帰宅するのをモコはまっている
ドアをあけるとモコは
飛びついてくる
小さなからだで
ぴょんぴょん飛び跳ねる
うれしい
うれしい
わたしもうれしい
そしてモコの首元を
ガルルウと齧り狼の挨拶をする
モコが震えている
モコが震えている
うれしい
帰宅するのをモコはまっている
ドアをあけるとモコは
飛びついてくる
小さなからだで
ぴょんぴょん飛び跳ねる
うれしい
うれしい
わたしもうれしい
そしてモコの首元を
ガルルウと齧り狼の挨拶をする
モコが震えている
モコが震えている
うれしい
たまにモコを
イタリア風に呼びます
モォーコーモォーコー
モォーコー
モコはキョトンとして
見あげています
イタリアの少年と
映写技師の小父さんの交友を描いた映画でした
モォーコーモォーコー
近くにいるモコを呼びます
近くにいるモコを遠く呼びます
ドアのまえにたっていた
何も持たずに
たっていた
ドアは何も持たないものに与えられた
何も持たないことは
ひかりだった
ひかりだったろう
ひかりだったろう
ドアのまえで
ひかりを灯した
無言のひかりを灯した
失われたヒトたちこそひかりだろう
福島と東北と
沖縄と広島と長崎
戦争で死んでいったヒトたち
慰安婦とアウシュビッツと
だれも救ってなどと言わない
その場所に
もう一度立てばいい
毎時25シーベルトの場所に立てばいい
野原の松の林の陰に
小さな萱ぶきの小屋はない
もう一度
立てばいい
ギーゼキングの
パルティータを聴いている
第2番ハ短調
シンフォニア
アルマンド
クーラント
サラバンド
ロンドー
カプリッチョ
バッハがライプツィヒに移って
書かれたのだ
愛するひとの心を楽しませるために
肉について言及はない
肉についての言及はない
こどものとき
ことばをうしなった
すでにうしなっていた
軒下の暗やみで
小石を積んでひとりで遊んだ
そこに真実があった
コトバをうしない
ないコトバに出会うことだったろう
詩は
絶対的な
ないコトバに出会うヒトだろう
詩人は
ないだろう
ないヒトだろう
石に
薔薇と秋桜の花を刻んでいた
白い雲が青空にぽかんと浮かんでいた
在ることを停止して
ぽかんと浮かんでいた
そのヒトもそうだろう
在ることを停止してそこにいたのだろう
花の刻まれた石の前で
たばこを吸った
しろい煙があがっていった
テーブルの上にはたくさんの物があります
長崎で買った陶製のキリスト
伊豆の射的場の裸婦の人形
アフリカの石彫の魚
石ころ
公園で子どもが拾ってきた石ころ
モコはテーブルのしたで眠っていた
モコは
テーブルのしたにいた
何もない闇がテーブルのしたにある
今朝は
もう時間がない
もう
出かけなければならない
でも
ひとことあなたに言いたい
生んでくれてありがとうございました
生んでくれてありがとうございました
やっと最近
そう言うことができます
やっとそう言えます
ありがとう
それほど広くはない畑で、草だけを使って野菜を作る実験ばかりしてきた。実際、実験ばかりであり、ろくに野菜は穫れてはいない。草は毎年豊作 で、草を作っているのか野菜を作っているのかわからない。周りの畑に来る人たちもわからないらしく、口に出しては言わないが、いったい何をやって いるんだろう 続きを読む