作業着の殿様

 

爽生ハム

 

 

坂道を照らす
ココはナンセンスな高台。
ダンスキューブのなかに凡ゆる人格が入っていく

人狼の遠吠えをかき消す為に採取した雨の搾り汁を
唐揚げにかけて階下に運ぶ。
スロープの重厚な手ほどき
の末、
唐揚げは再度、揚がった。
実に香ばしい

シャネルの包みに唐揚げを入れ姉は紅をぬりたぐり
そっと。
一階の南東に配置された窓 に手をあて、磨りガラスのぬめりを手のひらに記憶させた。
知った
形状よ
スルリとうららか
欠けた問題に染み入る。知ってる。この記憶

黄色の粘土状の塊にしか見えないイチョウの木
庭先の木
磨りガラスが眼球にはりついたかしら?

白ける午前中の介護に負けた。
情けないほど転ぶ妹
裁きやすい妹を持つと勿体無いから、姉は満足だった。
幾度となく負けた

膝の紅、包むシャネル

二人 姉妹が撒いた
水のうえをスカーフが走り去った
「反復せよ」と跳ねた水が姉を貫通し、その後、姉は住宅街を練り歩く。
使命感に歩かされていた。
人間を登場させるのを一旦やめて、姉妹の企みに身を委ねる

サーカスから逃げだした姉は
連続して射殺されて以降
声をださなくなった
帰ってこなかった