「株式会社」の表記について

 

工藤冬里

 
 

行員にはハイとイイエが籤として心臓の上になければならなかった
賽を投げて出資を決めるのはいいがそれを心臓の上で行え、ということだ
裸は恥ずかしいものではなかったのに
煩沢、お前のせいで肌の露出を避けなければならなくなった
社名を彫った宝石を縫い付けるには台座がいるな
リネンの格子縞は上品で柔らかい
必ず黒字ビール化しますと言った糸の色覚えてるか
その色のダウン滋味ペイジの「株式会社」と「有限会社」の表記の仕方に違いがある。(株)と㊑,(有)と㊒だ。
お前は特に考えることなく,どちらの表記でも構いませんと伝えていたようだが、「株式会社」が会社名の前に付くか,後ろに付くかの違いがあった
例えば、◯◯(株)の場合は,株式会社◯◯となり,会社名の前に付く
◯◯㊑の場合は◯◯株式会社と会社名の後ろに付くんだ
有限会社についても同様になる
知らなかったじゃ済まされないんだよ煩沢
だから「ピッグアップル」の入居者の表記の仕方は,カッコいいで表記されている場合は,社名の前に(汗)と記入
丸で囲んでいる場合は,社名の後ろに(怒)と表記しろ
手巻きでリスカを作成している刺繍師には,李香蘭に「後」「前」と記入させろ
電子化はしばらく中止だ。確認後,修正したPDFファイルを改めて送る
煩沢、お前の確認不足で余計な手間を取らせたんだぞ土下座くらいで済むと思うなよ

 

 

 

#poetry #rock musician

The deer fall a prey to the lion.
その鹿はライオンの餌食になった。 *

 

さとう三千魚

 
 

deer migration

I received a postcard

the photographer probably took a trip to the north

there
there were deer

the deer
will cross

will cross over the snow

listening to the sound

the two ears are moving alternately

the deer would have seen

the deer
would have seen this world

deer cross

The deer fall a prey to the lion *

 

 

鹿渡り

という
葉書が

届いた

写真家は北への旅を撮ったのだろう

そこに
鹿たちがいた

鹿たちは
渡っていくだろう

雪の上を渡っていくだろう

音を
聴いてる

ふたつの耳が交互にうごいてる

見ただろう

鹿たちは
この世を見ただろう

鹿が渡っていく

その鹿はライオンの餌食になった *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ニクの解凍

 

サトミ セキ

 
 

わたしは新妻、スーパーで五百グラム千円「お買い得の牛肉切り落とし」を見つけ、よしと気負って買い込み、肉じゃがやニンニク芽炒めに使ったはいいが、五百グラムそれしきではなくならない。
冷凍したのは五日前、さあ解凍と電子レンジの扉を開けたところ、わたしは監視レンジ、透明の扉にいま夫ちょっと前まで独り身男十年分の、なめらかソース海老グラタン、ガーリック風味強化鳥唐揚、ひき肉と洋野菜旨味ミートソーススパゲティ、大好物の油と脂がベッタリと黄色い層になり電子レンジ、天使レンジにこびりついている。
天使レンジがわたしへのゴングをチンと鳴らして、外に出たニクは白い深皿の中で血を流している。薄切りニクと呼ばれてニク屋で売っていたこれは、むかしウシだったのだ。ウシのかけらを白い皿に入れたのが間違いだった、でも新婚の家には適当な大きさの深皿は白しかないと決まっている、ウェディングドレスをクリーニングに出さなくちゃ、サスペンスドラマで殺される美女は必ずああああ必ず純白のドレスを、血しぶき、血が白い深皿に溜まって臭う。
白い皿の中のちゃぷちゃぷニクを引き出して、生温さに吐きそうになりながら、錆びた独り身男のニク包丁で、ああ切れない、ギルギルとちぎりむしると白いプラスティックの独り身男のまな板傷、何切ってきたん、が血の色に染まる。これは死んだウシの血なのだ。
この間しゃぶしゃぶが突然食べたくなって、いえ、退屈な会社帰りにフェィスブックに冷やししゃぶしゃぶの写真が載ってたから、近くのニク屋でしゃぶしゃぶ用の肉をください、と言うと、ニク屋はちょっと待ってと口ごもって、ケモノの死体保存庫から、ウシの大きな腕、血まで凍った真紅が霜を振ってる腕を重そうに取り出して(腕なの脚なの)、スライス機械にかけた。いつからパーツになってウシは保存庫に入っているのだろう。
水のようにサラサラの薄い、だけど臭い血を台所に流しかけ(今日のわたしはサラサーティ)、ちょっと間違っているのではと思い、そう、これは丸い便器の中に流すべきもの、そうすれば、全然吐き気はこみ上げない、真っ白の可愛い形に真紅がよく似合う、ヒトの血に慣れてる便器の中に流せば、ウシの血の臭いもきっと日常になる。台所だから吐きそうな、吐きそうになったギルギルちぎりニクで作った肉料理完成する、甘い声で食卓へと誘なう、たぷたぷと十年分のコンビニ脂が積もる腹を揺らしながらやってくる、さあ食べるのよ、わたしの夫。

