朝の
裏山の
ほそい暗い道の
先の
ちいさなほこらの傍に
泉はあった
そこに灰色の山椒魚たちはいた
数珠の卵は
連なっていた
そこに記憶の起源もあるだろう
水に濡れて連なるものたちのなかに
透明な儚い根を這わす
さよならといって
生まれてきた
朝の
裏山の
ほそい暗い道の
先の
ちいさなほこらの傍に
泉はあった
そこに灰色の山椒魚たちはいた
数珠の卵は
連なっていた
そこに記憶の起源もあるだろう
水に濡れて連なるものたちのなかに
透明な儚い根を這わす
さよならといって
生まれてきた
春の
海だった
春の海でだった
小舟でひとり沖にでた
平らな海に
そよ風は吹いてた
それがとつぜん嵐になった
波のうえに
ほんとに木の葉だった
ペラは波の上に空転した
エンジンは止まった
もうだめなんだなと思ったんだ
ゆっくりと
景色を見たんだ
庭に
沈丁花の花が咲いた
白木蓮の蕾もひらいて
咲いた
休日に子どもたちの撮った写真展に
いきました
被災地を撮った写真でした
景色のなかに姉や弟や妹や
母や父や友だちの笑顔がありました
いといヒトたちを
抱きしめたいと思いました
庭の隅の沈丁花の
花が咲いたよ
小さなピンクの花が
たくさん咲いたよ
匂いで気付いたんだ
すずしい匂いがしてきたんだ
庭の隅で咲いた
庭の隅で咲いた
昨日
子供たちの写真をみた
子供たちが被災地を撮った
写真だった
写真は片隅だとおもった
昨日
白木蓮の花が咲いた
のびた枝の先の蕾から
小さな白い花をすこし開いた
白木蓮は花が散ったあとに
丸い葉をひろげる
緑の丸い葉をたくさんひろげて
実を膨らませる
白木蓮のいのちは
繰り返している
白木蓮は繰り返している
今を生きることを繰り返している
杭打ち、打ち、また打ち、
文字を描いた、人、指で傷をつけた人
それを、鑿で削った人、
言葉に、霊ら魂やらを添わした人
それらが、減り込む。
減算、なにかを知らせるための熱の減産。
老いていくことが、身の芯から抜かれて
わたしにも、軸があるのに、そのあわわの
そのあわわの、なにか、の、の、
から埋められる。
顔色を引かれ、
赤く腫れた、器物が引かれ、
笹が、引かれ
縄が引かれ、
鳥居が引かれ、
神のような、棚の上にあるものも
間引かれて、
空だけになった、赤ちゃんが泣いている。
青空の赤ちゃん。
タレに浸して、杭打ち。
おとわ、か。
昔、高貴であった、紀念の詳細も、
杭打ち、
地誌の暴きは、糊付け。
●
割烹着を着た、おとなしい人が
「紀念の、写真を、撮りましょうね」
と言って、そこに消えた。
まるい穴の中に、消去された。
まるで、シー・ジーだ。
●
大根のように、
まるまるの、正円の蕪のように
地面が、ただ、純白に、地底まで抜けている。
石の書の下まで、掘っていく。
すると
水だけがあふれて、
轟々と吹き上がり
文字の書かれていない、石の顏だけがあらわれた。
なあんにも、
埋まっていない。
(連作のうち)
雑巾がけの写真集を出したいと
白石さんはいった
白石ちえこさんの雑巾がけという手法の写真を
見たことがある
隠されていた
秘め事だった
真っ黒で
ところどころ銀色にひかっていた
机の引き出しの奥に写真は隠されていたのだろう
満員電車で
頂を思う
朝の通勤電車のなかで
山の頂を思う
冬のはじめに
白かった
白く
光っていたな
青空に光っていた
焼石岳の頂が白く光っていたな
地上には刈取りが終わった田圃が
ひろがっていた
ヒトは見えなかった
ヒトは見えなかったな
広瀬さんは
ブロックの写真を撮っている
いまもコンクリートブロックの
写真を撮っている
わたしは休日の朝には
海に出かけます
それから
詩を書きます
毎朝
ひとつ詩を書きます
ことばの先に
ことばでないものを探します
ことばの先にことばでないものを
悠治さんの
サティを聴いていた
かつて
悠治さんのサティを繰り返し聴いていた
そのころ
暮らした女のヒトには
たぶん
おかしかったと思う
サティのソクラテスも聴いたな
ソクラテスはひとつの
頂だったな
あのレコードはいまはない