1451089805295579141?s=20

さち
 ^





しレLく>
分け目が二八
うラそ
重力はない
た ナこ に しこ
言葉を食べる
しよ は ま6
閉架の異端本のみを食べるさち
ぬねめねるみ6
兵の数や金を数えてはいけない
さち
目先のことで喜べ
く巛
その町は今でもエブスという

世界はすぐそこに迫っている
ひ⊆⊇Ω
大きな木があったが切り倒された
わゆQ
数の落差でエレキが起きた
をぅっち
エレキテルてきれえ
んく
 つ
夢のまた夢より目先の掟破り
さち
 ゜
ニックランド亀之助
ロ口
 ▽
目​の​前​の​物​を​楽しむ​方​が、自分​の​欲求​を​追い掛ける​より​も​よい。これ​も​また​むなしく、風​を​追う​よう​な​もの​だ。 ecc6:9
ろ&
 っ
牛タンみたいだった下林のマニフィークの三元豚
Siri, 三元豚って何?
り.リ
 ゜
年収百万だが社長から二千万委ねられた二人目のリーマンの目先の娯しみとは委ねられたことそのものへの愉しみであった
well done 二人目の奴隷
やつ
 ゜
君が望むなら
生命をあげてもいい
恋のためなら悪魔に心
渡しても悔やまない
-西城秀樹「情熱の嵐」
ほ しま い しゝ
高台豚じゃん
あっと驚く大三元
くく》
 ‾
一生懸命働く充実感
〆∂
  ゜
揺れる洗濯物
さち
 ^
幸子の幸は土に¥

 ¥
達成可能な別の目標
さ ち
 ⌒
家が水族館
さち
  °
打ち込む楔
<く
 ^
卵型ウルトラマンが獲ったリスを吊している
6 ∂
 ^
パチンコで二千万使って目指す人格を身に着ける
〉∠く
パンを焼いて持っていく
/ヽ しヽ
はい
∠ ∠
 ⌒
落胆reluctant
し∫
後ろには大砂塵
上も下も数としてのタラント
前は海
⊂_⊃
額 ピーナッツ ひょうたん島 ダンディー宍戸錠 サンデー先生 ドン・ガバチョ
唄は中山千夏
∈ ∋
 ^
マニフィークの庭は一面ルコウソウだった
≫∠≪
八角、丁子、クミンで
£ 〻
  ̄
筆の勢いが南蛮
口ロ
tramより連絡ありジェイコブとの横浜のやつ、いままで公開していましたがこれからは限定公開になるそうです
https://youtu.be/fzAJPKJia1I
コ][
  ○
無精・と無精は違う 哉
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1451322472553349120?s=20
さ_ち
joy divisionは音楽ではなかった。それは世のジュヌスの断片を、絶望を基に組み上げたものだった。
環七ラーメンはラーメンではなかった。それは構成要素として不可欠なものとして前提されていた塩分の調整を客に委ねて放棄していた。
ラリーズはバンドではなかった。スーサイドと同じ態度で発案される
ベースラインと、手持ちの歌詞の組み合わせが自由であったことは、それらが「曲」ではなかったことを今思えば示している。
というわけで、joydivisionと環七ラーメンとラリーズはロックであった。
さち
  ^
相手から見た自分の映像が即座に思い浮かべばドラッグは要らない
さらに自分から見た自分の映像を思い浮かべることができるならセッションも要らない
歩行のセロトニンがあればいい
ほろほろ飲めばほろほろと
断腸ね
さ ち
  ⌒
木を組んで縛って干せるかな?ナブッコ気取りだとわめくだけだが
https://twitter.com/tomizawakakio_b/status/1451654629389832196?s=20
さち
  °

ルコウソウ

野獣が娼婦を攻撃する気になる青天霹靂に、数年前からの気候教の流れがマージしてきた。SDGsとかフリーエネルギーは布石に過ぎない。

Mis siervos gritarán de alegría (Is. 65:14)
この仔犬的alegríaを考えるとアレグロは速く弾くのではなく喜んで速くなるという感じですね

紙一重仲良くなるのと食べるのと

 

 

 

#poetry #rock musician

僕の普通と君の普通

 

有田誠司

 
 

君は朝起きて顔洗って歯を磨く
トーストと珈琲
仕事に行って帰宅して
家事を済ませて風呂入ってまた眠る
毎日こんな感じの普通な日々

僕は病院のベッドで目覚める看護士さんに支えられ車椅子に座る

左手足は僕のものだけど僕の意思では動かない
目もあまり見えない
二重にボヤけた世界が見える
左耳は聞こえなくなった
1日のほとんどをベッドの上で過ごす
許されてる事は
窓から外を見る事と
夢を見る事
毎日こんな感じの普通な日々

見た目はいたって普通だよ
周りの人達にはわからない
先生も言ってた
だって手足も付いてるじゃないかって

だけど僕のものじゃない
無かったら良かったのにね
それなら皆んな直ぐにわかるもんね

普通じゃないけど僕の普通

君は普通だけど普通じゃないよ
だって君は何処へでも行けるのに何処にも行かない
背中にある羽根に気が付いてない

勿体ないね 僕は少し笑った