 

 

 

stanza

 

工藤冬里

 
 

一つの詩を書くのに二年はかかり、長編小説一つ分くらいのエネルギーが要る
問題はそのためにもう千年生きてしまっているということだ
サックスで命を削るというのは嘘で、増やしているだけだ。
死んだのは単にクスリを飲み過ぎたからだ。
一日を一秒にすればきみも長く生きられるよ
二〇一九の電話帳で
行政機関や会社、商店を 探して、
手紙を書く、
あなた方はいつか私を憎み、
殺すだろうと
一つの手紙を書くのに時間はかからない
時計の時間と同じ長さの時間がかかるだけだ
二〇一九の電話帳で
行政機関や会社、商店を 探して、
手紙を書く、
あなた方はいつか私を憎み、
殺すだろうと

 

 

 

#poetry #rock musician

So much for today.
今日はこれでおしまいです。 *

 

さとう三千魚

 
 

last night

“Mikawaya” was vacant

always
I couldn’t enter because it was full

many times
I couldn’t enter

“Mikawaya” oden

I ate

Then
I went to the “bridge”

The “bridge” was also vacant

Empty chairs were lined up

I drank the transparent liquor of this country

on the way home
I walked home

alone

I crossed the bridge and went home

when crossing the bridge

on the horizon
people’s lights were lined up

there are many people’s lives in the horizontal lights

So much for today *

 

 

昨夜

“三河屋”は
空いていた

いつもは
いっぱいで入れなかった

なんども
入れなかった

“三河屋”の
おでん

食べた

それから”橋”に行ったのだったか

“橋”も空いて
いて

空の
椅子が

並んでいた

この国の透明な酒を飲んだ

帰りは
歩いて帰った

ひとり

橋を渡って帰った

橋を
渡るとき

地平には
人々の明かりがならんでいた

水平に並んだ明かりのなかにたくさんの人々の生がある

今日はこれでおしまいです *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

depict

 

工藤冬里

 
 

作りに行くかたちの場と時間の中に自分では操作できない要素が入っている時、やっと支払いは賭けや投げ銭によって完了する。例えば死にかけている時の所有物の分配や、死んだ後の埋葬の仕方などである。そこには自分より大きな胴元が動いていなければならない。
自分で処理できない護美芥はない。ゴミ・カス・クズの整理がアルシーヴであるとしたら、アルシーヴじたいに支払い能力はない。アルシーヴはロック史でなければならない。Yo soy とYo estoyの違いのように、焼成される私には二つの動詞が纏わり付く。それがdepictされなければならないのだ。
災厄は未だ限定的である。大火事はここからは見えないが宇宙からは見える。その赤の画竜点睛で時間と場への投げ銭は完了する。
死を飲む、或いは死を飲み込む者のように酒場の代金を払いなさい。

