ひきうす

 

廿楽順治

 
 

わたしの首に掛けられたこれを
なんとみますか

(天下ごめん)

その指先を水でぬらし
わたしの舌を冷やしてください

ぜったいやだね

ふたりの女がうすをひいている
きょうも
なんか命が重たいあたしたちさ

死人のなかから
よみがえってくるものがあっても
(pha!)

この世界の傷はずっとむこうにある

これをみなさんは
(pha!)
いったいなんとみますか

 

 

 

loyalove

 

工藤冬里

 
 

返せないので死ぬしかなくなった
死んでも7対3のケイ素とアルミナと微量のアルカリ土類金に戻るだけだった
骨壷にはカルシウムがギザギザ溶けずに固まっていた
オリジナルと遺伝と後天、三種ある返済方法の全てに当て嵌まる肉は
なかったことにする勾留の晴々
生き返ったら美術はダサい教育を受けるだろう
想像力において不法の人
まことしやかであればあるほど
数式の結構は伽藍であった

 

 

 

#poetry #rock musician

がらん屋のエーコさんが好きな花だと言ったから ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 124     hirose さんへ

さとう三千魚

 
 

風なんだ
という

アネモネの青く
咲いていた

この世に
灰色の猫がいる

ふたり
いる

眼が
青い

六十年が過ぎた
風が吹いていた

ブロック塀の下にいる
咲いている

 
 

***memo.

2025年4月21日(月)、
高円寺の仮宿

jkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkhyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyk

kkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkk
kkkkkkkmu

ooooooooooooooooooooooooo
999999999999999
999999999999999999にて

灰色の猫の”路地”さんとともに書いた”無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 124個めの即詩です。

タイトル ” がらん屋のエーコさんが好きな花だと言ったから ”
好きな花 ” アネモネ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

犬猫ツインタワー

 

佐々木 眞

 
 

昔々、大風が吹けばたちまち吹き飛んでしまうような、とんとバラック仕立ての犬猫ツインタワーがあったげな。

犬ビルの社長は、犬博士。猫ビルの社長は猫博士。世間では2人の博士を犬猫の、いや犬猿の仲だと噂しておりましたが、それは表向きだけのこと。ほんとは2人の博士は大の仲良しで、時々社長室の窓を開け放って、資生堂の「ナナチュラル・グロウ」をアカペラで唄っていたのでした。

犬猫ツインタワーの中には、それぞれ大きな事務所があって、それぞれ全世界の優良会社から派遣された100名の社員がデスクに陣取り、朝から晩まで、仕事のような、遊びのような仕事に従事しておりましたが、中には「あたし、墨田区のタバコ屋さんで働いてたのよ」と告白する中年のオバサンもおったげな。

そんなある日のこと、犬猫2人の博士がそれぞれ発表したラテン語の年頭所信表明の文書が、ふたつながらに意味不明なので、ミラノのスカラ座宛にファックスを入れたら、たまたま居合わせた指揮者のトスカニーニJr.が、たちどころに解読してくれました。

それによると、犬博士は「能登地震の被害から立ち直るには、世界最大の地震国イタリアに学ぶに如かず」と説き、これを受けて猫博士は「紀元62年のポンペイ地震とその17年後のベスビオ火山の大爆発を、テッテ的に研究せよ」と論じておったげな。

ようやく懸案の謎が解明されたので、犬猫ツインタワーの200名の全社員は、ビルヂングの窓を開け放って、例の資生堂の懐かしいCⅯソング「ナナチュラル・グロウ」をアカペラで大合唱したんだとさ。

するとどうでしょう。

その時早く、その時遅く、どこからともなく大風が吹き付け、と同時に犬猫ツインタワーを揺るがす震度10の大地震が天地を揺るがしたので、2人の博士と200名の社員たちは、ガタンガタンと大揺れに揺れる地上100メートルのツインタワーの窓から、全員大空に向かって投げ出されたのでした。

とっぴんぱらりのぷぅ。

 

 

 

こぼれる

 

村岡由梨

 
 

「白いキャンバスに最初の絵の具を塗り付ける時は何時でも
一瞬、絵筆が、躊躇するの。」
まるでママが、出だしの言葉を躊躇するみたいに?

君が、逆さまにしたワイングラスから雲がこぼれて
空へ昇っていく絵を描いて、
「青空を青く、草原を緑で描くのは安直すぎ」
って先生に言われたそうだけど、
ママは、この優しい絵が好きだよ。
君は今、こんなにも優しい世界で生きているんだね。

「昔の身体をガブガブ食べて、わたし大きくなった」とか
時々突拍子もないことを言う君だけど、
真っ直ぐな気持ちで、
青空を青く、草原を緑で描いた、君の揺るぎなさ。
絵の具だらけの手で顔をこするから、
いつも、顔中、絵の具だらけ。
自分にしか描けない絵を追い求めて
何度も悔し涙の海に溺れて、
無責任な人たちの言葉に
気持ちが壊れてしまうこともあると思うけれど、
君がどこまでも自由に、
自分の描きたかった絵を見て嬉し涙をこぼすまで、
おぼれる こわれる こぼれる
とことん付き合うよ。

そんなことを考える私
の姿を描く君
の姿を詩に書く私
グラスの中の雲を飲み干したら、
私たち、空を飛べるようになるのかな?
そんな風に考えて
二人顔を見合わせて、
思わず笑みが、こぼれる。

 

 

 

 

“from a summer to another summer” を聴いてる

 

