広瀬 勉
早朝、大曲に着いて、バスを乗り継ぎ、角館へ。
みていた
空を
みていた
空の向こう
焼石岳の頂が
白くなるのをみていた
雪が降るのを
みていた
世界が真っ白になるのをみていた
雪のなかに
ラッキーが此方をみていた
ラッキーはみていた
雪のなか
佇つヒトもいるだろう
眼を
見開いていた
破らないと、
逆さの川の
逆さの花の、隙間に満つる
朱と朱の気が混じり
そこに潜んでいる
いきものの胚が、
ほそい振動で、伸びきった
色素の、
諍いのこえが、
高音と低音が
交差して、
どこか水平に、
繊い、和音となって
緑地に溶けている。
よく見ると、
地面と錯視していたそこには
無数の苔の芽が、天をめざしている。
生きる道を習うとなると
つぶやきに耳を澄ますのだが
もう、習う必要もない。
朱の色と濃緑の
まったき調和は、どんな疑いも
とどけていない。
静かな無残に酔うように
空も親和の音楽で合わせ、
景もまた、気もまた
眠っているように感じられる。
鎮める、朱よ
わかれる、隙に
だれかの、思惑をつめて
唱和すれば、
深い、その奥の奥から、呼び戻される。
直立と座位の
こちら側の隙に
ううっと、噎せてくる気は
なんなのか。
毛のもの、
繊維のもの、
それから
人工の、金管や木管、
読経、人声、
吠える声、
糸の、切れる音。
どうでもいい 人格を降ろしては、振る舞いに諦めが伝わって時間から絶たれる時間がきたようだ。既にここにはいない、出発したが失敗してまた帰ってくる。その頃にはもう、君の役目は誰かがやってる。会わないでくれ、あざといよ。君の役目はあの時の選択の反対をやることでした。
時間はとびとびで、既にもう過ぎた。再度、振り返るのは残された人の悲しくもない曖昧な、なぜ、私がこんなことやってるんだろう?そこを強調しないで、
他人なのに家族なのに、私の子じゃないのに、神話的なクラッシュで君はもういない。そんな時、ipodのねシャッフルに頼る、けど、ほんと、そんなもんだいたい電池切れで音楽とかそんなもん、調子よすぎ。
過ぎてくドラマチック、覚えていない方が容易い。そう見えろ、そう見えてほしい、覚えてない訳ないだろ、描写しないだけ。
既にもう、だいたい、いない。
刑務所があるなら、入らなきゃいけない。
刑務所から出てこれるなら、出てこなきゃいけない。
刑務所には1年いた。
回想のその先、とっくに老いた。
あそこで寝なきゃいけない。
あらゆる不在の
長いはずだった時間を忘れる、忘れたかのように、とってかわったかのように。
糊付けした背中と肩が、懺悔した時に利用したコンクリートの感触を持ったまま外へ。そんな人間が見る映画はシネコンじゃいけない。
季節はかわった、雪
子供は5歳、君は黒髪、就職おめでとう、
海外行かないの?
行ったかな。そしてかわった。
雪が過ぎてゆく、子供は離れ、親は老け、
どうせ誰かが死ぬんだろう?
大丈夫、踊り暴れたい。
どうせ出逢うから、けど、話は進んでるから、もう過ぎた。
出逢っても別れる、というか
もういない。なぜか新しい命や環境へ。とびとびだったから。
そして、現在、
飛んできた。
もう現在も
終わろうとしている。
雲雀が
なんども
地上に
降りてきたね
なんども
なんども
地上に降りてきたね
老いた
母は
みていたね
なんども高みにのぼり
なんども雲雀は
降りて
きたね
この地上に
降りてきたね
この地上に
雲雀はね
母はベッドから
みていた