 

 

 

#poetry #rock musician

Blue jeans are as American as apple pie.
青いジーンズはとってもアメリカ的だね。 *

 

さとう三千魚

 
 

afternoon
I went out to the city

I went to a new bookstore named “skylark” in the city

There was no skylark
I ordered the October issue of “Bijutsu Techo”

then
At the Wednesday library

I bought “kukai Jodo”

I was meeting with a woman at PARCO

Looking for soap
I visited several shops with a woman

Because the face-wash soap I bought in Singapore’s Indian town has become smaller

I was looking for a fragrant soap

I bought Nepalese jasmine soap at the 4th store

wash my face
morning

I’m happy with the scent of soap

I’m back in my room and listening to Janis Joplin’s SUMMER TIME
Janice has American pain

I have some jeans

I like LEVI’S 502
LEVI’S 502 is made in China

Blue jeans are as American as apple pie *

 

 

午後
街に出た

街に新しくできた”ヒバリ”という名の本屋に行った

雲雀は
いなかったが

“美術手帖”10月号を注文した

それから
水曜文庫で

“苦海浄土”を買った

PARCOで女と待ち合わせをしていた

石鹸を探して
女と店を何軒かまわった

シンガポールのインド街で買った洗顔石鹸が小さくなったから

香りのよい石鹸を
探していた

4軒目の店でネパールのジャスミン石鹸を買った

顔を洗う

わたしは石鹸の香りでしあわせになる

いま部屋に帰ってジャニス・ジョプリンのSUMMERTIMEを聴いている
ジャニスにはアメリカの痛みがある

ジーンズは
何本か持っています

LEVI’S 502が好きです
LEVI’S 502は中国で作られています

青いジーンズはとってもアメリカ的だね *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

refuse collector

 

工藤冬里

 
 

自由とは捨てること
不自由とは収集すること
排泄物であるかのように捨てることが必要
夏とは捨てるものをゴミのように憎むこと
冬とは収集してしまったことをクズのように憎むこと
refuse collectorが五味カス葛うどんを食べている
愛されるべきだったものは死後数週間放置されている
札が見つかることもある
断捨離とは捨てられないこと
貧乏性とは捨てられたいこと
to know himとは彼のゴミ屋敷の入り口に立つこと
自由な秋の強さとは強力粉と薄力粉を共に踏み付けて五味カス葛うどんにすること

 

 

 

#poetry #rock musician

家族の肖像~親子の対話 その48

 

佐々木 眞

 
 

 

僕、映画村好きですお。
映画村ってどこにあるの?
西日本ですよ。
コウくん行ったことあるの?
修学旅行で行きましたお。
そうなんだ。お父さんも行きたいな。
お母さんも行きたいな。コウ君と一緒にまた行きましょうか?
嫌ですお。

