加藤 閑
雪隔てわれらの星を覗き見るきみ
死者流すとき吹雪の中に檣(ほばしら)立つ
分銅を正義の側に冬傾ぐ
ひひらぎのその埋葬の浅さかな
冷たき舌花紺青に染まりたり
寒月光ピアノのなかの沙漠かな
楽譜きらら薄氷(うすらひ)越しの水きらら
初蝶や鋏錆びるを止められず
朧かな椅子の脚これ棒である
風船の昇りきるまでひとりかな
雪隔てわれらの星を覗き見るきみ
死者流すとき吹雪の中に檣(ほばしら)立つ
分銅を正義の側に冬傾ぐ
ひひらぎのその埋葬の浅さかな
冷たき舌花紺青に染まりたり
寒月光ピアノのなかの沙漠かな
楽譜きらら薄氷(うすらひ)越しの水きらら
初蝶や鋏錆びるを止められず
朧かな椅子の脚これ棒である
風船の昇りきるまでひとりかな
見返すほどに
まばゆい空が照る中で
冷たい風も少し弱気になっている
春はほとばしるようにやって来て
留<とど>まる心を染めていく
賑わいが浮かれては
「今のまま」を跳ねのけて
何か出来そうな勘違い
春は
私の平穏を脅かす
今更と今こそが
行ったり来たり
春は
心がいつも騒がしくなる
アンダーラインをつけていた気持ちは
1枚の花びらより軽かった
消えてなくなってみれば
意外といらないものだった
今日はどの顔で過ごそうか
繕わなきゃ普通に生きれない
みんな自分に色を乗せてなんとか上手くやってる
不確実な明日を見たくなくて
ヘラヘラ笑ってやり過ごす
積み重なった雑事の多さに思考を停止
共感求めて動画を漁る
歯の欠けたじいさんと安い酒場で意気投合
大した哲学者のごとく語り合い
内心はお互いを否定する
高層ビルに反射する朝日は嘘くさい
出勤の靴はやたらと重く
大声で悪態つく妄想に救われ
今日も立派な常識人
金を数えに歩き出す
土をかけられた棺の中のあなたはあれからどこに行ったの?
夜私のベットにふんわりと腰掛けたの、わかっていた
でも死んだはずのあなたを見るのが怖くて
目を開けることができなかった
あの時ちゃんと見ればよかった
幽霊の姿になっても会いにきてくれたあなたの姿を
寂雨が路を潤す
身がもたないと
命の葉っぱが
揺れながら
落ちようとする
葉っぱには名前が有る
路には名前が無い
有るから無いへの
引っ越しは辛い
せめて下からの
風など吹いてもらって
浮遊してみたい
などなど願望するが
吹上の風は
婦人のスカート
めくりあげて
ふふふと笑って去る
路だけうねり続いて
時折穴ぼこがある
どうしても雨止まぬ
何となく寂しくて
鼻水上下してる
誰かの意見に対抗出来るような意見も人格も
持ち合わせていない僕は
ただうなずく事しか出来なかった
時には誰かの意見を借用して
さも自分自身の考えであるかの様に
振る舞っていた
自分の価値観を持たず
いつも
他人の視点と尺度を借りて来なければ
何ひとつとして判断出来ない人間だった
他人の目に良く映る僕の形を
自分の中に創り出していた
人畜無害を装い 心の中の悪魔に蓋をした
歪な世界の枠組みの外
もうひとりの僕が立ち尽くしている
不確かではあるが感じる事が出来る
その単純な思考の一面性の裏にある
もうひとつの現実から乖離した思考が
終わりに向かう歩みを止める
本来 保持するべき核は表には無く
表面に有るものは凡庸な思考の維持に過ぎない
読解困難な難解な文章を何度も読み返していた
その悪文の中に全てが存在する
僕の核が其処にある