さとう三千魚

 
 

昨日
女は

仕事を休んで
ランチに誘ってくれた

死んだモコの詩で
地方都市の賞を貰ったから

お祝いなんだろう


遅く起きて

立体駐車場にクルマを停めた
デパートで赤福とメロンパンを買った

それから
ホテルのレストランに

入った
バイキングというのか

料理を皿に載せて
テーブルに

持ち帰る

客はほとんどが
女のひとたちだった

野菜サラダを山盛りにして食べた

アイスも食べた
珈琲も飲んだ

ガザの人たちが
支援食料に群がる光景を思い浮かべながら

食べた
満腹になった

午後
帰った

ベッドに横になった

夕方に起きて河口まで走った
風が強く吹いていた

詩を書かなかった

それで
いま

工藤冬里の
“from a summer to another summer” を聴いてる *

“それにしてもほんとの夢は” *
“それにしてもほんとの夢は” *

そう繰り返し
工藤は歌を終わる

かつてわたしの夏はあった
いまわたしたちは別の夏を生きる

夏はわたしのものでもあなたのものでもない

 
 

* “from a summer to another summer”は工藤冬里のワンマン「2004.5.5 裏窓」 の7番目の曲です.
https://torikudo.bandcamp.com/track/from-a-summer-to-another-summer-4

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

pâque

 

工藤冬里

 
 

親指から裂けながら
コラージュ主体の世界線で
濁りのひかりのフォントを運ぶ
土の器の
土にではなく入れて運ぶものに器の価値があるのであって
川沿いにじわじわ行きよってえなsouvenirとして
なんか踏んだ?
いや、あのフラーの家今日招待状持って行った
ほうなん?野球は?
黒銀河にアザゼル
突き落とすんやっとおきやいわれて
やっといちゃらいゆうてはみたんじゃが
わしが身代わりでえんけ
いくまいげ弁償できまいげ
見とおみミカン山に立っとらい
まーえにきしゃない牡丹色の病院があったろ
やめやめ数え切れんて
ミカンもうやめたけんな
ほうよ要介護2ーよ
デイは週2行きよらい
今から結婚てて
養子に入ったんじゃけんど
発酵もせんもんで
われてしもとらいの
マックに人肉混ぜよらい
埋めても烏がつつきだしよるけんの
葡萄茶と青緑の
言語を撫ぜるように杯は回され
黒銀河に消えていった
回転する言葉
シャコ色だな
白黒の

 

 

 

#poetry #rock musician

再会funfair

 

工藤冬里

 
 

20年
old faithfulな間歇泉は
怒りの専心を溢れていたのか
きみは高潔​を​歩ん​で​い​たか
自分で自分を精錬するのは難しい
集約を閲覧し花粉を憎み潔白​を示している
家を愛しているきみは平らな場所で7回ワクチンを打った
すき家のネズミのように、あの頃
ワンオペだから差が開いていったのかなあ
賢さは死体の色
奈良か
一人殺したことに比べればネズミなど
自分の中foremostで三権分立
司法の武器化
あれ?マニュアルのレバーがどぎついバーミンガムの紫緑方言が北へ
I am the foremost
親指で塗り消し
died for nothing

 

 

 

#poetry #rock musician

アザレアの花束は偽りのバラか ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 123     harutaka さんへ

さとう三千魚

 
 

花びら
やわらかい

清らかな
白い

捨てることができなかった

うすいピンクの
花びらの

憎悪は
愛は

流れていた

ロミオは毒を飲んだ
ジュリエットは短剣を刺した

憎悪と
愛とは

血の色をしている
薔薇が咲いている

突堤の

先で
男は

喇叭を吹いている

 
 

***memo.

2025年4月7日(月)、
静岡市「サンビエントカフェ(旧みろくさんぶ)」での”向井千惠ソロ”の後で”無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第36回を行為する予定でしたが、翌日の夜に自宅で書いた123個めの即詩です。

タイトル ” アザレアの花束は偽りのバラか ”
好きな花 ” バラ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

カルダモンの雨

 

工藤冬里

 
 

添加物は
刑事施設の
彼は誰いろの壜に入れられ
渇きの発泡のひと口を
ヴィーガン麺の所為にする

火事で空気が焼けた土筆のように濁っていて道前の平野が嚥下障害を起こしかけている
点滴の針も刺さらなくなって「アンパン七つ食べたい」と言いながら
先に死んだエイズのネコを年金のないこの家の庭先に朝埋めて
わざと荒らした庭の楮(コウゾ)の切り株に白旗のように夜具を引っ掛ける

「ささやか(でない)地異は そのかたみに
カルダモンの雨を降らした」

被施術者からのオキシトシンを浴びたいが
澱んだ隣町を見て石灰化は進み
充電式バッテリーは爆売れした

人は地上に増えるべきだ
死を殺すか殺すことにおいて死ぬか
自分を愛するように殺すことを死ぬかともかく
夫は妻を殺すことにおいて死につつ妻は夫を死体つつ
夏とはいえど片田舎
Ransomを殺し進化を弁償する
ヴィーガンラーメンでは無理だ
嘘でもいいじゃんという春のコンクラーベは
連邦裁判所に提訴された
弟子の介錯では証明されない
火消しに躍起なのは分かる
出かける時はメジャーを持っていけ

 
*ささやかな地異は そのかたみに灰を降らした 
「立原道造 はじめてのものに」

 

 

 

#poetry #rock musician