ヒタイ、オデコでしょ?
そうだよ。
ヒタイ、どこ? これ?
そうだよ。

✖️は止めるでしょ?
そうだね。

キケンは止めるでしょ。
そだね。

お父さん、「なんで」の英語は?
WHYだよ。

おどろくって、びっくりする、のことでしょ?
そうだよ。

お父さん、タケちゃんのラーメン屋さん、閉店したの?
そうなんだよ。残念だね。

タケナカさん、体調崩したんですお。
そうなんだ。

疫病神って、なに?
良くないことをひきおこす人だよ。

セイザブロウサン、「ヘーツト」と言ったよ。
そうなんだ。お父さんと同じね。

お父さん、将棋の英語は?
SHOGIだよ。

お父さん、ふきのとう舎は大和だよ。
そうだよね。

お母さん、ケチって、なに?
お金を大事にすることよ。

ぼくはお昼寝しますよ、お母さん。
分かりました。

立派って、なに?
偉いことよ。

オーケストラ、音楽でしょう?
そうね。

必死って、なに?
一生懸命に、だよ。

コウ君、お昼寝したの?
しましたお。
いっぱいしたの?
少ししましたお。

自治医大、栃木でしょ?
え、そうなの?
そうですお。

ショックは、びっくり、でしょう?
そうだね。

ぼく、グリーン牧場好きですお。
グリーン牧場って、どこにあるの?
渋川だお。
コウ君、行ったことあるの?
ありますよ。

ぼく、帰ってから、手をシュッシュしましたお。
お、いいね、いいね。

ぼく、静かにしようね、っていったお。
そうなんだ。静かにしてね。

サクランボは、果物でしょ?
そうだね。
サクランボ、サクランボ、サクランボ

カズエちゃん、お母さん痛いの?
痛くないけど、歩けないのよ。

花盛りは?
お花がいっぱい咲いている、よ。

酸は二酸化酸素の酸でしょ?
そうだね。

お母さん、マナーモードって、なに?
ちょっと待ってね、いまやってあげるよ。ほら呼び出し音がしないでしょう?
分かりましたあ。もういいですよ。

パは、ハと○だよね?
そうだね。

お腹いっぱい、の英語は?
アイアムフル、かな。
フルフルフル。

神様って、なに?
上の方で、コウ君を見守っているひとだよ。

お歳暮って、なに?
「ありがとう」のしるしよ。

お母さん、日本一って、なに?
日本で一番、よ。

人身事故で、電車遅くなってしまうね?
そうだね。

平凡て、なに?
ふつうの生活よ。

お父さん、今日ビデオとってね。
分かりましたあ。
そう言ってるよ、お母さん。
良かったね。

お父さん、「裏切者」って言っちゃ、ダメでしょう?
それはいわないほうがいいね。コウ君言ったの?
いいませんお。

お母さん、今日の晩御飯は、すき焼きにしてください。
え、すき焼きですか? わっかりましたあ。

強敵って、なに?
強い敵だよ。

ワイドドアって、たくさんの人が利用できるようにしてあるんでしょう?
そうだね。
ドアを広くしてあります。
そうだね。

キシモト先生の前は、ミズカワ先生ですお。
コウ君の親知らずを4本いっぺんに抜いた聖ヨセフの先生ね。コウ君、頑張ったね。
ぼく、頑張りましたお。

ゲスト、お客でしょう?
そうだよ。

ボク、マリオ好きだったよ。
そう。
こんど、マリオやりたいですお。
そう。じゃやろうね。
いやですお。

ラッシュアワーって、なに?
電車が込むときよ

お父さん、いったんて、なに?
一時だよ

開始って、なに?
はじめることよ。

レーダーって、なに?
それでもっていろいろ探すんだよ。

とうみょうさんがいったんだよ「プロになるって」
なんの話?
「盤上の向日葵」だお。
そうなんだ。

ヒョウタン、食べられる?
食べられるよ。

コウ君、お父さんのズボンのポケットに入ってた3千円知りませんか?
お母さんのお財布に入れましたお。
そうなんだ。

オクラの葉っぱは、ワタに似てるよねえ。
そうなの?
似てますよ。
そうなんだ。

ワカバ会館、工事したの?
そうよ。

怒りやすいって、なに?
怒りっぽいということよ。

お母さん、せせらぎって、なに?
サラサラ流れることよ。

コウ君、いたいの? かゆいの?
かゆいんですお。
薬つけてあげようか?
つけますお。

お父さん、頂きますの英語は?
ちょっと待って。いま調べてみるからね。アイル・ハブ・イットだよ。

また来てね、って、なに?
また来てね、また来てね、よ。

お母さん、経験って、なに?
いろいろやったことよ。

お父さん、聞くなって、聞かないで、のことでしょ?
そうだよ。

お母さん、一丁目て、なに?
一丁目、二丁目、三丁目。

お母さん、これ、なに?
さつきよ。
これは?
どくだみよ。
どこでとったの?
うちのお庭よ。
ぼく、さつきとどくだみ、好きですお。
お母さんも。